俳優のレオナルド・ディカプリオさんがアカデミー賞の主演男優賞を取ったのは、2015年でした。受賞インタビューで「環境」のことについて語っていましたが、正直?でした。

しかし、この当時、ディカプリオさんは国連の気候変動問題担当の国連平和大使に任命されていたのです。

そして、その年のフランス・パリで行われた地球温暖化の国連会議COP21で、「パリ協定」が合意されました。

ディカプリオさんが環境問題に興味を持ち始めたのは子供の頃からだったそうです。近所に自然史博物館があり、すでに絶滅した動物の標本が飾ってあったそうです。

ドードー、リョコウバト、タスマニアタイガー、モア、オオウミガラス、クアッガ。

「私の本当の気持ちを知っていたら国連大使に選んだ人選はあやまちだったと思うに違いありません。絶滅した動物がなぜ絶滅したのか、また、環境に関する悲惨なニュースを聞いていて、人類に対して悲観的になっている自分を誰が選んだでしょうか?」

「あの時代と違うのはすべてをわかってからやっているのです。それもとつてもなく大きな規模で」

温暖化問題は科学から政治、経済と多岐の領域にわたり、しかもエネルギー問題でもあるため、非情に複雑で全体像がわかりにくくなっています。科学者も温暖化の意見が分かれています。

メディアもディカプリオさんに対して、「世間知らずのため気候変動の大嘘に引きずりこまれた」「気象変動の危機の嘘を広めるために科学の見識のない俳優を適任なのでしょう」と揶揄されるくらいです。私もその口でした。

今の青い空にはいろいろな意味がありそうです。

 

ディカプリオさんと環境を巡る旅に付き合いたいと思います。

BS世界のドキュメンタリー 地球が壊れる前に ディカプリオの黙示録 前篇 後編

地球温暖化は解決できるのか 小西雅子著

以下内容にふれます。

■現在の気温が4度上昇した時の私達の暮らし

地球が温暖化することはもはや防ぐことはできないそうです。でもこのまま温暖化対策をとらないでいると、地球の平均気温は100年後に4度程度も上がってしまうと予測されています。

気温はここ1万2千年あまり奇跡的に安定していたそうです。上昇もプラスマイナス1度で推移していました。

しかし温暖化により気温が2度上昇するとサンゴは死滅していきます。3度~4度で熱波が起こります。赤道の農業は全滅。降雨帯の移動により干ばつが世界中に広まります。食料問題が危機的に発生します。

平均気温が5度違うならば氷期になるような大きな変化を地球上にもたらすのです。しかもこれは1万年以上もかかって変化したものですが、現在はたった100年間で平均気温を4度も上昇させるような変化を地球上に発生させています。これは多くの生物が順応していけないような急激な気候変化です。

環境省が2014年3月に発表した報告書「日本への影響」によると、温暖化が進むにつれて、熱中症などによる死亡者数が急増します。たとえ2度の上昇でも死亡者は2倍以上、洪水の被害は今世紀末には現在の2倍程度に増大する可能性があると示されてします。4度上昇した日本においては、今と極めて違う日本になっている恐れがあります。

 

■アメリカ合衆国-気象学者に聞く

世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって、1988年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が設立されました。このIPCCは、一つの研究機関というわけではなく、世界中の温暖化に関する研究者が発表する研究論文から、多くの研究者が信頼できると認めた知見だけを集めて報告書とする作業を行う機関です。つまりIPCCが発表する報告書は、世界中の科学者の大多数が統一見解として認める。国連の温暖化科学の集大成なのです。

特に2007年の第四次報告書からは、産業革命以降地球が温暖化していることは疑う余地がないと結論付け、今起きている温暖化が人間活動によって引き起こされている可能性は非常に高いと示したのです。20132014の第五次報告書では、可能性が極めて高い(95%の確かさ)と示されました。

