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一緒に帰ることになったものの、何を話せばいいのか分からず、無言の時間が続いてしまった。
なにか話さなければ、と思いながらも話題が思いつかない。友達も少なく、流行りに疎い僕に、しかも女の子相手に話せることなど思い付かなかった。
僕は苦し紛れにスマホ画面を見せた。
彼女は少し驚きながらも画面を見る。
「わー! すごく綺麗! これどうしたの? 」
興味を持ってくれたようで安心した。
「これ、僕が描いたんだ。」
僕は少しだけ自慢げにそう口にした。
彼女は更に目を輝かせ、僕に迫ってきた。
「これ絵なの!? 写真かと思ったー! すっごく上手なんだね! えーと・・・・・・そういえば名前聞いてなかったね。」
彼女は少し困ったように笑う。
「あ、高砂悠人(たかさご はると)です!」
彼女は優しく微笑む。
「よろしく悠人くん。私のことは『みさき』でいいよ!」
風が吹いた気がした。そして、世界に色が付いた気がした。
実は近所に住んでいることが分かり、一緒に帰りながら絵のことをずっと話していた。
どうやら彼女も絵を描くのが好きらしい。けど、思ったように描けずに困っていたようで、教えてくれる人がいたらいいのにな、と思っていたと言う。
もし良かったら、と言われ、僕は被せるようにして、僕で良ければ、と返事をした。
雨の日の帰り道がこんなに楽しいのは初めてだった。
私、家こっちだから、と分かれるところで咄嗟に言ってしまった。どうしてそんなことをしたのか、と今でも思う。きっと、彼女が一瞬悲しそうな表情を見せたから。それ以上に僕は彼女のことが好きだったから。理由は分からない。
「みさきさん、僕と付き合ってくれませんか。」
彼女は目を丸くした。そして、困った顔をしながら戸惑っていた。
僕は自分のした過ちに気が付き、訂正をしようとした。
が、先に言葉を発したのは彼女だった。
「ごめんなさい。」
そりゃそうだよな。そう思いながら、こっちこそごめんと謝ろうと彼女の顔を見た。
雨のせいではないはずだ。彼女は目には涙が浮かんでいた。
その時、何故か僕は初めて彼女を見た時の光景を思い出していた。