ジャニーズ事務所編の続きです。
まず、ジャニーズがアイドルタレントという市場を創造した当時の背景から説明します。かつて、歌謡曲はラジオによって広まりました。当然、耳で聞くだけですから、歌唱力や歌詞の内容を重視した音楽がヒットしました。
その後テレビの普及によって、歌唱力に加えルックスも重視され始めました。ところが歌謡曲は大人をターゲットにしており、子供向けには童謡やアニメの主題歌がほとんどでした。ところがGSブームを契機に、子どもや若者が音楽番組を見るようになってきました。
そんな中で登場したのが、ジャニーズでした。ところが、歌謡曲を若い美少年グループが歌うというものだけでは、歌唱力でベテラン歌手にはかないませんし、他の個性に欠けるジャニーズはやがて飽きられ、歌謡界という市場から撤退します。
ここで、アイドルという新しい存在が消えかけていましたが、アイドルタレントへの潜在ニーズが高いことに気づいた喜多川氏が、次に導入したのが・・・
「フォーリーブス」。
安定した歌唱力の青山孝、運動神経抜群で、歌いながらバク転を見せた北光次、子供向けドラマ「マグマ大使」の主役子役の江木俊夫、小学生子役永田英二という4人で結成されたフォーリーブスは、一人一人の個性が強いグループとして脚光を浴び、歌謡界に新風を巻き起こしました(永田英二は、のちにおりも政夫と交代)。
プロモーションも、従来の歌謡番組だけではなく、ドラマにゲスト出演(俺は男だ他)や、映画出演を行うなど多彩な活動で、アイドルタレントという市場を確立しました。
当時、娯楽の少ない時代で日曜日には家でテレビを見る子供が多かった中、日曜の午後に放送された「ロッテ歌のアルバム」では、ベテラン司会者の玉置宏のアシスタントMCを務めるなど、幅広い層へプロモーションを行い、市場を拡大していきました。
まとめると、「ジャニーズ」は、歌謡界という既存の市場の中に、新たなニーズを発見したが、商品力の不足からアイドルという新商品の開発に失敗。
一時市場から撤退し、その反省を踏まえ、新たに商品力を高めた商品(フォーリーブス)を投入。しかも対象市場は既存の歌謡界にとどまらず、潜在するニーズを掘り起こし、新たなアイドルタレントという市場を作り、世の中に浸透させていきました。
マーケティング論的に言えば、アンゾフの成長ベクトルでいうところの、製品開発を行い、歌謡界という既存市場に投入したところ、競争力の弱い完成度の低い製品で、十分に市場に受け入れず撤退を余儀なくされた後、新しい製品が市場に受け入れられたため、その製品を持って、新しいアイドル市場という市場を開拓したと言うところですね。
この市場に対して次に投入されたのが、「フォーリーブスの弟」というキャッチフレーズで「ロッテ歌のアルバム」など、フォーリーブスの番組に起用される一方、NHK大河ドラマ「平家物語」で、源義経を演じ、デビュー前から、アイドルファンのニーズ獲得戦略を経てデビューした郷ひろみです。
ジャニーズ篇はまだまだ続きます。(敬称略)