傘地蔵のお話からです。
貧しいが心が清い老夫婦が、道端のお地蔵さんに売れ残りの菅笠をかぶせてやる話で、傘が足りないので最後の一体には自分のてぬぐいをかぶせてやった。
その後、その地蔵さんたちに恩返しを受けるという話です。
日本のお伽噺の一つですが、善悪の構図を取っていないのが特徴で、正しいおこないをすれば、正しい評価として返って来るという道徳的な面も持っている話かと思います。
ここで、自ら出来る、環境保全、脱炭素、省エネの問題を考えてみたいと思うのですが、やはり、どうしても道徳的な面が出て来ると思います。
「どんなに温暖化の危険性を説いても、環境のためだけに行動できる人はほとんどいません、エンジンをかけるたびに罪悪感を感じていられないでしょう」
これが本当のところかと思います。
ここでアウトドア業界を取り上げたいと思います。そもそも、自然で食べているのだから、環境に配慮していないはずがない。それこそ「仏作って魂入れず」でしょう。
“パタゴニア”です。
パタゴニアは、衣料品を中心にアウトドア系のグッズを製造・販売している会社です。直営店に展開しているため量販店では基本的に取り扱っていません。安いものがないのが特徴でしょう。
事実、本当に高いです。しかし、他のメーカーと比べると肌にフィットする感覚がさらりとしていて着心地がいいのです。さらに、壊れると無料で?修理してくれると言う噂もあります。
パタゴニアの自然感を読み解いてみたいと思います。
レスポンシブル・カンパニー イヴォン・シュナード共著
恐怖の存在 上・下 マイクル・クライトン著
以下、内容にふれます。※「恐怖の存在」は核心部にふれますので未読の方は気をつけてください。
■パタゴニアの商品とそこに働く人たち
パタゴニアはアメリカの登山家、イヴォン・シュナードさんが創業したメーカーで、パタゴニアの他にスキーで有名なブラックダイヤモンドもこの人が創業したそうです。
「昔のパタゴニアでは、山の登りやサーフィン、放浪が大好きで、年に何か月かだけ仕事をしたいと考える変わり種がたくさん働いていた。物理学や生物学で学位を取ったが、学術研究の世界になじめない、あるいはなじみたくないなど、なにがしかの理由で違う道に進もうと考えた人びともたくさん働いていた。そんな彼らがパタゴニアを気に入ったのは、同じように異端な人たちがたくさん集まっていたからだ」
「パタゴニアで仕事をしている人やパタゴニアに入りたいと思う人は、その理由として、会社と自分の価値観が一致していることが挙げる人が多い。このように深い部分で会社とつながっていると社員のモチベーションが高まり、仕事が大変になったときにも冷静沈着な対応が可能になる」
・・・サーファーやクライマーは自然を愛しているので、ずっとその中にいたいと思う人種なんだよ。
■世界の市場と雇用の動向
「昔は労働者は、国の年金はもとより企業年金ももらえる人が多かった。当時の大企業は、いまと比べてサイズも資金力も事業規模も小ぶりだったのだ。技術が急速に進歩して生産性は高くなり、労働力が余るようになった」
「増大した富は、中産階級よりもトップ10%の高所得者に多く流れ込んだ。この間、中産階級の実質所得は増えなかった。個人の収入が頭打ちになった結果、共働きの家庭が一般的になる。退職者が増加する一方、勤労者は減り、税金で退職者を支えきれなくなると言う形で、社会保障は先進工業国の大半でほころび始めた」
・・・世界経済が年率3%の成長を続けるのは無理だ。
■パタゴニアの利益追求と環境負荷
パタゴニアは自社でデザインをしますが、製造は委託しているとのこと。
「いまの産業モデルは200年も前のもので、環境的にも社会的にも経済的にも持続不可能になっているが、どのようなものであれ、事業をおこなおうとすれば、産業モデルの現状から逃れることはできない」
「製品が環境に与える負荷の90%はデザイン段階で決まってしまう。中国広東省でどれほどの負荷が発生するのかは、基本的にロサンゼルスのデザイナーがきめているのだ」
「パタゴニアの衣料品をつくっている人々の大半は、貧しい有色人種の女性だ。彼女らは毎日、タイムレコーダーを押すと、天井からぶら下げられた数字の指示に従い、長時間、ぶっ続けに働く。来る日も来る日も、パタゴニアのために衣料品を縫うのだ。パタゴニア向けの仕事をしない日には、競合他社向けの縫い物をする。彼女らの給料は、その雇主に我々がいくら払うかによって違ってくる」
・・・このような工員に対し、パタゴニアはどういう責任を負っていくのか?
