大学院生でありながら、大学の病棟医として、主治医として勤務する日々。
ある日、巨大良性脳腫瘍のこどもを主治医に持った。8cm大の脳腫瘍。良性の場合は、手術の成否が今後の彼の人生を大きく左右する。
それで、大手術が計画された。朝から晩まで、場合によっては2日目に突入するという大手術。
前もって、手術場に連絡。また、次の日の手術を使う予定の科に頭を下げてお願いし、2日間の手術の枠を確保した。何としてもこの子を元気で帰さないと行けない。
手術は、ある朝9時に始まった。まずは、開頭といって骨を削り始めたのが10時頃。骨を削り終えたのが夕方頃だった。腫瘍摘出開始は夜に入ってから。出血しやすい腫瘍で、摘出、止血を繰り返し、輸血もしながら、延々と摘出が続いた。
西脇病院で、約70時間という不眠記録を作ったが、今度は連続手術。緊張感の連続。時間を忘れて気が付いたときはすでに夜が明けていた。でもまだ道半ば。
玉木教授も主治医の僕も、早朝にに2時間の交代の後、またど根性手術が再開された。緊張感の連続で、ようやく摘出を終えたのが、翌日夜の9時だった。
延々続く手術は、これまでの大学病院での最長手術記録を破る、35時間だった。
今では、こういった手術の場合、数回に分けて手術をすることが多くなっているが、玉木教授のど根性には勉強させられた。気迫を教えられた。後にも先にも、これが僕の経験した最長手術となった。
その甲斐あってか、その子は無事歩いて退院した。その経過に苦労も吹っ飛んだ気分だった。今でも年賀状のやりとりをしている。
そんなこんなで、大学院病棟医生活も終わりを告げ、研究テーマも、神経内視鏡という小児が中心の先端医療と決まった。(つづく)
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