迷走する改正派遣法案 | 今日も元気に頑張ろう! ビジネスは創造と挑戦

迷走する改正派遣法案

昨年の臨時国会に提出された派遣法改正案ですが、今年の1月5日から始まった通常国会に、継続審議としてまわされています。


しかしながら、いまだもって審議に入れず、更なる規制強化に進む動きすら見えています。


民主党は、独自に派遣法改正案を作成することで進んでいます。民主党案では、製造業の派遣を段階的に禁止する方向に持っていこうとするもので、共産党などの意向とは異なるものです。


しかし、支持母体である労働組合の中には、製造業の派遣全面禁止には、反対しているところもあり、足並みがそろっているとはいえないようです。


政府・与党は、製造業の派遣は、禁止せず、労働者の契約が終了してから3年程度以内であれば再契約できる経過期間をおき、経過期間で企業に派遣社員の正社員化などの努力を促そうとしています。


そもそも、この迷走劇は、昨年からの「派遣切り」を意識してのものです。


派遣労働者数は、全労働者の2.4%程度の140万人程度です。そこだけをクローズアップして、あたかも、企業の横暴という論法は、解せない気がします。


しかも、派遣は、必ずしも契約更新が保障されているわけではなく、派遣労働者も自らその雇用形態を望んでいる人たちがいることも忘れてはなりません。


昨年の今ごろ、製造派遣に従事していた労働者たちが、「正社員になるつもりは無い。派遣という自由に働ける現状のほうが、制度に縛られる正社員より自分に合っている」として正社員登用を拒絶する人もいたほどです。


もちろん中には、正社員に登用されたくてもされなかった人たちもいたことは事実です。ここで大事なことは、なぜ正社員に登用されなかったのかを、振り返ることです。その上で、成長していって欲しいと思います。


こんな時代背景ですが、舛添厚生労働大臣が、個人的な意見といえども、製造業の派遣は禁止すべきだといったことは、今後の展開に大きく影響してきます。


雇用の安定を保てないから、製造業の派遣を禁止するというのであれば、舛添大臣の勉強不足です。


実は、2004年の製造業派遣を解禁した後、請負会社の多くが派遣会社に転じました。本来登録型であれば許可が要るところ、多くの請負会社は届出で済む、特定労働者派遣事業を選択しました。


手続きが簡単な上、難しい条件がないからです。2003年度の特定労働者派遣事業の事業所数が9,134事業所であるのに比べて2007年度は、何と30,014事業所に急増しています。


たった4年間で、3倍以上に拡大しているのです。このすべてが製造業の派遣というわけではありませんが、2004年に製造業務の派遣が解禁されたこと、2007年にその派遣期間が最長3年に延長されたことを考えると、増大した因果関係が明らかになってきませんか。


ここでいいたいことは、今回派遣切りにあった派遣会社の中で、どれくらい特定労働者派遣事業の事業所があったかということです。


本来、特定労働者派遣事業者は、派遣できる労働者は常用雇用の労働者に限られています。つまり派遣先の仕事がなくても、派遣会社に常用雇用されているのですから、派遣切りになっても雇用の保障はされているのです。


厚生労働省が、ここを問題にしないのは、自分たちの不備をつかれないようにするためとしか考えられません。どんどん特定労働者派遣事業所を作っておいて、本来の常用雇用者以外の労働者を派遣する仕組みを作ってしまいながら、手を打てず、大臣が変な個人的な意見をいうのは、どうみてもおかしい気がします。


ここに至っては、すべての実態を明らかにして、これからの対策を打つべきなのではないでしょうか。