編集部より:ミャンマーでは7日、20年ぶりの総選挙が行われる。しかし、主要野党が選挙をボイコットする中、ミャンマーに詳しい専門家や人権活動家の間で、今回の選挙がこの国に変化をもたらすという見方はほとんどない。GlobalPostでは、抑圧的な軍事政権下で沈黙を強いられている市民や、タイ国境の難民キャンプに暮らす人びとの声を取材した。

【11月7日 GlobalPost】「ビルマには不信感が存在している。本心を語ることは、命を危険にさらすことを意味する。何もしなくても、『沈黙を強いる刑務所』の中にいるようなものだ」。ミャンマー(ビルマ)のある中年男性は、国内で発言することの難しさをこう表現した。

 1962年の軍事クーデター以来、ミャンマーの軍事政権は投獄の恐怖をちらつかせながら表現の自由を制限し、人権を抑圧することで作り上げた『沈黙の刑務所』に国民を投獄してきた。

 ミャンマーを訪問する前、国外で暮らす若いミャンマー人の男性が「壁に耳あり」だと忠告してくれた。軍政は不協和音の種に目を光らせているのだという。

 観光ビザで入国し、道ばたでの人びとの会話に耳を傾けると、内容は政治ではなく日常生活に関するものばかりだ。国民は意見や感情を心の中にとどめているため、軍政の残忍さが表に出ることはない。

 取材に応じてくれた大卒の若者は、友人たちと人権についてよく議論すると明かしてくれた。だが、その後3回連絡してきて、自分の話したことを記事にしないでくれと念を押した。

 友人の紹介で取材をした相手はみなざっくばらんに話してくれたが、話が軍事政権に及ぶと、「オフレコで」と口をそろえた。言いたいことを言うことでどんな目に遭うかを考えれば、理解できる反応だ。

 2008年、有名コメディアンのザルガナル氏が逮捕され、禁固59年の有罪判決を受けた(後に35年に減刑)が、それは軍政のサイクロンへの対応の遅さを批判したためだった。

 軍政による恫喝とジャーナリストに対する厳しい規制が相まって、ミャンマー国内での報道活動は非常に難しくなっている。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は最近、ジャーナリストとして活動が困難な10か国の1つにミャンマーを挙げている。報道すれば投獄、強制労働のおそれがある。

 ミャンマーを旅していると、国民が内なるしなやかさを秘めていることに気づいた。渋々ながらも自らの苦境を受け入れ、与えられた自由の限界を知り、その中で立ち回ることを学んでいるのだ。

 ミャンマーでは日々生きること自体が困難であるため、軍政を変えようという考えは後回しになってしまう。天然ガスや原油などの資源に恵まれているにもかかわらず、国民の3分の1が貧困層で、1人当たりの国民総生産(GDP)は世界最低水準の500ドル(約4万円)未満だ。

 ミャンマーでは7日に総選挙が実施される。しかし、見かけだけの選挙になるのではないかという懸念から、国際団体などは選挙監視団による監視を要請してきたが、軍政の選挙委員会は「他国のためではなくミャンマーのための選挙なのだから、監視団は不要」として、国際監視団や外国のメディアの入国を許可しなかった。

 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」のデービッド・スコット・マティエソン氏は、大半の国民は総選挙を「自分たちとは関係ないエリートのゲーム」と見ていると指摘する。

 ある若者は「ビルマに必要なのは選挙ではなく、国民による革命だ」と語った。しかし、50年にも及ぶ腐敗と抑圧的な軍政が続いた後に、恐怖の中で成長することへの不安を口にする者もいる。

 ある女性は「国民は変革を待っているが、誰もが、ほかの誰かが何かをすることを待っている」と語った。別の女性は国民の多くは「カルマ(人間の身・口・意によって行われる善悪の行為)を待っている」と語ったが、ミャンマーでカルマを待つためには、ブッダよりも強い忍耐力が必要かもしれない。

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