京大2022年の問題 (解説1) | 英語学習雑感ブログ

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社会人、超難関大学の難易度

 

 

第1パラグラフ

That man should have dominion “over all the earth, and over every creeping thing that creepeth upon the earth,” is a prophecy that has hardened into fact. Choose just about any metric you want and it tells the same story. People have, by now, directly transformed more than half the ice-free land on earth—some twenty-seven million square miles—and indirectly half of what remains. We have dammed or diverted most of the world’s major rivers. Our fertilizer plants and legume crops fix more nitrogen than all terrestrial ecosystems combined, and our planes, cars, and power stations emit about a hundred times more carbon dioxide than volcanoes do. We now routinely cause earthquakes. (A particularly damaging human-induced quake that shook Pawnee, Oklahoma, on the morning of September 3, 2016, was felt all the way in Des Moines.) In terms of sheer biomass, the numbers are stark-staring: today people outweigh wild mammals by a ratio of more than eight to one. Add in the weight of our domesticated animals—mostly cows and pigs—and that ratio climbs to twenty-two to one. “In fact,” as a recent paper in the Proceedings of the National Academy of Sciences observed, “humans and livestock outweigh all vertebrates combined, with the exception of fish.” We have become the major driver of extinction and also, probably, of speciation. So pervasive is man’s impact, it is said that we live in a new geological epoch—the Anthropocene. In the age of man, there is nowhere to go, and this includes the deepest trenches of the oceans and the middle of the Antarctic ice sheet, that does not already bear our Friday-like footprints.

 

 

第1文That man should have dominion “over all the earth, and over every creeping thing that creepeth upon the earth,” is a prophecy that has hardened into fact.

この文の構造は、thatからearthまでがS、isがV、a prophecyが先行詞でthatから文末までが関係代名詞節で、両方を合わせてCという構造になっています。

主語のthat節が、旧約聖書の創世記の1部であることが分かる人は多いでしょう(英語圏の人は、当然、日本人よりもこの点に関する予備知識は豊富です)。

この部分を聖書教会の訳を参考に訳語を貼り付けようとするのは、良くない読み方です。じっさい、この後を読めば、我々が親しんでいる日本語訳は間違っていることも確認できます。

とりあえずVCの構造部分の意味を取ることにしましょう。

harden into factを「硬化して事実となってきている」と英和辞典を便りに訳語を貼り付けると何をいっているかわからない世界に迷い込むことになります。それよりはhard factというcollocationを知っていて、「確かな事実」という、解釈が入り込まない、誰が見てもそうだと認定せざるを得ない事実を指すということを知っていることのほうが役に立ちます。そうすると、「創世記の一部に述べられていることは、確かな事実になってきている、神のお告げの言葉である」というのが、この文の大まかな意味であることがわかります。

聖書は、勝手に学者が書いているのではなく、prophetと言われる人々が、神からこのようなお告げがあったということを報告したことをもとに作られていることを考えれば、これは理解が行くことでしょう。

そうした上で、この文は「Sはより具体的にはどのようなことを意味するのか」という疑問と、それが「確かな事実になってきている神のお告げの言葉であるとはどのようなことを意味するのか」という疑問とを喚起し、それらの疑問がその後の議論展開によって解消されていることが確認できるので、topic sentenceであると判断することができます。

実際に読んでいく際には、このブログでも何度も述べたように、クリアカットな意味は得られず、あとのsupportの部分を読んで、より意味が明瞭になっていく、ということです。

したがって、この文の訳は、その意味が明確になるところまでお預けにしておきます。

(ここを無理やり日本語訳なるものを貼り付けて明確にしようとすることは、日本人のよくやる誤読の出発点になるということは、このブログでいやというほど確認してきました)。

 

第2文

 Choose just about any metric you want and it tells the same story.

この文は前半の命令文とandでif節の代理、andより後ろはSVOの構造になっています(youという間接目的語は自明なので省略されています)。

metricは、後ろのthe same storyを見ることによって、意味を限定することができます。まず何と同じかは、創世記の説明部分と同じであるとわかります。それから、metricは、創世記が現実を理解するための判断基準の一つであることを考えれば、判断基準という意味であるとわかります。

「自分の望むほぼどのような判断基準を選んでも、同じような説明内容が得られる」。

 

第3文 People have, by now, directly transformed more than half the ice-free land on earth—some twenty-seven million square miles—and indirectly half of what remains.

