例えば、米国で販売される乗用車のほとんどは、何らかの石油製品(たいていの場合はガソリン)を燃料にする。いったん給油をすれば数百キロの走行が可能で、給油所はいたるところに存在する。最終目的地で必要な燃料が確保できるかどうかを心配することなどなかった。

 こうした単純さにより、顧客の質問は取るに足りないようなものが多かった ─ この自動車はベビーシートをいくつ搭載できるだろうか、どれだけの大きさのボートトレーラーをけん引できるだろうか、この車を持てばクールに見られるだろうか。

どの選択肢が最適か

 ドイツの自動車メーカー、ダイムラーのメルセデス・ベンツ米国部門アドバンスト・プロダクト・プランニング担当ディレクター、サーシャ・サイモン氏は、内燃機関のグリーン代替の広がりは、真にどのような自動車が自身に必要か、といったより深みのある会話を客とディーラーに促すだろう、と話す。

 問題は、消費者の多くが選択肢に戸惑っていることだ。メルセデスの依頼により、ハリス・インタラクティブが成人2242人を対象に最近行った調査によると、約半数がハイブリッドや水素燃料電池、ディーゼル、電気自動車といった代替エネルギーを使用する自動車の購入に関心を示した。 

 しかし、ある特定の運転にどの技術が最適であるかを理解している、との回答は約35%に過ぎない。約71%はガソリン使用量を削減したりゼロにしたりするための複数アプローチが、いかに異なるかよく分からない、と回答した。

 これこそがメルセデスの懸念だ。というのも、同社は数種類の異なる代替自動車を手掛けているからだ。

 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の伝説の会長、アルフレッド・スローン氏は20世紀の自動車のマーケティングをこのように定義付けた ─ 1台の自動車をあらゆる目的に。そして今、メルセデスは新たなスローガンを提案している ─ 異なる自動車を異なる目的に。

都市居住? 週末は頻繁に遠出?

 頻繁に長距離を運転したり、大きなトレーラーをけん引する消費者は、メルセデスのスポーツ用多目的車(SUV)、およびセダンの「Eクラス」に搭載されているディーゼルエンジン「ブルーテック」が最適だ。

 都市に居住しているが、週末は遠出する運転手にとっては、ハイブリッドが正しい選択だろう。メルセデスは現在、セダンの「S400」とSUVの「ML450」の2車種のハイブリッドを取り揃えている。

 一部の消費者にはバイオ燃料が良いかもしれない。メルセデスの「C300」は、エタノール85%とガソリン15%を混合した自動車用代替燃料「E85」で走行が可能だ。しかし、問題がある。E85は、米中西部のトウモロコシ産地の一部以外では手に入りにくい。

 1日にわずか数キロだけ運転する真の都会人には、電気自動車(EV)が最適だろう。充電ステーションから遠く離れた場所で立ち往生する心配はない。ただし、車庫などバッテリーを充電するための場所を持たないマンションの住民は、別の選択肢を検討する必要がある。メルセデスはEVメーカーの米テスラ・モーターズに出資しており、間もなく欧州で電気自動車版の「Aクラス」を発売する予定だ。

 さらに、メルセデスは年内に、水素燃料電池で動く自動車約200台の初回の納入をリース契約を結んだ欧米の顧客に実施する。

 サイモン氏は「1つの技術がすべてに適合する」的な自動車へのアプローチを変える時が来た、として、様々なタイプの顧客を説得して回っている。このコンセプトの受け入れに難色を示す顧客もいるという。メルセデスはディーラーに対し、潜在的顧客と運転の習慣について会話をするよう促している。

http://jp.wsj.com/Business-Companies/Autos/node_133614/?tid=ecar