【ウォンキュ】 失われた風景 6 | 徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

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とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

【7日目】


淡いブルーの封筒を二人で睨むように見つめる。


「同じ、ですね」

「同じ、だね」


前日と同じように朝郵便受けに入っていた封筒。

中もほぼ同じものだ。

今日は剃刀の刃が入っていたけれど。

昨日と同じように封を開けようとした途端、違和感に気づいた。

なにか堅いものが入っている。

リビングに入った時に、キュヒョンが封筒を見て緊張したように口を結んだのを見て、心配してくれているのだなと思った。

鋏を使って封を開けると中に入っていたのは鈍い銀色の塊。

心当たりは正直ない。

仕事の関係だとしてもこんな個人的な攻撃をうけるような記憶は全くないのだ。

そして怒りというよりも困惑しているといった方が正しいだろう。

寧ろ。


「キュヒョン」

「はい」

「…なんか、怒ってる?」

「当然です」


何が気に入らないのか書いてあるわけでもなく、ボキャブラリーが窺い知れる程度の常套句。

いや、単語というべきか。

それが一言書かれているだけの紙切れを送りつける一方的な攻撃を卑怯と言わずしてなんというべきか。

腹立たしい。

それでも、その怒りの方向すら示せないのだ。


「だって、シウォンさん、傷ついてるでしょ」

「…んー、そんなことはないけど」

「そういう人ですよ。あなた。それなのに、それだけでは飽き足らずにその身さえも傷つけようとするなんて」


キュヒョンが自分の事を過大評価しているような気もするけれど。

それでも心配してくれる人間がいてくれるのは嬉しい。

ただ、だまって封筒を見ているだけの緊張した空気を破ったのは呼び鈴の音だった。


「誰だよ、朝っぱらから」


シウォンは立ち上がると玄関に向かう。

ドアを開けると、にこやかに微笑むヒョクチェがいて肩から力が抜けた。


「おっはよーシウォナ」

「休みの朝から、何の用だよ」

「探偵の顔を見に来たんだよ」


よくよく聞くと本当はデートの時間までの時間つぶしらしい。

するりとシウォンの開けた隙間から滑り込む様子は猫みたいだなと思う。

リビングに入るなり、キュヒョンを見つけたヒョクチェはにっこりと笑うと、遠慮なくキュヒョンの前に腰を下ろした。


「探偵さん?俺はシウォナの従兄弟でヒョクチェです。よろしく」

「あ…。チョ・ギュヒョンです。よろしくお願いします」


そして、キュヒョンの全身をマジマジと観察して。

無邪気に、ちょっと顔見せてよー。と、前髪をふわりと上げて。

それからシウォンに向き直ると「なるほどねー」と感心したようにそう言った。

何が、なるほどなんだ。

そう言ってやろうかと考えて、止めた。

多分、先日の自分の発した言葉に対してだと思い当たったから。

さすがに、それはなんとなくバラされたくない。


「シウォナ。コーヒー淹れて」

「俺はお前の給仕じゃないぞ」


とは言いつつも、自分のを淹れるついでだ。

そのまま、新しいカップを用意してコーヒーを淹れるとそれを手渡してやる。


「ありがと。ところでシウォナ」

「ん」

「昨日、うちの近くで不審火があったんだ」


ピクリとキュヒョンの肩が動いたような気がした。

ヒョクチェのマンションはここから遠い場所ではない。

と、言うことは先日の不審火と同一犯なのだろうか。

どちらにしても迷惑な話だ。


「不審火?ここのところ多いのか?」

「さぁ、それは分からないけどさ。…またうちの直営店が入ってる場所だったんだけど。これって偶然だと思う?」


最後の言葉はシウォンにではなくて、キュヒョンに向けて問いかけているようだ。

たまたま続けての不審火。

そんな偶然の可能性はどれくらいなんだろう。

絶対にないとは言えないけれど、ここは明らかに意図があるという方が正しい気がする。

淡いブルーの封筒を見つめたままのキュヒョンがまたペンダントをギュッと握って大きく息を吸い込んだ。


「調べてみますか?」

「それは別の依頼になるよね?」

「そう、ですけど」

「危険かもしれないよね?」

「それも否定はできませんが…もちろん安全を最優先しますよ」

「…不審火なら警察だって調べるよ、きっと」


危険なら、そこに飛び込ませるわけにはいかない。

彼の職業柄、危険なことに直面することも多々あるのだろうけれど、今自分が最優先するのはそこではない。

最優先すべき鍵の在処だって、キュヒョンが来る前ほど望んではいないのだから。


「でも、シウォンさん」

「いいから。まだ偶然の可能性だって無いわけじゃない。…キュヒョンの仕事は鍵を探すことだ」

「…わかりました」


ふうっと息を吐き出すキュヒョンを見つめてヒョクチェが困ったように笑った。


「ごめん。俺が変な話したから」

「ヒョクチェさんのせいでは…」

「そう。そっちの方はあながち間違ってないかもしれないから」


首を傾げるヒョクチェに封筒を手渡す。

宛名を見てシウォンの顔を見た相手に頷くと、中から紙切れを取り出したヒョクチェの表情が一瞬で゛曇った。


「何、コレ」

「昨日と今日、郵便受けに入ってた」

「…仕事の方?」

「分からないけど。可能性が無いわけじゃない。…今回の仕事に関連してるなら、今が勝負だしさ」

「…うん、それなら、来週にはカタが着くだろ。とりあえず気を付けるに越したことはないね」


自社製品の特許申請。

独自の技術を使った製品は他社に使用される訳にはいかない。

特許を申請してから特許請の発行までには随分と時間がかかる。

権利化されるまでには色々な審査、査定を受け、最後の特許査定までやっとこぎつけた。

あとは特許料の納付をすれば特許請が発行される。

ここまで来て、その事に関する邪魔は入ることは無いだろうとは思うのだけど。


「…それにしても、この紙切れ書いた奴、頭悪そう」

「お前が言うな」

「はい?俺、こいつよりは絶対頭いいね。自信あるわ」


シウォンが淹れたコーヒーにたっぷりのミルクと砂糖を入れたヒョクチェが一口それを飲んで、その紙切れをキュヒョンに向けながら「そう思わない?」と尋ねると。


「思いますよ」


真面目な顔で返すキュヒョンにヒョクチェが笑う。


「可愛くて面白い探偵だね」


そう言って。