親友に予告していた打ち上げの日までに解決してしまったこちらの恋愛問題の結果は報告した。
キュヒョンは事の顛末を聞いて呆れたような、ほっとしたような声でよかったなと笑ってくれた。
その後、キュヒョンはキュヒョンでうまくいったらしく、慰め会用の酒は祝杯に変わることとなったのだ。
「チャンミン、これも持って行っていいのか?」
「あ、お願いします」
普段は一人でしか使わないからさほど大きくない4人用のダイニングテーブルにご機嫌に鼻歌を披露しながらグラスを運ぶユノ。
こっちはこっちでチャンミンとキュヒョンの大事件を聞いて爆笑し、是非会ってみたいと言われたためキュヒョンに承諾を取ったものの「それならもういっそ四人で飲んじゃえばいいんじゃない?」という結論に辿り着いたのだ。
ユノが気に入っているという店で買ってきてくれたものを皿に盛りつけていると、その手元を興味深そうに覗き込まれて苦笑いする。
「そのままでいいのにとか思ってます?」
「ううん。丁寧でいいなって思ってるよ。それにチャンミン彩りも綺麗にしてくれてるし」
「ちょっと野菜とか添えてるだけですけどね」
「それが手間だし、俺そういうのセンスないから純粋に凄いと思うし。チャンミンっぽくて好きだよ?」
「それ!やめてくださいよ、本当に」
「また、それかよ。いいじゃんチャンミンなんだから」
来客を知らせるチャイムが鳴って、モニターを確認するとキュヒョンが紙袋を掲げる様にして映っていた。
「今開ける」
そう言うと、ユノが盛り付けの終わった皿をテーブルに運んでくれる。
ドアを開けるとキュヒョンとその後ろにパートナーが立っていた。
「初めまして。キュヒョナから話はい聞いてましたが…本物だ」
ユノと初めての顔合わせの時にも同じような事を言われたな、と思い出してこそばゆい気持ちになっていると、チャンミンの後ろから様子を窺いに来たユノが首を捻る。
「んー…?シウォナ?」
「え…?ユノ先輩?」
「やっぱり。シウォナだ。雰囲気変わっててびっくりした」
「…僕もびっくりなんですが…まさかユノ先輩が居るなんて」
チャンミンもだが、それ以上に全く状況を把握できない顔をしたキュヒョンがシウォンの袖を引っ張る。
「知り合い、なの?」
ユノがキュヒョンを見てにっこりと微笑むと答えた。
「昔、事務所に居たんだよシウォナ」
「ユノ先輩無駄に笑いかけたりしないでください。ほら、キュヒョナ固まっちゃったじゃないですか」
「無駄ってなんだよー」
あははとユノは笑うが、シウォンの言葉に他の2人が納得していることに全く気付いていない。
「それより…どういう事だよ。事務所って何!?」
「あー…昔、一瞬だけモデルの仕事してた事が…」
「聞いてませんけど!?」
「別に隠してた訳でもないんだけど」
キュヒョンに詰め寄られて困った様子のシウォンが気の毒で助け舟を出したのはチャンミンだ。
「とりあえず入って飲まない?」
チャンミンとキュヒョンの酒とシウォンが持ってきてくれた酒と菓子。
そしてユノが持ってきたデリで腹を満たした後。
キュヒョンとユノがスマホの画面をのぞき込んで大騒ぎしていた。
二人が見ているのはシウォンがモデルだった頃の画像だ。
活動していた期間が短かったとはいえ、検索をかければそれなりの数の画像がでてくる。
「うーわ。何これ、かっこいい」
「今のシウォナは大人になったよな」
「大人っつーか…おっさんですね」
むっと口を尖らせてそんなことを言うキュヒョンに苦笑いしながらシウォンはグラスに口を付ける。
「シウォンさん、アレのどこがよかったんですか」
「最初は声かな。柔らかいのに厳しい発言するもんだからギャップが面白くて。でもそのうち全部可愛いなって思っちゃって…素直なのに素直じゃないって言うか…今だって唇尖らせてるの本気で言ってる時じゃないし」
「あぁ。なんか…わかります」
「キュヒョナはダメだよ」
「大丈夫です。キュヒョナをそういう意味で可愛いと思ってないんで」
そう?と笑うシウォンは確かにその辺りのモデルより男前だ。
「シウォンさんなんでモデル辞めたのー?」
ソファーに沈みながらこちらに問いかけるキュヒョンにシウォンが微笑む。
「キュヒョンに出会うため、かな」
なんだ、この人。
そんなくさいセリフ今時ドラマの中でもないぞ。
しかもこんなにくさいセリフなのに嫌味じゃないってある意味才能。
そう言えばキュヒョンが「紳士」だとかなんとか言ってたことがあったっけ。
思わず目の前の男前に拍手を送りたくなった。
絶句してるキュヒョンの隣でユノが爆笑している。
「でも、本当になんで?社長嘆いてたぞ?」
「んー…最初は経験したことのない世界で楽しかったんですけど、回りの人達にはこの仕事をやりたいって情熱があるのに僕になかったからですかね?」
「じゃあ今は楽しい?」
「楽しいですよ」
「それならいいや」
「ユノさん、シウォンさんと仲良かったんですか?」
「あの頃うちの事務所所属してたのがまだ少なかったからさぁ」
何かを探してまたスマホに落としたユノの視線を追うキュヒョン。
チャンミンが手にしていたグラスにシウォンがワインを注いでくれる。
頬杖をついてソファーの方に視線を向けたシウォンが眉を下げて、溜息を吐いた。
「俺達これから苦労しそうだよね」
相変わらず画面をのぞき込んではしゃいでいる二人はそれはそれは楽しそうだけど。
可愛い恋人を持つとそれはそれは気苦労が多そうだ。
けれどチャンミンに同調してくれそうな友達が出来たことは間違いないらしい。
「これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ」
二人がグラスを合わせると、ユノとキュヒョンが同じように首を傾げる。
「いつの間に仲良し?」
「本当だ」
それを見たシウォンは両手で顔を覆う。
「…可愛い…。なんだか可愛い小動物が首を傾げてるように見えるのは俺が酔ってるからか?」
「大丈夫ですよ。シウォンさん。俺にもそう見えるし、まだ酔ってないはずです」
「よし。飲もう」
「ですよね。これあとちょっとだけなんで空けましょう」
やっぱり、この人とはすっごく仲良くなれそうだ。
祝杯に変わった酒はやっぱり値段価値ちがある程美味かった。