■自然の流動と環境保護の難しさ
そもそも、自然保護の観念はアメリカから生まれました。自然保護の父と言われた「ジョン・ミューア」がセオドア・ルーズベルト大統領を自然の中に連れ出し、きらめく星を見上げ、語ったことが、ヨセミテ国立公園の設立につながったとのこと。
しかし、イエローストーン国立公園での悲劇は、痛々しいものでした。
公園管理局は、内務省に設けられた新しい部局です。設立の目的は公園をオリジナルの状態に維持することにありました。
エルクが滅びかけていると思い込んだ管理局は、エルクの数を増やすため、公園にいる補食獣の数を減らすことにしました。公園内のオオカミをことごとく射殺したのです。さらに、インディアンには公園内で狩猟をすることを禁じました。
こうして過剰に保護されたエルクは、爆発的に増殖し、樹の枝葉や草を大量に食べあさりました。その結果、全滅された樹のなかに、ビーバーがダムを造るのに使う種類もあったため、まずビーバーが消えました。それによって、マスとカワウソが消えました。
今度は、エルクの個体数が多いのが原因だと、エルクを射殺し始めました。
介入の失敗を修復するために対策をとり、その対策で引き起こされたダメージを修復するため、またべつの対策を打つ、その連鎖です。
いっぽう、むかしからインディアンが行ってきた狩猟は、じつはエルクやムースやバイソンの個体数調整にひと役かっており、公園の生態系を安定させるうえで貴重な影響を与えていたことが徐々にわかってきました。
・・・いかなる行動にも、かならずデメリットはつきまといます。プラスの効果しかもたらさない行動なんてないのかもしれません。
■パタゴニアのポロシャツ
イヴォンさんは、従来の方法で栽培されたコットンが自然に多大な負荷をかけていると知ったとき、パタゴニアという会社は、思わずうめに声をあけたそうです。
「われわれがよく使う四種類の繊維(コットン、ポリエステル、ナイロン、ウール)について、その環境負荷を調べることにした。この調査により、天然繊維のコットンがどれほどひどい状況なのかが確認された」
「植え付けの準備として畑に有機リン系農薬を散布し(有機リン系農薬は人間の中枢神経を侵す)、地中の生物を根絶やしにする。この処理をすると土は完全に死ぬ(このあと農薬を使わずにいても、五年間は、土が健康である証のミミズが戻ってこない)。この土でワタを育てるには、大量の化学肥料が必要だ」
「いま使われている農薬の大半は、第二次世界大戦時に神経ガス兵器として開発されたものであり、いまのような形でコットンが栽培されるようになったのは、第二次世界大戦後なのだ」
「我々は1994年秋、大きな決断をする。1996年までにはスポーツウェアに使うコットンをすべてオーガニックコットンにすると決めたのだ」
・・・それがどれほど大変なことなのか、我々は知らなかった。でもやらないという理由はなかった。
■パタゴニア社員のやる気と地域社会への貢献
パタゴニアもメーカーであり、現状を維持するだけで年率3%の売上増加が必要になるそうです。
イヴォンさんは「生活費を稼ぐために我々が売りつけ合っている製品は、大半はがらくたである」と言いますが、「なるべく買うな」と顧客に言いつつ、売上を伸ばしていくことなどできるだろうかという疑問にぶちあたります。
パタゴニアは、「顧客と二人三脚で、必要のないものや長持ちしなうものは買わないと誓約することを顧客に求めている」そうです。
「このような取り組みを進めると売り上げは落ちるだろうか。そうはならないと我々は考えている」
イヴォンさんは、年間の売上の1パーセントを環境保護にあてる組織を立ち上げました。「1パーセントフォー・ザ・プラネットへの加盟は、ビジネスにプラスとなる。2008年から2009年に景気が大きく落ち込んだとき、1%フォー・ザ・プラネット加盟企業のトップ五社は、いずれも、史上最高の売上を記録した。景気が悪くなると、皆、取引先を絞るし、財布のひもを締めなければならない場合、尊敬、信頼する会社から買おうとするからだ」
パタゴニアの社員は、昼間にサーフィンやランニングに出かけるのも自由だそうです。「代わりに朝早くに出社したり遅くまで残ったりして、やらなければならない仕事をきちんとやりさえすればいい」
「グーグルには労働時間の20%を好きなことに使っていいというルールもある。
大型動物が気候変動と開発によって生息地を追われ、移動していく経路をマッピングしようと原生地関連の活動家たちが努力していたとき、グーグルアースの社員が何人か、労働時間と専門知識を投入して、支援してくれた」
・・・正しいことをしようとするからモチベーションが高まり、普通ならあきらめることもあきらめずにがんばるようになる。
■知らないから怖い、知れば安心、でも、内容の真偽はいかが?
