呼吸を普段意識している人は少ないとおもいますが、大変重要です。楽しときには無意識に笑いの呼吸法をしますが、逆に、意識して笑いの呼吸法をすれば気分が楽しくなります。また、驚いたときや、こころの荒れているときの心臓の鼓動は激しくなっていて、これを意志で押えることは不可能ですが、意識的に呼吸を深く静かにしていると、心臓の鼓動もまた静かになってきます。だから、押えにくく、変えにくい感情でも、呼吸の仕方を変えることによって、ある程度コントロールできるのです。このように呼吸は心身コントロールの鍵で、呼吸法がヨガ行法の中心をなしていますし、自己コントロール法の基本です。

難しいことをだらだら書いても誰もやらないでしょうから1つだけ書いておきます。

◎パストリカ

パストリカとはフイゴの意味です。カジヤの使うフイゴのように吸・吋の呼吸を急激にくり返します。

実施要領

1.正座して鼻からのすったり吐いたりを急激に20回ぐらいくり返します。このとき、腹に力をいれ、胸をふくらませたり、へこませたりする気持ちで規則正しく行なうようにします。

2.20回ぐらいの激しい呼吸をくり返したのち、鼻から深く息を吸ってできるだけ長くその息をクムバクしておいてからゆっくりと吐きだします。

○初心者は1日1回ぐらいからはじめて、徐凌にその回数を増していくようにする。一回の

回数は、一七~八回ぐらいがよいでしょう。

○練習を積んだら、発汗するまでつづけますが、これは強力な修業法ですから、苦しくなったり、目まいがしたら、ただちに中止して普通の呼吸にもどってください。

・病人や悩みのある人はつとめて、笑ったり・歌ったりするくふうをすることが人生を生きていく上でたいせつです。笑っているときのような息で楽しくくつろぎ、深い息で、おちついた静かなこころで生きることを丹田で行なうとか、腹で生きるとかいいます。笑っているときには、自然に下腹に力がこもって、背中ものび、力をぬいて胸も大きくはっています。この呼吸だと副交感神経のはたらきが高まりますので、内臓のはたらきが高まるとともに、こころも安定します。どんな悪感情のときでも、自由に笑いの呼吸法のできる練習をすることは大変たいせつです。ヨガの呼吸法では吸う息と吐く息の間で、息をとめて保留(クムバク)、することがたいせつとされています。

・クムバクについて

私たちは注意を集中するとき、および内の力を高めるときに息を留めています。たとえば〃何だろう"と注意を集中したときには息を留めて、じっと息をころしています。また、痛いとがまんするとき・重い物を持ち上げようとするときなども息を留めています。これがクムバクの根本です。クムバクしたときには、心身の力がからだの中心部に統一されて内の力が自然に高まります。ヨガではクムバクとはこころとからだをひとつに結ぶスイッチであるといっています。内に力をこめるとき、内のカを呼び起こすとき、私たちは無意識のうちにクムバクをしています。上の呼吸法で訓練すればこころと体の統一性が実感できます。

・呼吸について

右肩をあげて呼吸していれば過食家で、このとき前屈していれば空腹です。前屈して肩をあげて呼吸していれば肺が弱いか、カゼをひいています。左肩だけ前にだして呼吸していれば、心臓病か冷え症です。肝臓異常は、右肩を前にだして呼吸している人に多く、呼吸病の人は肩を動かして、性器に異常のあるひとは腰を動かして呼吸をしています。吐き気や頭痛のある人は首をまげて、便秘や月経痛の人は腰をねじって、内臓に位置異常のある人は背中をねじって呼吸しています。疲れた人は首と腰をまげて、ノイローゼの人は肩をあげ首をかたくした猫背で呼吸をしているなど、その人の呼吸の仕方により、からだの異常部はわかります。また、呼吸の仕方からこころの状態を知ることもできます。落ち着いているときは、ヒザを開いて、動揺しているときはからだを動かして呼吸しています。興奮時には肩をあげて、緊張時にはからだをかたくして、がっかりしたときには胸を締めて、立腹しているときには肩をいからしながらからだをねじって、安心しているときにはからだの力をぬいて呼吸しています。うれしいときには、ヒザを大きく開いて前にのりだして、いやなときにはヒザをすぼめ・からだを後にひいて呼吸しています。何か要求のあるときには手に力を入れて、決心したときには、口と足と腰に力を入れて呼吸しています。みなさんも回りを注意してみるとおもしろいですよ。

・蛇足

家族和合の呼吸法とは、お互いに自由な呼吸をし合うことです。家族が和合するには、くつろいだ呼吸がたいせつです。そのためには、責めない、さばかない、いやな思いをさせない、認め合うこと、安心させ合うこと、ほめあい、感謝し合うことがたいせつです。呼吸は人により千差万別の型をもっていますから、くつろぐためには、この自由をじゃましてもらいたくない本能をもっています。自由な呼吸をさせてもらえるかどうかが家族和合の秘訣といえます。また、お互いにハッと呼吸を変えさせる刺激になるものをもっていることもたいせつです。それはいつみても同じ状態でいる者には、飽きてくるからです。人間には本来新しさを好む本能があります。お互いが進歩を心がけて、感心し合えるものを身につけるように心がけなくてはなりません。仲良くし合うためには、お互いに学び合うものをもっていることが必要です。家族の間でお互いに忠告し合わなくてはならないことも多いことでしょう。しかし、このときに一番犯しやすいあやまちは、相手のよくなることを願うあまりに、相手の自由性を奪ってしまいやすいことです。忠告の場合は、自分がいうよりも、相手にいわせるようにした方がいいです。それには、相手が自由に呼吸できるようにし、いい分をうなずきながら聞いてやるのがコツです。話し合うには静かなムード

が必要です。このムードを作りだすのが、ゆっくりしたおだやかな呼吸です。

・最後に

人生を楽しく生きるためには人生に感謝していることが基本になくてはいけないと思っています。方法だけ学んでも根本の感謝がなければ元の木阿弥だと思っています。それを他人に実感させることが今の私の課題です。