この文は、peopleがS、have transformedがV、by nowはM、more than half the ice-free land on earthとhalf of what remainsがandで組み合わされOとなっています。directlyとindirectlyも同じandによって組み合わされていると解釈することもできますし、transformedからearthまでとtransformedからremainsまでとがandで組み合わされてhaveと合わせて述部を作っていると解釈しても構いません(その際には、2つめのtransformedは繰り返しを嫌ってindirectlyの直後に省略されていると解釈します)。

ダッシュに囲まれている部分はmore than half the ice-free land on earthの具体的な説明部分です

「現在まで、人間は、地上の氷のない陸地の半分以上(およそ2700万平方マイル(およそ6993万平方キロメートル))を直接的に、その残りの半分を間接的に変化させてきている」。

このtransformの具体的な中身が直後に書かれています。

 

第4文 We have dammed or diverted most of the world’s major rivers.

この文の構造は簡単です。

「我々は、世界の主要な河川のほとんどにダムを建設したり流れを変えたりしてきている」。

transformの具体的な内容はまだ続きます。

 

第5文 Our fertilizer plants and legume crops fix more nitrogen than all terrestrial ecosystems combined, and our planes, cars, and power stations emit about a hundred times more carbon dioxide than volcanoes do.

この文はour planesの直前のandを挟んで重文構造を作っています。

our fertilizer plants and legume cropsがSで、fixがV、nitrogenという名詞にmore thanという比較構造がかぶさって全体としてOとなっています。

our planesからpower stationsまでは、A, B, and Cのパターンで名詞が組み合わされて全体としてS、emitがV、carbon dioxideという名詞に、about a hundred times more thanという倍数表現がかぶさって全体としてOとなっています。

fertilizer plantsは、この表現だけを孤立させると「肥料工場」と誤読してしまいますが、legume cropsをandで組み合わさっていることと、fix以下の述部の情報を考慮すれば、「肥料を与えられて育てられる植物」という意味であることがわかります(ちなみに明らかに誤読を狙って読み手に緊張感を与えようとしているようです。fertilized plantsとすれば誤読は避けられるのですから、意図的と考えられます)。

「人間によって肥料を与えられる植物とマメ科穀物は、すべての地球上の生態系を合わせたものよりも多くの窒素を固定し、飛行機、自動車、発電所は、火山が放出するおよそ100倍の2酸化炭素を放出している」。

 

第6文 We now routinely cause earthquakes.

この文と次のカッコに入っている文は、京都大学の問題文ではカットされています。とりあえず、この文は構造が複雑ではなく、語句も易しいので意味を拾っておくことにしましょう。

「我々は、現在、日常的に、地震を引き起こしている」。

 

第7文 (A particularly damaging human-induced quake that shook Pawnee, Oklahoma, on the morning of September 3, 2016, was felt all the way in Des Moines.)

この文は第6文の事例を紹介しているだけです。この説明はカットしてもほとんど影響がないのでカットしましょう。

ちなみにダッシュでくくられる挿入部分は、意味的に密接な情報が含まれているのがほとんどなのですが、カッコで括られる挿入部分は、必ずしも意味的に密接な情報が含まれているとは限りません。余談のような情報が多いのが普通です。

 

第8文 In terms of sheer biomass, the numbers are stark-staring:

この文の構造は簡単です。

biomassとは、コロンの後ろの記述もヒントになるように、生物としての重量を表します。「生物量」という定訳があるようです。

the numbersは、「判断基準となる数値」という意味です。第2文のmetricという表現を忘れないことがポイントになります。

「単なる生物量の観点で、その判断基準となる数値は、全く度を越している」。

この具体的な中身が次の文から述べられます。

 

第9文 today people outweigh wild mammals by a ratio of more than eight to one.

この文の構造も簡単です。

outweighですが、「重要度でまさる」という意味もありますが、ここでは、biomassという言葉を述べた直後というコンテクストを活かせば、「重さで上回る」という意味です。

「今日、人間の重量は、8対1の比率で、野生の哺乳類の重量よりもまさる」。

 

第10文 Add in the weight of our domesticated animals—mostly cows and pigs—and that ratio climbs to twenty-two to one.

この文はaddからの命令文とandでif節の代理をし、that ratioがS、climbsがV、toから文末までがMという構造になっています。

「人間に飼われている動物(ほとんどが牛と豚であるが)の重量を加えると、その比率は20対1に増加する」。

 

第11文 “In fact,” as a recent paper in the Proceedings of the National Academy of Sciences observed, “humans and livestock outweigh all vertebrates combined, with the exception of fish.”

この文はin factがM、asからobservedが例えを表す副詞節でM、humans and livestockがS、outweighがV、all vertebrates combinedがO,withから文末までがMという構造になっています。

observeは二重引用符でくくられた部分が意味上の目的語になっている構造を考慮すればremark「述べる」という意味であると判断できます。

「米国アカデミー紀要のある最近掲載された論文が述べているように、『実際、人間と家畜の重量は、魚を除外して、すべての脊椎動物の重量を合わせたものよりも重いのである』

」。

 

第12文 We have become the major driver of extinction and also, probably, of speciation.

