【ウォンキュ】失われた風景 28 | 徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

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とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

【鍵と星】

 

食事を済ませて、ホテルに戻る。
 
ツインルームを予約していたおかげでキュヒョンがここに来ても窮屈な思いはしなくて済みそうだった。
窓際に置かれているテーブルと椅子。
そのテーブルの上に買ってきたワインを置いて座った彼の前にグラスを置く。
 
「備え付けのグラスで味気ないだろうけど」
「いえ、ありがとうございます」
 
考えるように落としていた視線が、こちらに向けられた。
 
「全部お話しなきゃならないとは思うんです。でも何から話せばいいのか分からなくて…シウォンさんが僕について聞いた話を先に聞かせてもらえますか?その方が話しやすいので」
「もちろん構わないよ。そうだな…最初はキュヒョンが置いていった鍵で開けた箱の中に君の名前が書かれたメモが入ってた。キュヒョンがうちに来た時からペンダントを付けていたのは知っていたけどそれが鍵だなんて思ってもいなかった、君にとって大切なものなんだろうとは思っていたけど。だから話を聞かなきゃと思ったんだ」
「…本当は全てお話するつもりでした。僕たちが子供の頃友達だったこと。それを預かっていた事。話してお返しするだけで済むことだったんです。でも…」
 
それだけにするには僕はあのペンダントに頼りすぎました。
キュヒョンは自嘲するように笑ってワインで唇を湿らせる。
 
「それから、探偵事務所に連絡をとってはみたけどキュヒョンについては何も教えてはもらえなかった。まぁ、当然だよね。寧ろあっさり教えられたら守秘義務を守れない事務所だって信用をなくすだろうし。でもそうなるとどこから調べればいいのか分からなくて、父の話を叔母に聞きに行った。そこで父の親友の存在を知ったんだ。でも叔母もその人たちの事をよくは知らなくて、それでも大学で知り合ったことは分かったから、今度は大学の関係を調べてみたんだよ」
「…名簿とかでは調べられなかったでしょう?」
「うん。それは助言をもらってね。僕たちの父親と同期の人で珍しい学問を専攻しているのなら、今教授になっている人が居たりするんじゃないかと。その通りの人が居たんだ。しかも尋ねてみたらキュヒョンが在籍していたってわかった。優秀な生徒だったんだってね」
「僕は、好きなことを学んでいただけですよ」
 
そして背もたれに体重を預けると大きく息を吐きだした。
 
「だったら、僕の大学時代の話は聞きましたか?」
「…教授には詳しくは分からないけど君と同期で連絡を取れるような人は居ないんじゃないかって言われて、そこで詰まるかと思ったんだけどね。運よく同じ大学に通っていた君の後輩に話を聞けた。ジアさんだよ」
 
キュヒョンの肩がピクリと跳ねる。
大体の内容は彼女の名前で察しはついたのだろう。
 
「ジアさん…元気でしたか?」
「うん。彼女はキュヒョンの事を信頼してるみたいだった。他の人からキュヒョンの事を聞かれなくてよかったって言ってたよ。ジアさんから…まぁ、人伝で君の実家の住所を聞き出せたんだ。それで尋ねたら…ジョンホさんが居た。彼から少しは君の子供の頃の話は少し聞いたし、それでここも解ったんだ」
「そうですか…」
 
これだけの流れを説明すれば、あとはキュヒョンが無駄な説明を取っ払って話してくれるだろう。
彼が話してくれるのを待つだけでいい。
グラスの中身をぐっと飲み干すとキュヒョンは話し出した。
 

僕の父とシウォンさんのお父さんは親友でした。
大学で知り合った話の合う友人。
父親同士だけでなく母親同士も気が合ったようで二家族揃って一緒に天体観測に出掛けたりもしていたんです。
子供にとって真夜中のピクニックは大人の時間を覗き見ているようでちょっとした優越感があって、毎回楽しみにしていました。
それに何よりも兄のように思っていたシウォンさんに会えることが、僕にとっては一番の楽しみだったんです。
最後の天体観測になった日。
父さんとシウォンさんのお父さんは僕たちに聞きました。
 
