【ウォンキュ】supple 4 (D-570) | 徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

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とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

バイトが終わってストリートで歌う。
それなりにファンもついた。
自費制作でCDも作ったし、なんとか売れてはいる。
 
「よかったら、これ出てみたら?」
 
最近よく見に来てくれるようになったサラリーマン風の男性が一枚のフライヤーを手渡してくれる。
 
「いい曲歌うのにストリートで歌ってるだけじゃもったいないよ。ここが最終のつもりじゃないんだったらだけど?」
 
レコード会社主催のコンテスト。
バンド、デュオ、ソロどんなジャンルも厭わないというコンテストらしい。
この手のコンテストには何回か出てみたことはあるが成績としてはなかなか苦戦している。
どうしてもバンドが強いのだ。
もちろんアコースティックデュオでもストリートから売れて有名になったユニットだっているけれど、それは極稀な存在だ。
テレビの音楽番組や、大きな会場でライブをできるのは一握り。
音楽をやっている世の中の大半のミュージシャンは地味に活動している者が多い。
隣から覗き込んだキュヒョンが「わー」っと感嘆の声を上げた。
 
「ありがとうございます。出る時は応援してくださいねー」
 
にっこりと微笑むと、相手は照れたように頬を掻いた。
 
「いや、余計なお世話だったらゴメン」
「とんでもない。嬉しいです」
 
またキュヒョンのファンが増えたな。
こういう時の対応や人当りに関してはキュヒョンは神懸かり的だ。
一度会った人の顔を覚える記憶力もいいから「このまえも来てくれてたよね」なんて言われて微笑まれると一発で落ちる。
それと対照的に自分はどうしても苦手意識が働いてしまうのだ。
人と話すのは嫌いなわけじゃない。
けれど嫌いなのと苦手なのは別だ。
それでもこういう活動をする上では必要不可欠な要素でもある。
深夜近くのファストフード店でぐったりしているとキュヒョンがテーブルの上にコーヒーの入った紙コップを置いた。
 
「大丈夫?シウォナ。コーヒー買ってきたよ」
「んー。サンキュ」
「シウォナのファンには見せられない光景だよねぇ」
 
いやいや、別に有名人で隔離されてるわけじゃないからちょっと離れた席に普通に座ってたりするけどな。
バイト先に顔見せに来たりもするし。
喜ぶのは店長だけだ。
貰ったフライヤーを見ていたキュヒョンは暖かいミルクティーを一口飲んで、それを指ではじいた。
 
「シウォナ、これ出てみない?」
「うん?いいけど…遠くない?」
 
近場でもこの手のコンテストは行われることがある。
それを待つのもありだとは思う。
 
「そうなんだけど…ほら。珍しくエントリーの部門が別れてるんだよ」
よくよく見てみると確かに、ジャンルは厭わないけれど全てを一括で審査するわけではないらしくバンド部門とユニット、ソロに分けて審査するらしい。
「あー…ほんとだ。確率は上がるか」
「うん。バイト休めるかなぁ」
「それはなんとかなるだろ」
 
スマホの画面で開催地までの交通手段と交通費、宿泊費の検索をかけて目の前の相手に見せると楽しそうに笑った。
 
「結構いくなー」
「そういうこと」
「レンタカー借りるとかは?交代で運転してさ。それなら宿泊費もかからないよ」
 
確かにそうだけど。
 
「…エントリーするか?」
「してみようよ」
 
キュヒョンが笑う。
それだけで勝てる気がするから困ったものだ。
それから半年後。
 
 
 
「眠い…」
「そこなのかよ!?」
 
ハンドルに突っ伏したままでの一言にすかさず突っ込みを入れてしまった。
だって落ち込んでるのかと思ったのだ。
ストリートを始めた頃にはなかなか足を止めてくれる人もいなかった。
そんな時、キュヒョンはいつだってネガティブになる。
今でこそ、その神経もどんどん太くなって多少の事では動じなくなっては居たけれど。
それでもやっぱり長距離を何とかやってきて、客席もいい感じで盛り上がって、そこそこの手ごたえはあったのに優勝は逃してしまった。
そうそう、簡単にはいかないだろうけど。
 
