年に一度のこととはいえ。
沢山届くメールも、SNSに届くメッセージも、直接祝ってくれる声も。
どれもありがたいとは思うのだけど。
「…この野郎。まずはおめでとうの一言もないのかよ」
届いたメッセージは
「今日行く」
の一言だけだ。
ある意味らしいのか。
リビングのソファーに転がって目を閉じる。
相手がきたところで勝手に入ってくるだろう。
鍵が開く金属音、ひたひたと近寄ってくる足音。
「寝てる?」
「寝てる」
ははっと笑う声が耳に届いて、額にひやりとした固い感触。
目を開けると人好きのする顔で笑っているジョンスがいる。
「…なんだ、これは」
「えー?誕生日プレゼント」
額に置かれたのは缶ビール。
「それ、倒さずに起きれたらヒチョルが欲しいものなんでもやるよ」
「言ったな」
「言った、言った。頑張れ」
触れるだけのキスを寄越してクスクスと笑う。
「クソ可愛い事やってんじゃねーぞ」
「…なんだ、それ」
って…これ絶対無理な奴だろ?
とりあえず頑張れと言われたから頑張ってはみるけれど。
「…っ痛ぇっ!」
転げ落ちた缶が手の上にクリティカルヒットした。
「残念だったな。仕方ないから俺の手料理で我慢しとけ」
赤いエコバッグを掲げてそんなことを言ってのける。
「何作るんだよ」
「んーお祝いっぽいの?ヒチョル誕生日だし。デリバリーの方がいいかと思ったけど一応頑張るよ。あ。ケーキ買ってきた」
「なんの嫌がらせだ」
「大丈夫だよ。俺が食べるし」
持参したらしいエプロンをしつつジョンスがキッチンに向かう。
「風呂でも入ってきたら?」
「食事か風呂かって…お前、それってさぁ…」
いや、そもそもここは俺の家だぞ。
呆れて出た溜息にジョンスは相変わらず綺麗に笑う。
「それとも?…まぁヒチョルがお望みだっていうならいいけど、ご飯食べて、お風呂入った後だね」
「やっぱりクソ可愛いなお前」
「またそれか。で。どうするんだよ」
「一緒に風呂のオプションつけとけ」
「んー仕方ないなぁ」
セリフとは反対に楽しそうにボウルに水を注いでいる。
相変わらずなジョンスに相変わらずな俺は、そんなとこに今日も平和だななんて考えて。
今年もいい誕生日だなとテレビのリモコンを手に取った。