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彼女と連絡を取らなくなってからどれくらい経っただろうか。
突拍子もない考えだと思っていたけれど、いいことがある日は雨が強くなるというのは間違いではなかったのかもしれない。きっと、例の彼氏と何かがあったのだろう。彼女は素直な子だったから、その喜びを僕にも伝えてしまっていたのだろう。
・・・・・・僕と会う日はいつも雨だった。
ただの雨だった。
やっぱり僕には勝ち目がなかったのだと思い知らされる。
そんなこと分かりきっていたはずなのに、諦め切れない気持ちが燻り続けている。


彼女の連絡先はもう分からない。アドレス帳から削除し、スマホも買い換えた。
もう会うことはない、何度目かも分からないその言葉を僕はしっかりと飲み込んだ。


「そういえばね。悠人と同い歳の子が今日うちの病院で亡くなったのよ。」
母親とのいつもの会話。病院に務めている母親からはたまにそういう話が出る。自分の知らない誰かの生死など日常会話に折り込まれる程度の重さしかないのかもしれない。

「その子、結構長い期間入院しててね、でも良くなる病気じゃなかったみたい。もちろん治療はしてたんだと思うけどね。」
事務仕事しかしていない母親には詳しいことは分からないのだ。
「・・・・・・って名前だったと思うんだけど、悠人知ってる?」
県外からも患者さんが集まるような病院では、同い歳だからといって知り合いではないことの方が圧倒的に多い。母親も知り合いなはずがないと分かってて聞いてくるのだ。いつもの会話の流れ。いつもどおり知らないと返すつもりでいた。

けれど、それは不可能だった。
僕はその人を知っている。

春野未咲・・・・・・

彼女の名前だった。同姓同名を疑った。
しかし、尋ねる前に母は言った。
「みさきって『未だ咲かず』って書くのよ。珍しいわよね。」

彼女の言葉を思い出した。
―――私の名前の『みさき』ってね、『未だ咲かず』って書くんだ。雨女にぴったりだと思わない?
雨が降り続けて気温が上がらなくていつまで経っても春は来ない。春が来ないから春の野に花は咲かない、なんてね―――

彼女だ。きっと彼女のことだ。
僕の表情を見て心配して声を掛けた母に、僕は彼女とのこれまでのことを話した。細かいことは覚えていない。けれど、泣きながらまともに言葉を発せない僕の話を母親は優しく聞いてくれた。


彼女の死の可能性を知ったからといって僕にできることは何もない。僕にはもう関係のないこと。関わることなんて許されない。

そう思って何も行動は起こさなかった。
しかし、数日後母から手紙を渡される。

「悠人に手紙だよ。未咲ちゃんの弟さんから。」