このBLOGはコロナ禍になる前に開始し、月に2回(7日と21日)定期的アップしてきました。

 そして追加で3月度に3回アップすると今回で31回目になり、今日が令和3年3月31日でゾロ目になるので、特別版としてブレコネBLOGを更新させて頂きます。

 特別版といっても、コロナ禍になる前に社会福祉関係の人々と一緒にやった現場のブレイン・コネクトで、未発表の物をアップさせていただきます。

 

◆参考文献◆

「たった1枚の紙で誰でも意思決定できてしまうブレイン・コネクト」

監修:株式会社インクルージョン 著:杉村寿重/和氣俊郎/横内浩樹/平塚智文  三恵社2019年  https://www.amazon.co.jp/dp/4866931248

 

◆知的障害を持つAさん◆

 Aさんは毎日、とある知的障害者施設に通所しています。健康体のAさんは欠席もなく、日々元気に通所していますが、施設の中では幾つかの課題を抱えているようです。

 

◆Aさんのこだわり①◆

 課題の1つは、Aさんは世話焼きで他者の行動の遅さに我慢が出来ず、手を出してしまうことです。例えば朝通所したとき施設職員に連絡帳を渡しますが、Aさんは自分の連絡帳だけではなく、他の通所者の持ち物リュックを勝手に開けて、他者の連絡帳も職員に渡そうとします。

 例えば昼食時、食べ終えた後の食器は各自で片付けることになっていますが、Aさんは自分が食べるのが早いので、他者にも早く食べて食器を片付けろと介入してしまいます(しかし決して代わりに片付けてあげることはしない。片付けろと無理やり指図する行動を取る)。

 また通所からの帰りのとき、自分の支度をするだけに止まらず、勝手に他者の持ち物を持って来たり上着を持って来たりして、更には嫌がる他通所者に無理やり着せたりします(しかし、朝通所時に他者の上着をハンガーに片付けてあげたり、荷物を片付けてあげたりはしない)。

 Aさんの行動の共通性を考えると、始まりには興味もこだわりもないが、「終わり」に関して自分勝手なルールや強いこだわりを持っていると思われます。それが職員の手で阻止あるいは抑制されると、Aさんは爆発して暴れるという行動をとってしまうようです。

 

◆Aさんのこだわり②◆

 こだわりの2つ目は、1つ目のこだわりパターンと関係性もあるのかもしれませんが、Aさんはカレンダーやスケジュールにこだわりがあり、すべて終わった日程やスケジュールは即座に破棄してしまわないと気が済まないということです。その結果、勝手に捨ててしまうのです。

 つまりAさんは、カレンダーや通所活動予定表や1ヶ月の昼食献立表などを破り捨ててしまう行動を取ってしまうのです。その行動は自分のクラス内だけに止まらず、他のクラスまで遠征してカレンダーやスケジュールを破り捨てたり、更には施設内の色々な場所(職員の事務室など)のカレンダーや予定表に目が付けば破り捨てることも良くあり、施設としても課題となっています。

 

◆施設職員の悩み◆

 Aさんは自分のこだわりが遂行されないと怒りをモロ出しにして、泣き叫びながら手が付けられないほど暴れ出します。

 他の通所者や職員に向かって暴力をふるってしまうのが施設の悩みで、職員の数にも限りがあり、またAさんだけに付きっきりになる余裕もなく、他の通所者への支援もし続けなければならないので、どうすれば良いのか困っています。

 尚、Aさんは若く体力があり、身長も高く、身体つきも大きいので、他害の手は上から飛んで来るし、手足が長いのでの回避するにも限界があり、現場職員の疲弊があるということです。

 

◆ステークホルダー◆

◆Step1のPain◆

◆Step1のGain◆

◆Step2(時系列)◆

 今回は時系列の分析は不要と考えStep2は除外しました。

◆Step3(Aさんの気持ち)◆

◆結論◆

・Aさんの本心は「安心したい」というところにあるのに、現実には不安感情があるので、自分の不安を避けようとする行動が、周囲からは課題のように映ってしまう状態だと思えます。

⇒適切な、Aさんに合った養育メニューを検討する。もしくは外部との養育連携を進める。

・そしてAさんは言語の発達が遅い(職員からの言葉の理解はできるが、自分から発話することが困難)ので、本人としてもやむを得ず手が出てしまう状況だと考えられるが、それに対する周囲の対応が上手く行っていないと言える。

⇒Aさんに対して、言語的トレーニングを行う(試みる)。

・現場の職員は、全員が社会福祉の専門家ではなく、どちらかといえば介護福祉系の資格者が多く、その他は保育士などの資格者で成り立っている現状であり、障害者への専門的な心理的アプローチの手法や技術を知らない人が多い。現場は対症療法しかできないジレンマがある。

⇒教育研修を現場職員に対して行い、適切な知識と技術を身に着けさせる。

 

◆考察◆

 Aさんタイプの当事者は、不安定なものを許さない傾向があると言えます。

 例えば、人の顔に眼鏡があるのがイヤ、曲がった状況がイヤ、他人の事情が分からない等です。

 そしてAさんタイプは、全てを写真のイメージでとらえるので、例えば空っぽの下駄箱はイヤとか、何事もそろっていないと不安に陥る・・・等の特性があります。

 このようなタイプの当事者に対しては、カード(PECS:ペクス:絵カード交換式コミュニケーション)などを使うことも効果的だと考えられます。スケジュールのカード(終わったら外す。完了のアプローチ)もあります。

 但しカード表現にも、絵が良い人、写真が良い人、文字が良い人、音声が良い人・・・などがあるので、Aさんの特性に合わせる必要があります。

 

【お問い合わせ】
https://www.iri-ltd.com/ もしくは info@iri-ltd.com (担当:杉村)
【著作文責】
株式会社インクルージョン(Inclusion Research Institute, Ltd.【略称:IRI】) https://www.iri-ltd.com/

 

◆おしらせ◆

 文頭にも書きましたが、コロナ禍になる前に開始したこのブログは1年3か月続けてきました。そして今回が31回目となり、令和3年3月31日の本日と語呂合わせで書かせていただきました。

 回数的にも切りが良いし、また、コロナ禍の影響で個人的な仕事にも変化があり、良くも悪くも慌ただしくなってきましたので、ブログは今回をもって一旦小休止とさせて頂きたいと思います(今後も不定期に投稿するかもしれません)。

 もちろん、お問い合わせやご質問その他は随時受付けていますので、引き続き宜しくお願い致します。

 

 「ブレコネお試しオンラインセミナー」を無償で提供させて頂いています。個々人の問題や課題をテーマで行わせて頂きますので、ご興味のある方は(個人でも法人でも)ご連絡ください。