医学部生の特殊バイトには、こんなものもあった。

  

話は皮膚科からだった。新しく出るステロイド軟膏の副作用を調べるために、ボランティア(やはりバイトですね)を募ると。その話は、1週間、宿付き、飯付き、風呂はなしよ、で15万円!」という話だった。その詳細は・・・。

  

とにかく、集まってきた同級生20人は、いつもの顔ばかり。もちろん、その中に僕がいた。

  

その20人は、まず一つのホテルに集められた。まず採血の後、くじ引きをすると。10人が当たり、10人がはずれ当たりとはずれで、塗られるステロイドの量が違うみたい。ちなみに、僕は当たり!しかし、当たった人とはずれた人は一目瞭然だった。当たった人は、おなかにたっぷりステロイド軟膏を塗られ、はずれた人はおなかと背中にたっぷりステロイド軟膏を塗られた。

  

その後、サランラップ巻きに。ステロイドの副作用と同時に、血中移行濃度、尿中移行濃度を測るために、毎朝採血、検尿があった。そして、授業とバイト以外はホテルに缶詰。しかし、ご飯は豪勢なものだった。また、おもしろい仲間ばかりで、同じ釜のめしを食べた仲間」って感じで、夜も語らったり麻雀したり(僕はあぶらごだったが)して、さらに親交を深めた。

  

結局、二人ぐらいに皮膚にぶつぶつがでた人がいたが、みんな大満足のバイトだった。

  

そのほかにも、経食道心臓エコー検査(胃カメラみたいなエコーを飲まされ、食道から心臓のエコーをとるもの)の実験台や、血液提供などなど、いろんなバイトがあったが、集まる人はいつもおきまりの顔ばかりで、同級生からは「売血軍団」などと揶揄されたりもした。でも、そんな売血軍団でも、役に立ったことがあった。

  

ある日、売血軍団のリーダーから連絡、招集があり、A型の新鮮血がいる、と。血液内科の病気のこどもに急ぎ輸血が必要とのことで、招集慣れしている売血軍団に話がきた。8人(ぐらいだったか)のボランティア(今度は本当のボランティア)が急ぎ集められ、献血をした。僕もA型だったので参加した。

  

その後、無事の知らせが来て、みんな一様に安堵。それと同時に、そのお母さんからみんなに高額のお礼があったとリーダーから。でも、みんな「今回はボランティアだから」と固辞。それでも、「どうしても受け取って欲しい」って言われるお母さん。

  

それで、みんなで相談の結果、「学生食堂で夕食をたべて、食べ切れませんでした!って言って返そう!」という話でまとまり、そのようにした。お母さんにもみんなの気持ちが伝わったようだった。

  

みんな貧乏学生ばかりが集まった売血集団だったが、魂は売らずにしっかり持った愛すべき人の集まだったように思う。