僕の博士論文ネタは脊髄の内視鏡でしたが、当時はまだ日本では二人しか専門的にやっている人がいなくって、結構マイナーな研究でした。でも、その二人は今でも大の仲良し。もう一人のその人はY先生、僕より少し年上で東京の病院にお勤めです。
普通、同じ研究をしてたら、ライバルってことになるから、結構仲悪かったり、競争相手だったりが多いようです。だから、論文の内容を教えなかったり、新しいネタを包み隠してたりするらしいです。
ところが、二人は最初の神経内視鏡学会の会場で会ったときから意気投合。学会で会う度に一緒に食事をしたり、飲みに行ったり。二人ともオープンで明るい性格で、「いっしょに脊髄内視鏡、広めような!」、「論文一緒に書こうか!」とか。「次はこんな事を考えてるけど、どう思う?」と、お互いの研究も包み隠さずに、教え合い。
ある時は、フィアンセをつれて神戸に遊びに来られて、一緒に食事をしたことも。それぐらい、仲良しでした。
そして、97年の脳外科学会総会で会った時のこと。Y先生が、「フランスワールドカップサッカー 、見に行きたいなあ。一緒に行こうか!」と。ノリのいい僕も、「よっしゃ、行きましょう!」と。でもそう言ったものの、なかなか病院休んで行くことは普通では無理。じゃあ、どうする?
それでその場で二人で策を練って、「脊髄内視鏡のネタで、国際学会で発表しよう!」と。学会出張なら、すこし寄り道は許されますから。そいでもって、その場で手当たり次第にヨーロッパの国際学会を探してみました。
すると、あるではないですか!Congress of Minimary Invasive Neurosurgery(侵襲の少ない脳外科の研究会)という学会。患者様に負担の少ない神経内視鏡にぴったりの学会が!場所はドイツフランクフルト。日時は98年6月12日。学会発表が終わってからフランスツールーズに移動すれば、6月14日の日本ーアルゼンチン戦が見られる!でも、まあ学会発表が選ばれればの話ですが。
それで、二人で投稿したところ、脊髄内視鏡のネタで二人とも無事選ばれました。それも、英語での口述発表。できたらポスターがよかったのに!なぜなら、僕は英語が大の苦手。でも、まあ何とかなるか!
それで、Y先生とフィアンセ(現在の奥様)、それと僕の3人でドイツ、フランスの旅へ。
まず、フランクフルトでの学会発表。英語でしどろもどろながら、発表しました。質問した人が、これまたエジプト人の脳外科医で、なまってる英語がわかりにくい、わかりにくい。でも何とか答えましたが。
それで学会発表が終わってすぐ、パリでトランジットし、ツールーズへ。ワールドカップ
の日本ーアルゼンチン戦を観戦し、南仏のワインとフランス料理を堪能して帰ってきました。
それから数年たった今でも、お互いこども連れの夫婦同士で家族付き合いしています。僕は本当に人に恵まれてるなあ。