阪大2022年(外国語学部以外)I問題解説 | 英語学習雑感ブログ

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(A)  Many owners identify what they think is a dog’s “guilty look”, but science has shown that this is actually a reaction to the owner’s body language at that moment. Guilt is a relatively complex emotion. The dog is simply worried that it’s about to be punished, without knowing what it’s done wrong.

 

 

第1文Many owners identify what they think is a dog’s “guilty look”, but science has shown that this is actually a reaction to the owner’s body language at that moment.

この文はbutを挟んで重文構造を作っています。

その前半の構造は、many ownersがS、identifyがV、whatからlookまでがOで、what節の中を詳しく見ると、theyがS、thinkがV、残りがOですが、そのOを構成している従属節はwhatがS、isがV、a dog’s “guilty look”がCという構造になっています。

その後半の構造は、scienceがS、has shownがV、that節がOという構造で、that節の中を詳しく見てみるとthisがS,isがV、actuallyがdiscourse markerでM、a reactionからmomentまでがCという構造です。

identifyは、日本人が語感を掴んでいない代表的な単語で「同定する;確定する」などという訳語を貼り付ける場合には、この単語の基本的なニュアンスがわかっていないと判断できます。identifyは、「重ね合わせ」がcore meaningで、英語を母語とする子供であれば、全く難しいとは思わない単語です。例えば、絵の中に、ネコが7匹隠れている場合に、Identify seven cats in the picture.などと書いてあります。子供は、絵の中のパターンと、自分の知っているネコのパターンと重ね合わせができると、「見つける」事ができるわけです。したがって、群衆の中に自分の母親を見つけたという場合にも、人混みのパターンの中から、自分の母親のパターンを重ね合わせることができる部分に気づくと、そのようにできるわけです。UFOも「未確認飛行物体」などと訳されますが、「重ね合わせができていない飛ぶように見える対象」というのが正確な意味です。目の前に見える「飛んでいるように見える対象」に、自分の知っているパターンを「重ね合わせ」ができると、「あれはトンボだ」というように、「飛んでいるように見える対象」というパターンと、「トンボ」のパターンを「重ね合わせ」ができていることを表しているのです。

この場合に即すれば、犬の目に見える様子というパターンが、「罪悪感を抱いている様子」というパターンと「重ね合わせ」ができると、identifyすることになります。

それらのことを総合すれば、ここでは「気付ける」とか「わかる」と表すことができることが分かります。

actuallyは「実は」という、通念とは異なる種明かしのときによく使われるdiscourse makerであるとわかれば充分です。

many ownersは、この段階で訳語を貼りつけるという「やってはいけないこと」をしてしまうと「多くの所有者」ということになりますが、manyの使い方と、ownerはdog ownerの意味で使われていることを考慮すれば、「犬の飼い主で…する人は多い」という文の内容に響いてくる意味であることが分かります。

guilty lookは、後でguilty自体に言及しているコンテクストを考慮すれば、「申し訳無さそうな様子」などと、この文だけ見るならばうまくいくように見える訳語を貼りつけることはしないで「罪悪感を抱いている様子」という意味であると判断できるはずです。

at that momentは、犬が罪悪感を抱いている様子をしていると飼い主の多くが思っている瞬間であることが分かります。

以上のことを総合すれば

「犬の飼い主で、犬の『罪悪感を抱いている様子』と彼らが思う様子に気づく人は多いが、科学が示してきているのは、これは、実は、そのような様子をしている時の、飼い主のボディランゲージに対する反応である、ということである」。

 

第2文 Guilt is a relatively complex emotion.

この文の構造はかんたんです。

先程も述べたように、emotionとS, C関係を持っているので、Guiltは「罪悪感」と意味を取ります。それ以外にコンテクスト的に複雑なものはありません。

「罪悪感は、比較的複雑な感情である」。

 

第3文 The dog is simply worried that it’s about to be punished, without knowing what it’s done wrong.

この文はthe dogがS、is worriedがV、直後にaboutという前置詞があるのですが、接続詞のthatの直前では省略しなければいけないというルールに従って省略されているだけです。thatから文末までが名詞節で、それが省略されているaboutの目的語となって全体として副詞相当のMとなっています。

thatの中を詳しく見てみると、it (= the dog)がS、is about to be punishedがV、without以下が前置詞句でMという構造になっています。

knowingの目的語となっているwhat節の中を詳しく見てみると、it (= the dog)がS,’s done (= has done)がV、whatがO、wrongがCという構造になっています。

the dogは、「その罪悪感を抱いているような様子をしている犬」です。be about to doはbe going to doと同じような意味です。

以上のことを総合すると

「その罪悪感を抱いているような様子をしている犬は、自分がどんな悪いことをしたのか分からずに、自分が罰せられようとしているということに関して、心配しているに過ぎないのである」

となります。これが第1文のa reactionの具体的な説明であることが分かります。

 

 

これですべて読み終えたことになります。

英文の難しさは、構造を読み取ることより、コンテクストを読み取ることのほうが遥かに大きな役割を果たしていることが再確認できる文章です。

そして、コンテクストを生かした読み方をするためには、訳語をどんどん貼り付けていくという方法は逆効果であることも確かめられました。

さらには、そのような読み方をするためには、単語の「訳語」なるものを暗記しているのではなく、単語の基本的な語感を把握していることが極めて重要であることも確かめられました。