しかし、温暖化はでたらめだという人達は数多く存在するのは事実です。

気候学者「偽情報が横行している」

ディカプリオ「あなたも被害を受けたとか」

気象学者「研究をテレビで発表したとたん脅迫状が来ました。殺すって」

ディカプリオ「誰がそんなことを?」

気象学者「温暖化に反対している団体が、下院と上院の議員を金で買いました」

ディカプリオ「何が狙いなのでしょう?」

気象学者「世論を分断させることです。隠れ蓑団体を作り資金を提供しているのです」

ディカプリオ「あなたも大変ですね」

    ・・・だから時々の飲みたくなるのです。

■カナダアルバータ州の森林地帯とパイン島を巡る旅

カナダは世界第2の国土を有し、国土の54%を森林で覆われています。国旗でメイプルの木が使われるほどの森林資源が多い国です。

カナダのアルバータ州のタールサンドの採掘現場は、大手のエネルギー会社によって大規模な開発が行われています。原油を含んだ砂岩でオイルサンドとも呼ばれています。

森林がまるごとなくなっていて黒い砂がえいえいと広がっています。

ディカプリオ「モルドールみたいだ・・・ロード・オブ・ザ・リングの黒い国」

採掘した砂岩を抽出して精製するため、パイプラインで工場につながっています。カナダはこのために京都議定書から離脱したと言われています。

カナダのパイン島は極北の地で、厚く張った青の氷が広がっていました。それが今ではアイスクリームのような氷になっています。

「2040年には北極は船で移動できる。北半球のエアコンなくなり、海の流れが変わり、天候パターンに影響を与え、洪水や干ばつの被害で壊滅的になる」と言われています。

また、グリーンランドの氷が溶けて流れだしているので、メキシコ湾流の流れがゆっくりになり、熱は暖流によってヨーロッパに運ばれるために、ヨーロッパは寒冷化すると予想されています。

■インドネシアスマトラ島を巡る旅

熱帯雨林は大量に二酸化炭素を吸収して、酸素として大気中にもどしています。現在世界の熱帯雨林は東南アジアのインドネシアや、アマゾン、アフリカのコンゴ盆地が残っています。

インドネシアのスマトラ島のパーム畑は、非常に安い農産物で莫大な利益が得られるため森を切り崩して畑が広がっているそうです。パームオイルは、食用油、洗剤、加工食品、化粧品多々使われています。

ディカプリオ「これだけの森林を破壊したと思うと信じられない・・・」

オラウータンが数多く住んでいましたが、今では住むところを追われて保護されている状態です。

ディカプリオ「食生活を変える?どの商品に使われているのかわからないのに。日々の決断が森林を破壊しているのは事実ですが、それを消費者が避ける方法があるのだろうか?

    ・・・自分が現実離れした映画にいるように感じました。

■キリバス大統領に聴く南太平洋キリバスを巡る旅

「島がいつ沈むかではなく、その前に起こる危機的な状況が問題なのです。キリバスは間違いなく海に沈むます。現在ひどい洪水に襲われています。キリバスではフィジーに土地を購入して今日でも移住できるようにしています。太平洋の島々は驚異に怯えてくらしているのです」

    ・・・温暖化の原因を一番作っていない島々が一番影響を受けているのです。

■インド環境大臣に聞くインドを巡る旅

「インドはエネルギーの確保が重要な問題となっています。総世帯の3割に電気がとどいていない状態です。この人達は牛の糞を燃料として使っています。この人達が石炭を使うようになったらさらに環境問題は深刻になります」

「インドの石炭の埋蔵量は世界3位から4位です。安価で手に入りやすいとなれば、手を出すでしょう。先進国は私達の過ちを繰り返す必要はないとはいいますが。ぜひともアメリカからやってほしいものです。でもそうなってないのが現実です」

「アメリカ人1人のエネルギーの使用量に対して、フランス1.5人、日本2.2人、中国10人、インド32人、ナイジェリア62人です」

「私は気候変動の最初の打撃に持ちこたえる経済力がありますが、インド、バングラディシュのまずしい人達は最初の打撃に耐えられません。今年なんて5時間に半年分の雨が降って、玉ねぎ畑が全滅してしまいました」

「生活のすべてを失った人、弱った人はつけこまれやすいのです。過激思想に引き付けられる」

ディカプリオさん

・・・何をするのが正しいのか、どのような行動をとるべきなのか、たびたび自問します。みんながアメリカ人のライフスタイルに憧れて真似をします。私達アメリカ人が手本をしめすべきなのですが・・・。

■パリ協定の合意

2015年にパリで開かれたCOP21において、世界第1位の二酸化炭素排出国の中国と世界第2位の排出国のアメリカが手を結んだことにより、一気に流れがパリ協定の批准に流れて198の国が参加する歴史的な協定となりました。

パリ協定は京都議定書とは違って、削減目標の達成は義務としなかったのです。削減目標が義務化されるならば、アメリカをはじめ、日本、中国、インドなど多くの国々が参加をためらうことは必定でした。そのため、パリ協定自体には法的拘束力という強い力を持たせていますが、それぞれの国の目標を達成することは義務としなかったのです。その代わりに5年ごとに目標を掲げることが義務となり、さらに目標を達成することための温暖化対策の導入や実施も義務付けされました。これらの策によって、すべての国の参加を確保したのでした。

すべての国に、自国の削減状況を同じ制度の下で報告させ、お互いにその状況を検証する仕組み「国際的な報告・検証制度」を導入しました。いわばそれぞれの国の目標の達成状況を国際的にさらす、という仕組みなのです。排出量の多い国というのは、先進国や開発がすすんでいる新興国ですから、いずれも大国です。大国であるほど、国の信用や体面を大事にします。

