徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説 -193ページ目

徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

SJウォンキュ妄想垂れ流し小説ブログです。 
とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

頼んでいた時間までに車を滑り込ませると、キュヒョンは首を傾げた。
 
「また、ドレスコードが必要な食事ですか?」
「ちがうよ。でも負けないくらい美味しいのは保証する」
 
ドアを開けて進むとテーブルの上には綺麗にカトラリーが並べられていた。
一流ホテルのロゴはもちろんついていない。
我が家のもの。
 
「時間はぴったりだよ」
「さすがですね、社長」
 
キッチンからひょっこりと顏を出したリョウクの顔を見てキュヒョンが驚いた。
 
「久しぶり、キュヒョナ!」
「リョウガ!ってことは今日の夕食の予約って…」
「僕が腕によりをかけて作りましたー」
        
ははっと声を出して笑ったキュヒョンはリョウクをぎゅっと抱きしめる。
 
「楽しみだー」
「はいはい、座って。社長怒っちゃうよー」
「怒らないよ」
 
なんというか、そこは兄弟というか親子というかそんな雰囲気しかないので許せる。
高級レストランではきっと出てこないであろうメニューだけれど、彩りも栄養も考えられた、味は抜群の料理を食べ終わると、片づけを始めるリョウクを手伝うと言い出した。
 
「あのね。これは僕の仕事だから。お給金貰ってるんだよ?キュヒョナが手伝っちゃ意味ないでしょ」
 
まるで母親が子供に言い含めるようにそう言っているのが聞こえて思わず笑ってしまう。
 
「だって、聞きたいっていうか、教えてもらいたいことがあるんだよ。いいよね、シウォンさん」
「どうぞ。二人の方が早く片付くだろ?給料減らしたりしないからキュヒョナの相手してあげて」
「何ですか、それ」
 
苦笑いしつつもキッチンに入っていく二人の背中を見て、コーヒーサーバーから注いだコーヒーをソファに座って飲む。
同じリビングでも誰かが居るのと居ないのでは雰囲気は随分と変わる。
暖かい空気は温度のせいだけじゃない。
何を話しているのかは分からないけど二人の声や、食器の音、どれも一人の時にはないものだ。
半時間ほどたった頃片づけを終えたらしいリョウクが挨拶をして帰り支度を始めると、やはりキュヒョンも玄関に向かう。
これは例のアレが発症したか。
 
「失礼します。また明後日よろしくお願いします」
「こちらこそ。で、キュヒョナ?」
「あ。リョウガ送ってきます」
 
やっぱりな。
 
「だからさぁ、僕一人でも平気だって…」
「…キュヒョナの場合コンビニ行きたいだけだと思うよ」
「…その通りです」
 
俺たちのやり取りにリョウクは小さく笑うと、じゃあ送ってもらうことにします、とキュヒョンとドアを開ける。
今度は静かで、とりあえず見るともなくテレビをつけて画面を見つめる。
最初にキュヒョンとここで食事をした時には彼がこんなにも大切な存在になるなんて想像もしなかったなと最初に出会った時の事を思い出した。
今思い出しても不思議な出会いだとは思うけど、それが全部奇跡だとも思える。
開かなかった箱はパンドラの箱でもなく、中にあった希望は小さな星で。
その小さな星は失くした記憶の塊だった。
カタリと小さな音に意識がそちらに向く。
手にビニールを掲げてキュヒョンが微笑んでいる。
やっぱり奇跡だ。
 
「食後のデザートです。前に食べ損ねたの思い出しました」
「じゃあ、コーヒーでも淹れようか」
「お願いします」
 
コーヒーを淹れたカップをキュヒョンの前に置くと、自分の前にロールケーキが乗った皿が置かれた。
 
「いただきます」
「僕もいただきます」
 
うん。確かに。
ヒョクチェが太鼓判を押すだけあってなかなかの味だ。
 
「キュヒョナ、明日はどこか行ってみたいところとかないの?」
「…今日、付き合ってもらったし。シウォンさんこそ行きたいところとかないんですか?仕事忙しいのに休みの度に僕に合わせてたら疲れますよ?」
「キュヒョナに会えない方がしんどいけど?」
「また、そういうことを…」
 
視線を伏せるようにしてコーヒーに口を付ける。
その様子もが照れているのだということももう知っている。
こちらとしては真実なのでするりと出る言葉でもキュヒョンにとっては何故か恥ずかしいようだ。
 
「何もしないのもありだと思いますけど」
「のんびり過ごす?」
「…です、ね」
 
こういう時に少しだけぎこちない空気が流れるのも最近は常で。
ここから先に進むにはお互いが戸惑ったままだ。
お互いに好きだと伝えてからはそれなりの時間が過ぎたけど、その間に会える時間はまだまだ足りていない気がする。
暫くは二人でテレビで流れている映画を見て、それが終わるとそろそろ寝ようかとリビングを出る。
シャワーを浴びてリビングに戻るとキュヒョンが何か小さな紙切れに書き込んでいた。
今日図書館で見ていたものを整理でもしているのだろうか。
 
「まだ、寝ないの?」
「あ。シウォンさんにコレを渡すの忘れてました」
 
最後に寄った書店の袋。
 
「何?」
「今日付き合ってもらったお礼です。気に入ってもらえるかは分からないけど」
「お礼って…こっちも十分楽しんだけど」
「じゃあ…プレゼントしたかったからってことで」
 
ふふっと笑ったキュヒョンの笑顔で十分だ。
 
「…ありがとう」
「いえ。…じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
 
荷物を抱えてもうすっかりキュヒョンのものだといってもいい客室に向かったのを確認して、袋の中から本を取り出す。
風景と星の綺麗な表紙の写真集だ。
彼らしいプレゼントに口元が緩んだ。
よく見ると一枚淡いブルーの付箋が覗いている。
そのページを開くとススキが月明かりに照らされた草原に空から降り注ぐ流星の写真。
ふわりと風が吹いた気がした。
揺れるススキの穂が自分の背と変わらない中を声を上げて笑いながら走った。
後ろをついてくる小さな彼が愛しくて、手を引いて走る。
月明かりだけしかないはずの草原の中。
車のルームランプと淡いランタンの明かりに向かって。
光の場所で手を広げたその人の腕の中に飛び込むと笑って抱き締められた。
あれは…
 
「父さん…母さん…」
 
この写真は失くした風景だ。
あの愛しい手は彼だ。
時間とか、そんなものはどうでもよくなった。
失くした風景の中に居た彼は。
これから先自分が見る風景の中に必ず存在してほしいのだから。
広くもない家の中を全力で走る。
客室のドアを叩くと、驚いた顔でドアを開けたキュヒョンを抱きしめた。
 
「シウォンさん?」
「…好きだよ、キュヒョナ」
「なんで、泣いてるんですか?」
「あの、写真」
「…僕たちが子供の頃、両親が天体観測に行ってた場所に似てるんです。シウォンさんは覚えてないだろうけど。思い出して欲しい訳じゃなくて…知って欲しかっただけで」
「知ってる。忘れてたけど知ってる景色だ。俺は…愛されてたって思い出した」
「…僕もその一人ですよ」
 
少し体を離したキュヒョンが慈しむようにキスをくれた。