この文はweがS、have becomeがV、the majorから文末までがCという構造で、of extinctionとof speciationがandで組み合わさってdriverを修飾する形容詞句を作っています。

「我々は、絶滅の主要な原動力となる存在で、しかも、おそらく種分化の主要な原動力となる存在になってしまっているのである」。

 

第13文 So pervasive is man’s impact, it is said that we live in a new geological epoch—the Anthropocene.

この文はso pervasiveがC、isがV、man’s impactがS、その直後のカンマがthatの代わりに使われていて、so…that構造のthat節を文末まで展開しています。ここをthatではなくカンマにしたのは、その後でit is said thatとthatがすぐ登場するので、そのthatを解釈し間違わないようにするためであるようです。

so pervasiveとCが先に来ている構造は、veryの意味のsoが前置されるとその後は疑問文の語順になる場合がある、というルールに従っているだけです。この倒置パターンは、強調倒置と違って必須ではないので注意してください。

「人間の影響はとても幅を利かせているので、我々は新しい地質学的時代(人新世)にくらいしていると言われている」。

 

第14文 In the age of man, there is nowhere to go, and this includes the deepest trenches of the oceans and the middle of the Antarctic ice sheet, that does not already bear our Friday-like footprints.

この文はinからmanまでがM、isがV、nowhere to goを先行詞として、thatから文末までが関係代名詞節で、両方を合わせてS、andからは、thisがS、includesがV、the deepestからsheetまでがOという構造になっています。that節を文末に後置しているのは、this includesからの文が関係代名詞節の一部であるように誤読されないためであると解釈できます。

Fridayは、主人公以外の人間を表す表現から、自分以外の人間一般を表すのに使われています。

footprintは、ロビンソン・クルーソーでは文字通り「足跡」の意味で使われていますが、この文章のコンテクストでは「人間が環境に与える影響」の意味で使われています。

「人間の時代には、他の人間の環境に与える影響の痕跡がすでに存在しない場所はどのようなものもないのである。そしてそのどのような場所には、大海の最も深い海溝や大西洋氷床の中間も含まれるのである」。

 

 

ここまで読めば、第1文の意味が明確になってきます。

dominionは、日本の聖書などは「支配権」と訳していますが、それでは、このパラグラフの意味が通りません。英英辞典の定義を参照してみると

Dominion is control or authority.

となっています。このauthorityが、ここでの意味であると考えることができます。もちろんこのauthorityに「権威」などという定番の訳語を貼り付けるならばなんの役にも立ちませんが、英英辞典の定義

 power to influence or command thought, opinion, or behavior

を見れば、「影響力」という意味を考えることができるのです。カリスマ性も、他の人々の行動に強い影響力があるのでauthorityで表すことができます。

そして、このパラグラフに、第3文のtransformの記述があるのは、地球を変化させる影響力を示してきていると解釈できます。

第5文の内容も、我々人間の環境に及ぼす影響力を示しています。

第6文の地震の話も、地球に我々が及ぼす影響力の例です。

第8文から第11文の生物量の話も、重量に絞っても、人間の直接・間接の影響力を示していると言えます。

第12文は、人間が種の絶滅の主要な原動力を持ったものであるということは、やはり人間の影響力を表しています。

第13文のman’s impactを見れば、人間の影響力を主語にしてso…that構造を作っていることがわかります。

第14文はfootprintということで、人間の環境に及ぼす影響力をここでも示していることがわかります。

そして、どのようなmetricを使っても、同じような理解が得られるということは、判断基準に左右される事実ではなくhard factであると述べていることがわかります。様々なmetricを使っているのは、どれを使っても同じ説明になることによって、hard factであることを強調しているからであると理解できます。

 

これで第1文の意味を明確にする準備は整ったと言えるので、その説明を行うことにします。

Sを構成する部分のshouldは、「べき」の意味ではなく勧告を表す仮定法現在と同じ役割を果たすshouldであると理解できます。

creepethはcreepsの古い表現です。

とりあえず第1文の訳を示せば

「人間が地球全てと、地上を這う生き物全てに対して圧倒的な影響力を持つようにということは、確固とした事実になってきている神のお告げの言葉である」。

これで、もう一度、第1文の疑問喚起とその疑問解消が第1パラグラフで行われていることがわかるはずです。

 

いかがですか。パラグラフの構造の認識は、この方法を使わない場合よりも遥かに誤読を避けることができる不可欠と言える強力な方法であるということが理解していただけたでしょうか。

この認識無しで、正しい理解に到達している例が一つもない(入試問題不正解はすべてこの第1パラグラフの理解を間違えています)のであるならば、不可欠な方法と主張しても構わないように思われるのですが。

 

 

ここで第1パラグラフは終了です。このパラグラフは、第1文がtopic sentenceで、第2文から第14文がそのsupportであると判断することができます。