このような国際的に報告や検証される制度があるなれば、目標達成に向かって頑張らざるを得ない、という心理面をついた仕組みなのです。

パリ協定の目標は温暖化を2度未満で抑えることです。

■アメリカ合衆国-オバマ大統領に聴く

ディカプリオ「反対派もいる中でもし気候変動の科学を否定して選挙を戦った人が大統領になったとしたらどうなるでしょう?」

オバマ「常に反対派はいる。気候変動の科学を否定して選挙を戦った人が大統領になったとしても。現実が相手の鼻をあかしてくれる。国民は科学を理解し始めている。議論の余地はない」

ディカプリオ「楽観的ですね、大統領は自由世界のリーダーであり、ほとんどの人が知りえない情報に接する機会があると思います。未来は悲観的に感じますが」

オバマ「世界の人口の極めて大きな割合が海の近くにすんでいる。移動を始めたら乏しい資源の奪い合いになる。これは極めて重大な安全保障上の問題だ、その一方で、アラスカの氷河の美しさや壮大さ、自分の見たものを子供や孫にみせたいと思わないか。感傷的でロマンチックと言われるかもしれないがね」

ディカプリオ「既存の世界秩序を乗り越えられるでしょうか」

オバマ「できると信じている」

    ・・・2017年にトランプ大統領が就任し、そうそうにパリ協定の離脱を宣言しました。

しかし、実際にパリ協定を正式離脱できるのは、2020年11月4日だそうです、その1日前、11月3日がアメリカ大統領選挙です。

    ・・・これこそまるでアメリカ映画のようです。

■エネルギーの大転換-中国を巡る旅とテスラモーターズ社長に聴く。

中国は世界第1位の二酸化炭素排出国です。欧米のあらゆる国のために製品を作り、昼間の北京のスモッグは健康にどれだけの被害があるのか。

しかし、現在では風力か、太陽光を優先しようとしています。それも予想をはるかに超えたスピードで。

これは世界的な「エネルギー大転換」の動きであります。欧州連合では、再生可能エネルギーが商業的に普及してきて、十分に経済的なエネルギーになっていることが挙げられます。

NHKのクローズアップ現代で中国企業が日本に再生可能エネルギーの売り込みを促進していて、土地や場所を探しているとのこと。また、環境問題でノーベル賞を受賞したアルゴアさんは、世界初の炭素長者とも言われているとか。※本人は別な事業で成功したのであって、炭素で儲けたわけではないと否定していました。

テスラモーターズ社長で、スティーブ・ジョブス以来の天才だと言われるイーロン・マスクさんは言います。

「コストをさげて手頃な値段のバッテリを量産すること、持続可能なエネルキーにバッテリーは不可欠ですからね」

「村まで何万キロも高圧線をを引くようなことはないのです、途上国が電話線を引かずに最初から携帯電話を導入したようにね」

「我が社では、ネバダ州に巨大バッテリーの工場、ギガファクトリーを建てました。150万㎡で世界最大の建造物です。これが100個世界にあれば、世界のエネルギーが全部まかなえます」

■宇宙から見た地球-ピアーズ・セラーズさんの話

ピアーズ・セラーズさんは元宇宙飛行士で、気象変動への警鐘を鳴らす活動をしています。

「宇宙から地球をみると大気は玉ねぎの薄い皮のようなんです」

「夜の町では多くの人が眠らずに働いているのがわかります。巨大な大気の渦、ハリケーンの巨大さや、アマゾンに日が当たると森林が目覚めるのがわかります」

「私は、地球やそこに住む人が好きになりました」

「私は、すい臓がんでステージ4です。だから長生きはできない」

ディカプリオ「あなたは、なぜそう楽観的でいられるのですか?」

「解決策は見つかります。正しいことをすれば、気温は止まって、再び下がります」

「人は問題や誤解など、当初の不確実さから脱出すると、ある程度、現実的にその脅威を理解し、最善の取組するからです。前に進み、やり遂げるものです。実現できない解決策を成し遂げるものなのです」

    ・・・希望はあります、絶望ではなく

■旅を終えてディカプリオさんの国連での演説

ローマのバチカン法皇は地球上で最も重要な精神的な指導者の一人です。その法皇が気候変動の現代科学を受け入れるように国際社会にうったえたのです。歴史上法皇がこのような呼びかけをしたことはありません。

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900mの低山の頂上です。昔から登っていますが、何も変わらない眺めです。

老夫婦がラジオをつけていて、カーペンターズの「イエスタデイワンスモア」が流れていました。※本当です。

最後に2年間の旅を終え、パリ協定締結の後でディカプリオさんが国連で演説した言葉です。

「人類史上、いかなる大義のためにも集まったことのない数の人がパリ協定の署名のために集まりました」

「しかし残念なことに、これでは十分ではありません、いますぐ大がかりな転換が必要です。新しい集団意識につながる転換。それぞれが国に帰り、この歴史的協定以上のことを目指さなければ協定は意味を失います。みなさんは将来の世代に賞賛されるか、非難されるかのいずれかです。みなさんは地球の最大にして最後の頼みのつなです。どうか地球を守ってください。さもないとすべての生き物は失われた過去になってしまいます」