「シウォナ、キュヒョナ。星は好きかい?」
「好き!キラキラ光ってて綺麗だし」
「僕も!」
「じゃあ、あの星を取ってあげようか?」
 
僕たちが頷くと二人は顔を見合わせて微笑んで、空に向かって手を伸ばしたんです。
広げた手をぐっと握って、僕たちの顔の前にその拳を出すと、手を広げてごらんと。
その中から僕たちの手に転がり落ちた星はガラスの球体でした。
それは僕たちの星。
嬉しくて、宝物にしようと約束したんです。
その後、いつもと同じようにそれぞれの家に帰る前に…それもいつもと同じでしたけど、僕はシウォンさんともっと遊んでいたいんだって駄々をこねていたら、シウォンさんが自分のビー玉を僕に差し出しました。
 
「僕の星とキュヒョナの星を交換しよう。次に会う時まで大事に持っててね。僕も大事にするから」
 
そして車の中から小さな箱を持ってきました。
宝物を入れておく箱なんだと言って、その中に何かを書いた紙に僕のビー玉を包んで入れると鍵を掛けて、その鍵のネックレスを僕の首にかけてくれたんです。
こうすれば、また絶対に会えるから、そう言って。
でもそれは叶いませんでした。
暫くしてシウォンさんとご両親が事故にあったからです。
子供の僕にそれは知らされはしなかった。
そのうちまた夜中のピクニックで会えるのだと信じていました。
その後、今度は僕の両親が亡くなったんです。
引き取ってくれた祖父は僕に愛情を注いでくれました。
それでも子供なりに、いきなり無くなってしまった体温や愛情は自分の我儘のせいだと思ってました。
もう祖父以外には僕を必要としてくれる人は居ないのではないか、いや、寧ろ祖父ですら僕の事を恨んで疎ましく思っているのではないか、そんな疑心暗鬼にすらなっていました。
その中で首から下げていたネックレスだけが希望だったんです。
そのうちシウォンさんが会いに来てくれるかもしれない。
僕を探してくれる誰かが居る。
そう思うことだけが希望でした。
何年かして、祖父が自分の会社の社長息子が多分僕にネックレスを預けた人なんだと教えてくれたんです。
聞いた名前も間違いはなかった。
けれど貴方が僕を探すはずもないのだということをその時に一緒に教えられたんです。
さすがにその時には僕も祖父の愛情を信じていたし、両親の事も自分のせいなどではなく事故だったのだと納得できるようにはなっていました。
シウォンさんの養父があの宝箱の存在をシウォンさんから遠ざけている理由を聞いて納得もしました。
僕自身も事故で記憶が亡くなったのだとしても覚えていてもらえない事実に向き合いたくはなかったんです。
だって、貴方が僕の希望だったから。
だから僕はこのペンダントを返すことをしなかった。
そのまま一生自分の元にあるかもしれない。
でも万一にでもあなたにこの鍵が必要となる時が来るのなら、その時にはお返しできるようにしようとは思ったんです。
 
「…キュヒョンが持っててくれてよかったと思ってるよ」
「だったら、いいんですけど…」
「キュヒョンがうちに来た最初の頃に『兄弟がいたらこんな感じかな』って思ったことがあったんだ。それも子供の頃にも同じように感じたことがあるような気がしてた。きっと、二人で遊んでいた時にそんなことを思っていたのかもしれないな…。もしかして俺の事ヒョンとか呼んでくれてた?」
 
小さな自分が小さなキュヒョンを大事に思っていて、彼も同じように思っていたくれたのなら、そう呼ばれていたのかもしれないと感じて聞いてみた質問に、キュヒョンは極まりが悪そうに椅子に座りなおす。
 
「僕の両親にもヒョンって呼ぶように言われてたんです…でも、当然ですけど貴方のご両親も、僕の両親も貴方の事を『シウォナ』って呼んでた。なんだか仲間外れにされてるような気がして…」
 
言い淀んだキュヒョンが意を決したように言葉を続ける。
 
「シウォナ、って…呼んでました」
 
一気に口にしたワインのアルコールが回ったような気がする。
キュヒョンにそう呼ばれるだけで、こんなにも舞い上がるなんて重症にも程がある。
 
「あー…。そう、なんだ」
「え、と。…すいません」
「いや…あの、なんていうか…」
「はい」
「そっちで呼んでもらえた方が嬉しいなぁ、とか」
「だから、シウォンさんって…。どうしてそういうことをサラッと…」
 
科学館で顔を隠した時と同じ顔をしているらしいキュヒョンが俯いたままで、自分のグラスとこちらのグラスにワインを注ぐ。
ワインの色と同じ色の指先が愛おしくて小さく笑うと、またそうやって笑うと文句を言われた。
だって可愛いから仕方がない。
そこは飲み込んで、話の続きを聞くことにする。
まだまだ序章でしかないのだから。