☆以前書いた「愛のシルシ」の続編的なものです。
引かない方のみ閲覧くください(笑)
WONDERFUL WORLD
人が美味しそうに食べている様子は見ていて飽きない。
しかし、このところのキュヒョンのその食べ方は少々異常とも言うべきものだった。
「また、食べてるの?」
げんなりとした顔でリョウクはキュヒョンの座っているテーブルにこんもりと出来たセロファン紙の山を片付ける。
その傍らには「徳用」の文字が書かれた袋に入った一口サイズのチョコレート。
「そんなに食べたら太るよ。今更だけど」
「分かってるよ」
分かってはいるのだが、無性に食べたくなるのだ。
「そういえば少し太った?」
SUPER JUNIOR のリーダー、イトゥクはにこにこと人好きのする笑みを浮かべてキュヒョンを見遣る。
「ちがーう!違うんだよ。ギュはお腹が大きくなってるんだって。いつまでもそんなパンツ履いてちゃダメなのにっ!」
びしっと人差し指をキュヒョンに向けたリョウクは捲くし立てるように言って、にやりと笑う。
「いい加減着ようよ。ギュ」
「絶対、嫌だ!」
「嫌なの?」
後ろからシウォンの声が聞こえてキュヒョンは振り返った。
「せっかくリョウクや、ヒチョルヒョンが買ってきてくれたのに」
「ばかなの!?こいつらは面白がってるだけだよっ!!」
「あぁっ!ひっどーい!僕たち真剣にギュの身体の事を考えて選んだのに」
「そうだよなぁ。リョウガ」
だから、その笑顔が嘘臭いんだ!
キュヒョンの心の声などお構いなしにシウォンはただ感激している。
「本当にありがとう」
「いいんだよ。これくらい。それより本当にいつまでもお腹を締めてるのは良くないんだってよ?母体にもお腹の中の赤ちゃんにも」
とうとうヒチョルは説得相手の矛先を変えた。
より確実な方法に出たともいう。
しばらくヒチョルの話を真剣に聞いていたシウォンがキュヒョンの元に帰ってくると、肩に手を置いてにっこりと微笑んだ。
キュヒョンはぞくりと悪寒を感じる。
「キュヒョナの為にも、お腹の赤ちゃんのためにも着よう。ね?」
「…うっ…」
シウォンの口から子供の為と言われてしまうと、キュヒョンに反抗できる余地などないのだ。
「…分かった!着ればいいんだろう!着れば!」
どかどかと不機嫌極まりない足音を残してキュヒョンが自分の部屋へ向かう。
「「よしっ!! 」」
リョウクとヒチョルは顔を見合わせて小さくガッツポーズを作った。
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初めてそれを着たキュヒョンを見て、リョウクはあんぐりと口を開けたまま固まってしまう。
本当なら笑ってやろうと思っていたのだ。
だってあのキュヒョンにたっぷりのフリルの付いたワンピースなんて、ただの笑いのネタにしかならないと思っていたのだから。
「リョウガ。ヒョン。素敵な服をありがとうございます!…だめだキュヒョナ可愛すぎる…」
満面の笑みを浮かべて、興奮気味の口調でそう言われて。
リョウクはただシウォンの言葉に頷く事しか出来なかった。
お腹を締め付けない洋服「マタニティードレス」としては少々値段が張ったが、リョウクとヒチョル選んだワンピースは一部の女性には絶大な人気を誇るブランドの洋服である。
少女らしい柄に、手の込んだタック。たっぷりのフリル。
そしてゆったりとしたデザインのワンピースは予想範囲外にキュヒョンに似合っていたのだ。
「信じられない!なんなのこの展開!」
「うわぁ…。似合ってるじゃねぇかよ。腹立たしい」
「なにがですかっ!」
「キュヒョナ…本当に素敵だよ」
シウォンにうっとりとそう言われたキュヒョンは、ふんっと顔を背けてどかりと椅子に座ると、また、チョコレートの包装紙を剥がし始める。
口の中に放り込んだチョコが溶けると甘い香りがシウォン達に届いた。
「キュヒョナ食べすぎだぞ」
「また、なの?」
「キュヒョナ。確かにお肉が付いたほうが抱き心地はいいとは思うけど…」
「シウォニヒョン!」
キュヒョンの拳がシウォンの頭に落ちる。
「痛いよー」
「当たり前!痛くしてるんだからっ!」
「もーやってやらんない…」
ふうと溜息を吐いたリョウクはワンピースを買ったブランドの紙袋を綺麗に畳みながら笑った。
「まさに、そのとおり、かも」
ブランドの名前は「WONDERFUL WORLD」
今日も素敵な日常の風景が出来上がっている。