「なに?へこんでると思ってた?」
「うん」
「まぁ、多少は。でも、優勝した子すごいよかったし」
 
ギター一本で歌うことが楽しくて仕方ないというオーラを出して歌っていた女の子。
特徴的な声も耳触りが良くて、曲もよかった。
優勝も納得だ。
 
「キュヒョナもよかったよ」
「ありがと。…ってなんだ、それ」
 
くくっ、と笑ったキュヒョンがシートに体を預けて深く呼吸をする。
 
「眠い」
「それなら、俺が運転するから寝てれば?」
「うん」
 
時間的には余裕があるから、無理しなくても済みそうだし。
それならと運転席と入れ替わろうと車を降りると一人の女性がこちらを指差して叫んだ。
 
「やっと見つけた!よかったわ、まだ帰ってなくて」
 
ヒールのある靴で走れるのだから女性は凄い。
 
「あなたたちのファンの子が今日は車で来てるって教えてくれて…あと、多分反省会してるとかなんとか…とりあえずまだ近くには居るはずだって」
 
今日のコンテストには普段来てくれるファンの子達の顔もチラホラ見えていたけれど、どう見たってこの人ははじめましてな気がする。
キュヒョンもポカンとした表情で何事かとこちらに視線を投げてきた。
いや、いや、知ってる人じゃないから。
 
「はじめまして。私こういうものです」
 
差し出された名刺には聞いたことのない社名。
しかしながら肩書は代表取締役となっている。
まだ若そうだけど、社長らしい。
 
「え、と…?」
「あ!そうよね!弱小事務所だから知らないわよね。芸能事務所やってます。今日あなたたちのステージを拝見して曲も歌詞も独特な雰囲気があって新しいのに、どこか懐かしくて、すごくいいなと思って。よかったらうちに来ない?できる限りのサポートはしますから!」
 
これは、いわゆる…。
 
「スカウト?」
「世間一般ではそう言うわね」
「え?冗談じゃなくて?」
「冗談でそんなことできる余裕はないわよ、うちの事務所」
 
名刺とにこやかな女性の表情を見比べているといきなり首にとんでもない衝撃が訪れた
 
「げっ!」
「すっげー!スカウトだってさ、シウォナ」
「わかった!わかったからいきなり背後から飛びかかるのやめろよ!死ぬかと思った!」
「夢じゃない証拠だよ」
 
俺の手からすっと名刺を取り上げてキュヒョンはしげしげと眺める。
 
「何事も早いに越したことはないけど、ゆっくり考えてくれればいいから」
 
両手で名刺を掲げてキュヒョンはキラキラした目で見つめたまま。
 
「でも、こういうの初めてだからそれだけでも記念です。嬉しいなぁ」
 
そう言うと本人がまだいるにも拘わらず、その名刺にキスをした。
その様子を見ていた女性がこちらに顔を向けると真剣な表情で聞いてきた。
 
「ねぇ、これ、素なの?」
「作ってませんよ」
「はぁ…今どきこんな子いるのね」
 
ええ、困ったことに。
こういう可愛いことを平気でしでかす男が隣にいるんです。
しかも実は恋人なんですけども。
はぁぁ、大きく溜息を吐いた俺に微笑んで彼女はもう一枚名刺を差し出した。
 
「こっちはあなたに。もうあれは彼のものでしょう?」
「ですね…。ありがとうございます」
 
丁寧に受け取った名刺を仕舞って、後日連絡をするということに話は落ち着いた。
歩き出した背中を見送りながら、キュヒョンがまた名刺を眺めてキスをしようとしたからつい。
その裏側にキスをした。
要するに。
名刺を間にキスをする状態。
その瞬間、くるりと振り返った女性は目を大きく見張って、次の瞬間ニッと笑う。
 
「やっぱりあなた達欲しいわぁ。音楽も容姿ももちろんだけど一部の女子に絶大な人気がでそうだし」
 
という、謎の言葉を残して去っていったのだ