放課後の喧騒の中聞こえた声に釣られ、私は窓の外を見た。
アオスジアゲハだ。この時期に見掛けることはさほど珍しくもない。
けれど、輝く翅とその羽搏きを見ていると心が穏やかになっていくのが分かる。
今日は風が気持ちいい。
「あれ、捕まえようぜ」
ハッとして我に返り、振り返らずに聞き耳を立てる。
お前は小学生か、と窘められ思い止まったようだ。
初めから冗談のつもりで言ったのかもしれない。
「お待たせ、帰ろ?」
いつの間にか目の前にいた友人の言葉に内心驚いたが、それを誤魔化すように席を立った。
「死ねよ」
はっきりと聞こえたその言葉に私は咄嗟に振り返ってしまった。
私に投げかけられた言葉ではないだろう。きっと、いつものように友達同士でのじゃれ合いの中の言葉。
分かっていても反射的に振り返ってしまう。
ふっ、と息を吐いたあと、私は硬直してしまった。
私は確かに見てしまった。
その姿を見てしまった。
直後、教室中に悲鳴が響き渡る。
私はただ立ち尽くすことしか出来なかった。
-続く-