【ウォンキュ】失われた風景 33 | 徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

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SJウォンキュ妄想垂れ流し小説ブログです。 
とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

図書館なんて学生時代に何度か利用しただけだ。
変わらない建物はノスタルジックな気もする。
けれどエントランスを抜けたとたんにあまりの変貌に目を瞠った。
天井まで吹き抜けの明るい書架スペース。
有名なチェーン店のカフェが併設されており、そこに本を持ち込むことも自由になっている。
逆に一定のスペース内であればそこで購入したものを持って出ても大丈夫らしい。
ゆったりとしたソファー席、壁側に設けられた自習席。
昔と変わらない広々としたテーブルに椅子が並べられている席もある。
あの独特の静寂さはなく、かといってうるさいわけではない。
程よい小さな会話と音。
朝の喫茶店のようなあの落ち着く音だ。
 
「驚いたな」
「4.5年前にリニュアルしたんですよ。向こうでも図書館には行ってみたんですけど蔵書数が桁違いです」
 
水を得た魚のようにキュヒョンはテーブルの一角を陣取ると、迷う様子もない足取りで奥の書架に向かっていた。
何か面白いものでもあるだろうかとゆったりと図書館の中を歩いてみる。
児童書の周りで絵本を手にした子供たちの表情が輝いていて思わず顔が緩んだ。
その奥にはコミック。
こんなものまで取り扱っているのか。
ライトノベルなんてものも扱っているらしい。
郷土史、言語、思想。
昔は目的のものしか閲覧しに来ていなかったのだ、きっと。
歩いているだけでも十分に楽しかった。
新刊のコーナーに好きな作家の本を見付けて手に取った。
もう、新しい本が出たのか。
ゆっくりと読む時間がないせいで最近は書店にも行っていない。
こういう時間も貴重だ。
席に戻るとすでにキュヒョンのスペースには本が山積みになっている。
児童書から普通の小説、写真集。
全て天体に関するものだ。
こんなにも天体に関する書籍があるものなのか。
一番上に載っている写真集の表紙の美しさに驚いた。
ボリビアのウユニ塩原だろう。
地平線から茜色の光。
そこからグラデーションになっている紺色の濃紺に星が瞬いて地上にその景色が再現されているような上下の合わせ鏡のような写真。
 
「綺麗だな…」
「ですよね。それ僕も好きです」
「写真集とか、たくさんあるんだなぁ」
「ええ。だから吟味できるのがありがたいんですよ。全部買ってたら破産する」
 
そう言って笑う。
星空の写真もあれば、天体望遠鏡で撮影したような星の写真集。
衛星や宇宙から撮影されたものまである。
 
「科学館のライブラリーに置いてないの?」
 
たしか小さなスペースがあった気がした。
 
「予算が知れてますから。吟味して購入品の届けを提出しないと」
 
楽しそうだ。
その表情を見てなんとなく理解した。
きっと彼は科学館に来た人達のこんな表情を見たいのだ。
だから休日にも図書館でこうして本を探してみる。
勿論自分が好きだというのが前提ではあるだろうけど。
真剣に本を捲り始める彼の様子を見て、こちらも本の表紙を捲った。
半分ほど読み進めて、ふと顔を上げると前では相変わらず楽しそうに本を捲っている姿。
身体をほぐすように伸びをすると、キュヒョンが顔を上げた。
 
「ひと休みしますか?」
「そうだな。カフェもあることだし。…そう考えると最強の場所だね、ここ」
 
クスリと笑ったキュヒョンが本を閉じる。
可愛いイラストが描かれた児童書。
 
「それは面白いの?」
「それが…」
 
キュヒョンが真剣な顔で答える。
 
「意外というと怒られそうですが、すっごく面白いです」
 
あまりにもいい顔をするものだから思わず笑うと「シウォンさんも読んでみればわかりますよー」と言われて、実際休憩して戻ってからその本を読むと予想外にはまってしまったのだけど。
 
外の陽気を見ているとアイスにしようかとも思うけれど、館内の快適な温度のお陰で暖かいコーヒーを飲める。
やっぱり暖かい方が香りが立って好きだ。
キュヒョンは甘みのあるフレーバーコーヒーを頼んで二人でゆったりとしたソファー席に座る。
 
「キュヒョナはどうしてあの科学館を選んだの?プラネタリウム施設ならこっちにもあるし…もちろん募集の関係とかもあるんだろうけど」
「そうですねぇ。でもプラネタリウムの解説員は別に学芸員の資格なんてなくても
いいんですよ。事務職でも嘱託員でも、アルバイトにだってできるんです」
「そうなの?」
「はい。プラネタリウム施設自体は学芸員を置くことが求められる【博物館法上の登録博物館】じゃないんですよ。科学館では学芸員も必要ですし、プラネタリウムの解説の他にも携われることは多いですし」
 
甘いコーヒーを一口飲んでキュヒョンが微笑む。
 
「子供の頃からよくプラネタリウムを観に行きました。一人で夜中に出かけることも出来なかったし。今はプラネタリウムの投影もデジタル投影とか多いし解説自体も録音されているものも多いんですけど、投影機を使って生で解説をしてくれるところがやっぱり好きだったし、今でも好きです。一か所僕にとっては特別な場所がありました。解説員が居て、いつでも同じ内容の解説のはずなのに、その時の客層で雰囲気が全く違う解説をするんです。それに憧れました。星に興味がある人も、そうでない人も引き込まれるような解説でした。その人が学芸員だと知って僕もそうなれたらいいなと思ったんです。…その人が今の科学館にいらっしゃるんですよね…」
 
ちょっとはにかんだように笑う。
うん、これは面白くない。
 
「ライバルがいるとは…」
「…そういうのとは違うと思いますけど?」
「違ってても、違わなくても、俺的にはそういう解釈になるんだよ」
 
キュヒョンは困惑したよう首を傾げた後、ふっと表情を緩ませた。
 
「シウォンさんって…嫉妬とかするんですね」
「いや、今までそんなにしたことない」
 
断言すると、今度はクツクツと肩を揺らして笑い始める。
 
「それは…ビックリします」
「…驚いてくれて何よりだ」
 
こっちが面白くない事がキュヒョンには楽しいらしい。
ひとしきり笑って、コーヒーを飲み終えた後。
再び本の探索を始めるキュヒョンの前で残っていたページを捲る。
彼が読み終えた児童書をそのまま読んで最後のページに満足して本を閉じると、同じように最後の一冊であろう本を閉じたキュヒョンがふっと息を吐いた。
外の眩しかった太陽の光もオレンジ色に変わり始めている。
 
「もうすぐ閉館の時間か」
「うわ、結局一日潰しちゃいましたね。…すみません」
「いや、楽しかったよ。面白い本にも出合えたし」
 
可愛いイラストを見せて言うと
 
「やっぱり、それ、楽しいですよね…シウォンさん、この後少しだけ書店に寄ってもらってもいいですか?」
「夕食は予約してあるからあまり時間はないけど大丈夫?」
「もう決まってるんで10分もいらないです。車で待っててもらえたらありがたいんですけど」
 
その言葉どうり書店で速攻で買い物を終えたキュヒョンが抱えていた本。
それがその後宝物になるとは思わなかったのだけど。