ロシア が対北朝鮮外交を活発化させている。7月6日、国営ラジオ「ロシアの声 」(旧モスクワ放送 )が日本向け放送で、ロシアガスプロム 代表団の訪朝についてこう報じた。

 ■対北朝鮮外交が活発化

 《ロシアのガス大手「ガスプロム 」とアレクサンドル・アナネンコフ副会長は北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国 )を訪問する中で、北朝鮮の副首相および石油相と会談した。インタファクス通信が伝えた。

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記事本文の続き ガスプロム の訪朝団は4日から6日まで北朝鮮 を訪れている。ガスプロム 側の発表によれば、アナネンコフ副会長は北朝鮮のキム・ヒ・イェン石油相との会談のなかで、「エネルギー分野における協力の今日的諸問題」を協議したという。またカン ・ソク・チュ副首相とも会談したとのこと。

 インタファクス通信は、北朝鮮 を通過するガスパイプラインを建設することによって、韓国 へのガス輸出はさらに利益性の高いものとなると指摘している。韓国 は現在、すべての国内需要を液化天然ガスの輸入によってまかなっている。

 またパイプラインを建設することによって、北朝鮮 自身のエネルギー問題も解決することになる》(7月6日「ロシアの声 」日本語版HP)

 リビア 、バーレーンなどの中東産油国 の政情不安定化により、原油価格が上昇している。原油価格が上昇すると、それにつられて天然ガスの価格も上昇する。さらに東京電力福島第1原発事故の影響で、世界的規模で脱原発の動きが加速している。その場合、地球温暖化 に対して与える影響が比較的少ないLNG(液化天然ガス)の需要が高まる。ロシア は、天然ガスを武器に帝国主義的戦略を展開している。

 ロシア で、天然ガスを含むエネルギーを管轄するのはプーチン首相だ。プーチン首相は、中国 に対して強い警戒感を持っている。これはプーチンだけでなく1970年代にKGB(ソ連国家保安委員会)第1総局(対外諜報担当、SVR=対外諜報庁の前身)で教育を受けたインテリジェンスオフィサーに共通した認識だ。中国 が、ウクライナ から「洋上カジノに用いる」と偽って購入した航空母艦「ワリャーグ」が近く訓練用空母として就航するとみられている。

 中国が太平洋で空母を展開するようになると、東アジア地域の勢力バランスが変化する。そのときに重要になるのが朝鮮半島だ。中国 を牽制(けんせい)するために、朝鮮半島に影響力を拡大することをロシア は考えている。

 ■腰の重い日本は相手にせず

 筆者のところにモスクワの事情通から入ってきた情報によると、5月にフラトコフSVR長官(元首相)が平壌を訪問し、金正日 国防委員会 委員長と会談した際に、ロシア北朝鮮 に対するエネルギー協力を約束した。今回のガスプロム 代表団の訪朝は、5月のフラトコフ・金正日 合意に基づいてなされたものと筆者は見ている。

 3月11日の東日本大震災後、プーチン首相は日本にLNGを追加的に割り当てる意向を表明した。これに対して、外務省 国際情報統括官組織は、ロシア にLNGをどこまで依存してよいか部内で検討したという。筆者のところに入ってきた情報では、ロシア 輸入するLNGの比率が輸入全体量の31%以下にとどまるならば、日本の安全保障に深刻な影響を与えることにはならないという試算を外務省 はしたようだ。それにもかかわらず、日本政府はプーチン首相のシグナルに返事をしていない。ロシア は日露の天然ガス協力を通じて、中国 を牽制しようと水を向けていることに、恐らく外務官僚が気づいていないのであろう。日本を相手にしていても、時間がかかるだけなので、プーチン首相は、北朝鮮韓国 に対して天然ガスカードを切ったのである。繰り返しておくが、その目的は中国 を牽制することだ。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/europe/517202/