忙中閑話　③

　急遽、函館に行ってまいりました。

　函館は長男の勤務地で、この度初めての転勤が決まったのです。長男は大学を卒業後、政府系金融機関に就職しました。そしてこの夏、「東日本のどこか。」に転勤することになったのです。

　「北海道の次は東北かな。新潟も在り得るな。北関東も、しかしいきなり東京近郊はないだろう。」などと話していたのですが、転勤先は「青森」でした。その昔、北海道では津軽海峡を「しょっぱい川」と呼んでいました。つまり「しょっぱい川」の向こう岸だったのです。

　函館と青森の人口は、ほぼ同じです。しかし、青森は県庁所在地であるため、支店の規模は青森の方が大きいそうです。私はかねてから「北海道分県」を支持していて、函館は「函館県」として独立したほうが良いと考えています。「道南」「道央」「日胆」「十勝」「根釧」「オホーツク」「道北」はそれぞれ別の文化を持っていて、一まとめにすべきではありません。

　現在、函館市長は大泉潤氏であり、俳優・大泉洋氏の兄です。大泉市長が取り組んでいるのが新幹線の函館駅乗り入れです。北海道新幹線には「函館北斗駅」があるのですが、実は、ここは函館市ではなく、北斗市なのです。函館市内に乗り入れるには、さらに「はこだてライナー」に乗り換えしなければなりません。

　これに対して、大泉市長は函館駅まで乗り替えなしで新幹線を繋ごうとしているのです。つまり「函館北斗駅」で本州行と函館行に分離するわけです。そのためには「函館駅」と「函館北斗駅」をフル規格の鉄路で結ぶ必要があるのですが、実はこれは比較的簡単にできるのです。

　例えば「札幌」から7両編成で出発した場合、前4両を本州行き、後3両を函館行きとして「函館北斗駅」で分離するわけです。「東京発札幌行」の場合も「函館北斗駅」で分離するのですが、この時、後3両は函館方面にスイッチバックする必要があります。

　道南地方は全体として衰退しています。この地域の中核都市である函館も人口減少に苦しんでいて、大泉市長がこれを地域再建の起爆剤にしたいと考えるのは当然です。

　また予想通り、慢性的に赤字体質のJR北海道はこの構想に反対です。この会社は経営の縮小に熱心で、新規事業など応じるはずもありません。本来、鉄道には公的役割もあるはずなのですが、民営化を賛美する中で、すべて忘れ去られています。

　残念なのは「北海道庁」で、全く否定的です。北海道内は道南に限らず、札幌圏を除く全域が衰退しています。これを北海道はどうするつもりなのでしょうか。やる気のある若い市長を応援しないなんて信じられませんね。だから各地域は北海道から独立すべきなのです。

　長男は５年の勤務のうちに「函館愛」に目覚めたようで、「本当に良い町だ。」と言っていました。だからこそ「このままではいけない。」と感じたようです。大泉市長には是非、函館独立宣言をぶち上げていただきたいものですね。

　さて、妻は直前に大きな手術をしていて、さすがに今回は函館には行かないつもりでした。ところが、手術の傷が癒えてくると、息子に対する愛情が抑えきれなくなった模様で、突然「函館に行く。」と言い出しました。

　「行っても迷惑をかけるだけだ。」と言ったのですが、「どうしても行きたい。」というので、夫婦で出かけることにしたのです。宿はもうとれないので息子のアパートに泊めてもらいました。　何の足しになったのかは分かりませんが、息子は喜んでくれたようです。

　「青森に行ってもがんばれよ。立派な金融マンとなり、地域の人々に貢献するように。それが今日まで育ててくれた日本と故郷にたいする恩返しである。」

忙中閑話 ③

忙中閑話　③