【ウォンキュ】単純明快で摩訶不思議 5 | 徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

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SJウォンキュ妄想垂れ流し小説ブログです。 
とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

制作室のドアは基本開け放たれているので必要はないと思われるのだがシウォンは律儀にノックして中を伺う。

 

「キュヒョンさんおはよう」

「おはようございます」

 

まだ霞がかかったような脳内にはシウォンの爽やかな笑顔は眩しいくらいだ。

思わず目を細めると眩しさが少しマシになった気がした。

 

「今日は一日こっちに居る?」

「はぁ。特に社長の無茶ぶりがなければ」

 

今回のシナリオに関してなかなかにタイトにスケジュールが組まれている。

他のライターはどうか分からないが筆が乗るか乗らないか判断できかねるキュヒョンとしては基本の軸の部分はなるべく早く仕上げたい。

家でやるより書くこと以外は特に気を散らす要素がない社内での仕事の方が早いと判断したため、暫くは在宅の予定にしていなかった。

 

「よかったら仕事終わりに飲みにいかない?」

「仕事終わりにお仕事ですか?」

 

不思議そうな表情をしたシウォンが少し考えてまた笑う。

眩しい。

 

「あぁ。仕事として誘ってるわけじゃないよ。この前お茶に行ったとき楽しかったから、また話したいなと思って」

 

社長に無茶振りされてお付き合いすることになったという「お仕事」を瞬時に理解してくれたらしいシウォンに柔軟性のある人だなと嬉しくなった。

 

「僕は大丈夫ですけど、シウォンさんの方こそ大丈夫ですか」

「うん。っていうかね。また暫く詰め込まれそうだから今のうち。何か食べたい物とかある?」

「僕は美味しくビールさえ飲めればいいです」

「暑くなってきたし、いいね。それなら行きたいところがあるんだ。付き合ってくれる?」

「喜んで」

 

先日のランチで悟った。

多分この人のセンスは間違いない。

ちゃんと相手に合わせたうえで自分の知ってる場所で最善の場所をチョイスしているんだろう。

これでモテないとか絶対あり得ない。

 

「じゃあ、またあとで」

 

朝から爽やか王子様とか、絶対モテない訳がない。

 

「なんであの人今まで社内での話題に上がって来なかったんだろ」

 

ぽつりと零れた一言を、今まで何の興味もないようにキーボードを叩いていたジョンウンが拾い上げた。

 

「みんな籠って仕事してるから気づかないんじゃね?」

「それだ」

 

専門的な事を黙々とやってる場所が多いのは確かだ。

納得。

しかもあの人、くまたろうになるし。

 

「あれはモテるな」

「だよねぇ」

「お前、爪の垢でも貰ってくれば?」

「貰ったらジョンウニヒョンのコーヒーの中に入れてあげます」

 

顔を顰めたジョンウンがデスクに置かれていた小さなマスコットを投げつけてくる。

フェルトでてきたそれは亀の形をしていて甲羅がメロンパンになっていた。

 

「またえらく可愛らしいものを」

「返せっ!」

「投げつけてきたのはあなたでしょうが」

 

彼のデスクの上に亀を下ろすと、ジョンウンは自分の視界に入る位置にそれを置いてぽふぽふと整える。

 

「…買ったんですか?」

「貰ったんだよ。悪いか」

「悪くはないですけど。ファンタジーな物持ってたのは意外で」

「…甥っ子がくれたんだよ」

「なるほど」

 

キュヒョンにも甥が居る。

あの可愛い存在にプレゼントされたなら大切にする理由は分る。

近くのカフェで買ってきたココアを一口飲んでパソコンを立ち上げながら仕事終わりの美味しいビールのために頑張ろうと気合を入れた。

 

 

 

就業時間後、キュヒョンはプログラミングチームの部屋に足を向けた。

先日見た時に空席だった場所に見かけたことのない人物が居るのに気づいて新しい人を入れてもらえたんだなと少し安心する。

シウォンがあそこまで野生に近い熊になることが少しでも回避できるのならいい事だ。

キーボードを叩いていた眼鏡の女性が顔を上げる。

キュヒョンとほぼ同じ時期に入社したスルギは悪戯を仕掛ける子供みたいにずれた眼鏡と口角を上げた。

 

「シウォン先輩。彼氏来てますよ」

 

新しく入ったと思われる人物が振り返ってこちらを見る。

本物ではないんですけど。

 

「あー。ちょっと待って! あと3分」

「急がなくても大丈夫ですよ。あとスルギ。新しい人に誤解されそうな発言よせ」

「えー。もう面倒だからいいじゃないですか。別に誤解でもないし」

「面倒って…」

「私は二人を応援派なのでー」

「…なんだよ、応援派って…」

「言葉通りです」

 

薄くなった氷の溶け切ったコーヒーをストローで吸い上げて、マウスを動かしたスルギが身体を伸ばす。

 

「大体二人のファンは早く仕事終わって欲しい派かな。仕事終わってもイチャイチャしててほしい応援派は今回のプロジェクトのチームに圧倒的に多いです」

「…ちょっと待て。初耳。俺のファンって何。誰」

「私の口からは言えませんが、いますよキュヒョンさんのファン。まぁ、今のところ圧倒的にシウォン先輩の方が多いですけど」

 

それは厳しい現実をありがとう。

思わず遠い目になりそうだったのを引き戻してくれたのはシウォンの声だった。

 

「お待たせ。じゃあ行こうか」

 

ドアを指すシウォンに頷いて背中に付いて行くと、そのキュヒョンの背中にスルギの声が付いてきた。

 

「デート楽しんで来てくださいねぇ!」

 

脱力して膝が崩れかけたキュヒョンをシウォンの笑い声が掬い上げてくれる。

この人の声に助けられてるなさっきから、と妙なところに感心しながら片手を挙げて「お疲れー」と間延びした挨拶だけは残してきた。