1994年10月の大学院2年生の秋、大学院病棟医生活に終わりを告げ、本格的に研究体制に入ることになった。僕の研究テーマは神経内視鏡

  

どんな治療かと言えば、一言で言うと、体やこどもに優しい侵襲の少ない治療」。

  

内視鏡といえば、まず胃カメラを思い描く人が多いと思うが、それの細い版。胃カメラは1センチぐらいの太さだが、神経内視鏡は5ミリ以下 で、最も細い物は0.5ミリといった物まであり、極端に細い。細い管を体の中にいれ、その先端のレンズからの画像を見ながら、細いトンネルから通した鉗子(つまむもの)やはさみ、風船などを使って、遠隔操作で手術を行う。


神経内視鏡

   

体やこどもにどうして優しいと言えるかというと、まず、あける骨窓の大きさが違う。例えば、開頭の生検手術(脳腫瘍の一部をとって、病理に出し悪性か良性か、どういった腫瘍かを見分ける手術)などでは、数センチの大きさで骨をあける。その分、皮膚も大きく切るので出血も多くなる。でも、神経内視鏡は、1センチの骨の穴1つのみ。皮膚も、2センチぐらいの直線切開のみ

  

また、脳への侵襲も少ない。脳の症状のでない場所から内視鏡を入れ、さらに内視鏡を通す管も数ミリと細いので、正常な脳へのダメージはほとんど無い

  

また、こどもに多い水頭症に対しては、従来は脳室ー腹腔シャント術 といって、細い管を頭の先からお腹の中まで埋め込み、頭の水をお腹まで流す治療が中心的に行われていたが、成長とともに長さが足りなくなったり、途中で切れたり詰まったり、また細菌が付いたりで、入れ替え手術を何回か行わないとならないことも多かった

  

それが、第三脳室底開窓術 といって、内視鏡により第三脳室の底に穴をあけて、脳室の水を脳の表面に流すだけで、水頭症が治療できる(閉塞性水頭症に限られるが)。こどもにとっては、大変うれしい治療なのだ。

  

僕が始めた頃は、まだ日本でも経験者が少なく、また内視鏡の機器もまだ開発途上だった。だから、町田製作所 オリンパス といった機器メーカーの製品開発にも携わる事もあった。

  

神戸大学でも、当時僕を含めてまだ3人ぐらいしか経験者の無い、最先端治療。だから、あっち、こっちの病院から呼ばれて、北へ東へ南へ西へと出張手術に行っていた。

  

でも、手術は一人ではできず、二人の術者が必要だ。一人は内視鏡を操作する者、もう一人は鉗子などの器具を操作する者。

  

それで、K先生とコンビを組んで指導してもらうことになった

  

K先生は僕より7才年上で丁度いちばん兄ちゃんと同い年。K先生はきちんとした性格で、僕は少々(?)がさつな性格なので、日常生活態度や手紙の書き方まで、本当にいろいろ教えて下さった。K先生がいなかったら、僕の研究論文は未熟な物になったと思うが、ほんとにおんぶにだっこで大変お世話になった。

  

研究生の間は、K先生の後ろを金魚のフンのようにずーっとついて行った。だから、夜遅くまで飲んだり、食事をしたりもずーっと一緒だった。だから、今でも困ったことがあるとついつい相談してしまう、本当に兄貴みたいな存在だ。

  

だから、僕の研究の恩師でありながら、人生の恩師でもある。今でもK先生の一番弟子だと思っている。最高の師匠と巡り会えたことに感謝した。

  

思い返せば、僕の人生は本当に常に良い人に巡り会っている。こんな幸せな事はないね。

  

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