【WK】
自分が女性だったらメンバーの誰と結婚しますか?
そんな質問は数え切れないくらい受けてきたし、その時その時で適当に答えを出してきた。
朝起きたら女性になってたら何をしますか?
なんて、やっぱり何度も聞かれた質問にもその時その時で適当に答えてきた。
まぁ、正直言うとそんな事になっていたら全身鏡で観察するだろうな、とは思いつつも。
だけど、実際なってみたらそんな気にもならない。
いや、少し落ち着いたらそういう気にもなるのだろうか。
あれは、自分か男であるがゆえのロマンだ。
多様性とかそういう問題ではないアイデンティティの問題である。
誰かに相談しようかと思ったけれど、こういう時に思いつく人物が全て、なんと言うか…。
あてにできない。
まずはこの自分の状態を見せない限り説明したところで理解はしてもらえないだろうから、チャンミン辺りに電話をかけたところで信じてもらえないだろう。
メンバーなぁ。
リーダーとウニョクは自分よりパニックになりそうだし。
ヒチョルは変人な振りをしている常識人だと思っているから、とりあえずは原因追求とか始めそうだ。
それはそれで解決の糸口ご掴めそうだけれど。
イェソンにはまたふざけてんのかと怒鳴られそうだし、シンドンはこれまた冗談で済ませられそうな気がする。
ドンヘ。男気は有るんだけどこんな時に全然役に立たなさそうだ。
リョウク…着せ替え人形にさせられるな。
残る1人。
この人はヒチョルと逆で常識人で紳士。ではあるけれどかなりの変人だと自分は思っている。
どうしたものかと考えていると、その残る1人からの着信。
「はい。今着いたの?」
「そう。荷物置いたところ。キュヒョンは夕食摂った?」
「まだ。それどころじゃない」
「なに?調子でも悪い?」
「…とりあえず来てもらっていい?」
通話を切ってしばらくするとノックの音。
ドアを少し開けて顔だけ出すと微笑むシウォンに安心したような気持ちと、ここからの不安との真逆の感情に苛立った。
シウォンを中に入れてドアを閉めると同時に柔らかく抱きしめられる。
ん?とシウォンが身体を離すと首を傾げた。
だよねぇ、とキュヒョンは溜息を吐く。
「よく分からないんだけど、こういうことになってるんだよね」
と、手を広げた。
その後ひとしきり体調や身体に痛い場所は無いか訊ねられて、いきなり試練だのなんだのとブツブツ呟いて祈りを捧げ始めてかれこれ30分。
やっぱり一番常識人に見えて、ちょっとおかしいんだよなこの人。
キュヒョンはその姿を見て思う。
もしかしたらこの状況は自分で良かったと思うべきなのだろうか。
この人がこうなってたら出家でもしかねない。
大きく息を吐いたシウォンが落ち着いたのか、やっとキュヒョンに向き直る。
「で。なんでこんなことになってるの?」
「よかった、現実世界に戻ってきてくれて」
「…普通にこの目で見ても信じがたいんだけど」
「いや、まぁ、ねぇ」
真剣に何かを考える様子のシウォンが、これまた真剣な顔で宣った。
「あ。でもこれなら結婚するのに問題ないか。キュヒョナ結婚しよう」
やっぱりおかしいわ、この人。
「嫌だ。戸籍も何もかも男なんで無理」
ふむ。と何かに納得したシウォンがスマホを弄り始める。
なんだか分からないがろくでもない事をしている気がしてならない。
覗き込んだら案の定とんでもない事をSNSに投稿しようとしていた。
【キュヒョナにプロポーズしたら断わられた。そういうところも好きだけど】
「消せ!! 今すぐに!!」
「えー…じゃあコンサートの時ソロで光化門で歌っていい?」
「ダメ!!絶対!!」
ケタケタと笑いながらまたスマホをを弄るシウォン。
【キュヒョンに光化門で歌っていいかって聞いたら、嫌って言われた。そういうところも好き】
まぁ、こっちは目を瞑ってやろう。
事実だし。
まだ笑っているシウォンの背中を叩く。
「痛っ」
「ちょっと!本気で考えろよっ!」
「うん。いつものキュヒョナだ」
なんて柔らかく微笑まれて。
「…そんな変な顔してた?」
「不安なのは仕方ないよな。考えたところで全く理解できない事態だし。理由が判れば対処のしようもあるんだろうけど」
「…戻れるよね」
「もちろん俺に出来る事は全力を尽くすよ?キュヒョナはキュヒョナじゃないとね」
やっぱりこういうとこ好きなんだよなぁ。
なんてちょっと見惚れていたらシウォンがスマホを開いた。
「…ヒチョリヒョンから意味深なメッセージが届いたんだけど」
向けられた画面には
【体調に変わったところがあった奴と、それを知ってる奴は集合】
と部屋番号が書かれている。
「まさか?」
「ヒチョルヒョンは知ってるってことだよ。で、多分同じ状態の人が身近に居るってこと」
「ヒチョルヒョンかトゥギヒョンってところかな」
「多分ね」
まだ、確信ではないけれど。
もしこの状態であることを指しているのなら自分だけじゃないかもしれないと少しだけ心強く思えた。
「どのみち行くしかないか」
「だよね」
大きなため息を吐き出すとシウォンが肩を叩いた。
「俺はずっとキュヒョナの傍にいるから」
「なんか、心強い気がする」
「え?気がするだけなの?断言じゃないのかよ」
呆れたように笑うけどきっとちゃんと伝わっている。
あなたが居てくれるのが一番心強いって。