■高校1年生レベル
表題の日本語はもちろん日本人が誤訳したものです。
もとの英語は
You’re dead right.
です。
この誤訳が物語っているように、日本人はdeadを間違ったイメージで捉えていると思います。今回は、それに関する話をします。
NHKのヒューマニエンスという番組は、とても知的刺激がある素晴らしい教養番組だと思いますが、NHKのあらゆる番組でも感じることですが、日本人の英語に関する誤解が、その素晴らしさに水を指しているように思われます。
今回の番組でも
「死腔」
という言葉が紹介されたのですが、これは鼻孔から肺胞までの呼吸器系のうち、血液がガス代謝をしない部分を指します。
これを番組担当者が口を揃えて「空恐ろしい名前」というように言及していたことが奇妙に気になってしまいました。
実はインテリア関係の話を良くしている人であれば、柱のそばや大きな家具の影になって、有効に使われない空間のことをdead spaceと言いますが、これは「死んでいる空間」などという恐ろしい名前ではなく、「有効に利用されていない無駄になっている空間」を意味します。
実は「死腔」という訳語を定訳として与えられているものももとはdead spaceで、「体の中に取り込む空気が入る部分であるが、その部分の空気はガス交換に有効に利用されていない無駄になっている部分」という意味で、インテリアのdead spaceと関連のある意味なのです。(150/500がこのdead spaceだそうです)
英語では、deadは本来の役割を果たさずに無駄になっている状態のものは無生物であろうと生物であろうと使うことができるのです。確かに「死んでいる」動物は、本来の役割を果たさず腐敗を待つだけで、通行の妨げにもなります。
日常会話を聞いているとこのdeadは嫌というほど耳にし、別に空恐ろしい意味で使っていないものがほとんどです。
My smartphone is dead.
「私のスマホ電池切れ」
で、電源が入らないスマホは本来の役割を果たさない状態です。
The bottle is dead.
「その瓶は中身が入っていない」
で、瓶は中身を入れて本来の容器という役割を果たすのですが、空っぽであるとその役割を果たしていないということです。
このように、専門家が日常語にある基本的な単語のニュアンスをきちんと踏まえていれば、「おどろおどろしい名前」などと素人が言ったときに、きちんと反論をして、気管の中の空気はガス交換に有効に使われていないという意味でもともとは命名されたのですと、教えてあげることができるのですが、それが今回のヒューマニエンスの番組でも生かされていませんでした。
一時期、「突然死」を連想させるという意味でsudden-deathという、延長戦で、先に得点を上げたチームが決まるとその時点で即終了というルールを、別な名前にするという話が起こりましたが、これは英語を母国語としない人の発想でしょう。
つまり、同点状態が解消されるとその時点ですぐにそのゲームは有効でなくなる(=終了する)という意味で、sudden-deathが使われているだけなのです。
ここでようやく表題の話になりますが、
You’re dead right.
のdeadは副詞で、absolutely, totallyなどの強調の意味で使われているのです。deathが絶対に起こるものであるということから派生して生まれている意味です。
「あなたの言っていることはまさに正しい」
という意味で、「あなたは死んで右側にいる」と言われても、本人が死んでいるならばそのメッセージは本人には聞こえないので有効ではない(dead)ということになるでしょうか。
I’m dead serious.
は
「私は死んで深刻な状態にある」
などという意味ではなく、
「私は大真面目です」
という意味です。