グリーンランドの氷河は融けていて、もうじき完全に消えてなくなるそうです。でも科学者たちは、グリーンランドの氷は融けてしまうかもしれない。一千年後には、と。
都市部は周辺の郊外よりも暑いのは、いわゆるヒートアイランド現象です。地表の平均気温が上昇している原因は、はたして都市化にあるのか、温室効果にあるのか。
キリマンジャロの氷河がなぜ融けているのか?有力なのは、森林伐採によるという説。キリマンジャロ山の山麓にある熱帯雨林はどんどん伐採されてきました。それにともなって山頂へ上昇する空気も湿潤でなくなって行きます。だから専門家は、森が再生されれば氷河はふたたび拡大するのではないかと考えているそうです。
恐るべき、空前の、戦慄のというような危険なる単語の使用頻度が跳ね上がるのは、かなりの精度で、1989年の秋と特定できるそうです。それほどうも、ベルリンの壁倒壊の件と密接な関連があるらしいのです。
1989年まで、およそ五十年に渉って、西側諸国は市民を絶えざる恐怖の極相に置いておいたのは。東側の恐怖です。核戦争の恐怖。共産主義の恐怖。鉄のカーテン。悪の帝国。いっぽう、共産圏諸国は共産圏諸国で、それを反転させた恐怖を国内に蔓延させていました。
つねに恐怖する対象がある。その対象は時とともに移りかわるが、恐怖自体はつねにわれわれとともにあります。要するに、恐怖の対象そのものは変わっても、恐怖そのものからは決して逃げられないということです。
西側諸国は信じられないほど安全ではないでしょうか。それなのに人々は、安全ではないように感じているのです。
映画「コンタクト」原作者で科学者のカール・セーガンは、「過去の悪魔にとり憑かれた世界から人類を救える希望の星は、たったひとつしかない。科学だ」と言いました。
しかし、いま現在、科学者たちは、パトロンのもとめに応じて肖像画を描かねばならい画家のようだと言います。
・・・「これは推測ですので、事実と異なる恐れがあります」との注釈が必要ではないでしょうか。
■小売店ウォルマートがアプローチしてきた
イヴォンさんはいいます「状況があまりにもバランスを欠いていれば、いつかは、多くの人がおはしいと思うようになる。現在、我々が直面している社会や環境の不均衡も同じだ」
「狭い地域やちょっとした河川を守ろうと小規模のグループが悪戦苦闘しており、その努力が大きな成果をもたらす場合もあることがわかってきた。これは、三つの教訓をわれわれに与えてくれた。草の根の活動で成果をあげられること、傷ついた生息域も努力次第で復元できること、自然とは遠くの物言わぬ世界ではないこと」
・・・そんなパタゴニアの活動に意外なところから声がかかりました。
「環境への対応について教えてほしいとウォルマート経営陣からアプローチされたとき。いったいどういうことだと困惑した。両者はあまりにも大きく違っており、我々が彼らの助けになることも、あるいはその逆も、想像すらできなかったからだ」
ウォルマートの経済規模はスイス1国よりも大きいそうです。
ウォルマートはいわゆる小売の安売り王的な存在だそうです、しかし、侵略的な経営や第三国で子供を働かせていたなどの悪評が立ち、売上が大きく傾いたとのこと。ビジネスのやり方を大きく見直すことになったとのことです。7年以内に温室効果ガスの排出量を20%削減するなどの環境に配慮した経営に切り替えました。
・・・つまり「環境対応を進めたほうがお客を惹きつけられる」という事です。いろいろな取引先のあるウォルマートの経営方針の変化は、世界各国で影響をおよぼすとみられています。
■誰がお地蔵さんに笠をかけてあげられるのか?
パタゴニアの理念の崇高さと、イヴォンさんの行動には頭が下がる思いです。しかし、
パタゴニアの商品を買おうと思いながらも、気がつけばモンベルの商品に囲まれている状況です。※モンベルが環境対策してないわけではないと思いますが・・・。
個人でできるここと言えば、コンセントを電源タップにかえるとか、LED照明に取り替える、冷蔵庫、照明、テレビ、エアコンは買い替え時には最新の効率の良いものに変える。家の断熱材、断熱化が弱いと、外が暑いと家の中も暑い、外が寒いと中も寒いということになるので、断熱シートを張るとか、内窓を設置したり・・・続くかな?
結局、世の中の流れが再生可能エネルギーに流れているので、パソコンやスマホと同じように、いやがおうにも買わなければならない時がくるのだと思います。
しかし、フロンガスが禁止されたことにより、安価に冷蔵する手段がなくなり、ムダになる食料が増え、食中毒による死者が増えました。DDTの禁止も、安価の殺虫剤がなくなり、マラリアが蔓延して死なずにすんだはずの人が死んでしまったり。再生可能エネルギーが増えて、石炭・石油産業が衰退すればそれで食べていた人も困るだろうと思います。社会はなんて矛盾に満ちているのだろう・・・
・・・でも「私には夢がある」と言ったのはキング牧師です。夢や理想、希望、憧れと言った言葉。恐怖に打ち勝つ勇気はこういう言葉から生み出されるような気がします。
こうして座って風景を見ていると、一つ気がつくことがありました。
・・・そうだ地球は丸いんだ、だからまた明日がくるのですね。
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※これで、ようやく用意したプログラムすべて終了しました。またネタ・写真を集めて再開出来たらいいなと思います。誤字脱字、長文お読みいただき大変ありがとうごさいましたm(__)m



