全て箱に詰めて置いてきた
持ってくるにはあまりに重く
かといって忘れることもできない
そんな経験も何かの役に立つと思い
箱を重ねていった
積み重なる箱の数は日に日に増えていった
その上に座ると少し気持ちが楽になった
辛かったこと悲しかったこと
その全てを乗り越えているのだと
言葉通りのことを実行するだけで
達成感に浸ることができた
高く積み重なる箱の上から眺める景色は
今まで見たことのないもので
それは綺麗というには程遠い
けれど感動を覚えたのだ
周りの人間にそれを伝えようにも
見えないものを理解出来るはずもなく
私は孤独を感じながらも
自分は特別だと誇れるようになった
積み重なる箱の数は幾百となり
周りの人が米粒のように見えた
その人達が抱える悩みは
踏みつけている箱の中にあるものばかりだった
なぜ今更そのことで悩むのか
なぜその歳まで気付かなかったのか
なぜ他人の痛みに気付けないのか
なぜ自分の悪さに気付けないのか
そんなことは聞くまでもない
私はこんなにも高い場所にいるのだから
優越感を覚えながら
同時に寂しさを感じていた
私が誰かのことを理解できたとしても
誰かが私のことを理解することはなかった
感謝されることにもはや喜びは覚えず
感謝する機会を求めていた
箱から降りることも考えた
しかしこの箱がなかったとして
残る私に価値はあるのだろうか
迷いながら積み重ねる内に降りられなくなった
目と耳は良いようだ
見ようとすれば見えるし
聞こうとすれば聞こえる
けれど私は誰にも見えない声は誰にも聞こえない
痛みは止まることがなかった
これだけの痛みを積み重ねても
まだまだ痛みは増えていく
なんで私ばかりこんなに
忘れて忘れて忘れて忘れた
痛みも悲しみも箱に詰めた
私は積み重ねてきた
ずっと罪重ねて