けど、心に余裕なんて要らなかったのかもしれない。
誰もいなくなった部分はなかなか埋まりそうもなくて、焦って人を探しても虚しくなるだけだった。
そんなはずはないのに。
確かに楽しかったはずなのに。
確かに安心したはずなのに。
それが偽りだったと気付いてしまった。
姉の旦那は俺とよく似てる。
表の顔を作るのが上手くて、本当の自分を見てもらえなくて、それは自分が望んだことなのに、それは自分が招いたことなのに。
けど、姉の旦那には俺がいる。
理解出来る俺がいる。
安心したように崩れた姉の旦那を見て、俺は、俺は、俺は。
寂しいよ。悲しいよ。辛いよ。痛いよ。
体も心も薬がないとまともに動きもしないのに、薬があるからまともに見られてしまう。
うつ病に罹ってるようには見えないと言われても嬉しくなんかない。それは責めてるのでしょう。薬を飲んでいてもまともに振る舞えるなら働けるだろと。
働けるなら働いてるよ。それでみんなと対等になれるなら、みんなと笑えるなら、みんなに混ざれるなら。
でも無理なんだ。無理なんだ。
余計に働く頭がなければ、余計に動く顔がなければいいのに。心が動かなければ、心が固まってしまえば、そうすれば、そうしたら・・・?
俺はなんになるんだろう。
誰も救えない。誰にも救われない。
ただ働くために生きることになんの意味があるんだろう。
働くことにも生きることにも意味なんて要らないんだと、そう言われても意味を見つけるために彷徨って来たんだよ。みんなに意味を与える役は俺がするから、誰か俺に意味を与えてよ。