人は一日に、誰と最も多く会話をしているのだろうか。
家族でも友人でも、同僚でもない。
答えは――自分自身だ。
私たちは黙っていても、内側では話し続けている。
「今日はうまくいかなかった」
「また続かなかった」
「自分はこういう人間だ」
声にならない独り言は、思考の癖をつくり、行動を制限し、やがて人生の形を決めていく。
脳科学の研究でも、無意識に使う言葉や思考のパターンが、脳の働きを変えることが分かっている。
人生が変わらないのではない。
人生をつくる言葉が、ずっと同じままなのだ。
三日坊主を繰り返し、「自分は意志が弱い」と決めつける人は多い。
だがそれは、最初から「続かない自分」を前提にした言葉を、自分に向けているだけかもしれない。
成功者を長年研究した著者は、ある共通点に気づいた。
成功している人ほど、脳内の対話が丁寧なのだ。
彼らは自分を責めず、問い直す。
失敗を断定せず、言葉を言い換える。
たった一言の違いが、次の一歩を用意している。
幸福と不幸も同じ構造を持つ。
心理学者シュヴァルツは言う。
「不幸とは、形を変えた幸福である」
二羽の鳥の寓話がある。
一羽は羽を折り、地上で回復の時間を過ごした。
もう一羽は空を飛び続け、自分の幸運を疑わなかったが、危険に気づかず命を落とした。
羽を折った鳥は、やがて再び空を飛ぶ。
重要なのは、出来事そのものではない。
それをどう意味づけるかだ。
不幸は、不幸の顔をして現れる。
だがその中に、まだ言葉を与えられていない可能性が隠れていることもある。
それに気づけるかどうかは、自分にどんな言葉をかけているかにかかっている。
人生を大きく変える必要はない。
強い意志も、大きな決断もいらない。
まずは、自分に向けた言葉を少し意識するだけでいい。
短い言葉ひとつ。
小さな独り言ひとつ。
人生は、
自分自身との対話の積み重ねでできている。
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