─2017年10月─

千鶴「好きです」

橋「えっ…!」

優等生"千鶴"と学級委員"橋"の
秘密の恋愛が始まった。

放課後…
橋「お待たせ!疲れた…」
千鶴「お疲れさん」
橋「千鶴のこと考えてたら頑張れた!」
千鶴「照れるなー笑
           橋はいつも頑張ってるけどな」
橋「へへっ、帰ろう!」

女子生徒「千鶴…今日もカッコいいいね♪」
千鶴「……」
女子生徒「放課後…遊びに行こ?2人で」
千鶴「……」
千鶴に好意を持って付き纏う
いつもの女子生徒。
女子生徒「応答がないってことは…
     遊べるんだ?2人で♥」
千鶴「無理」
女子生徒「逃げないでよ~」
千鶴「はぁ…しつこい」
女子生徒「ねー、どこ行くの~?」
(千鶴に腕を組む)
千鶴「やめろ」(振り払う)
女子生徒「やめない♪」
そこへ…
橋「千鶴、ちょっと話があるから来て!」
女子生徒「...」(去る)

千鶴「ありがとな」
橋「うん!相手にしなくていい!」
千鶴「しつこいんだよー…あいつ」
橋「その時は私がなんとかする!」
千鶴「んや、大丈夫よ」
橋「大切な人を見離せないよ~」
千鶴「……(照笑)」

休日のデート…
路地裏に入ると恋人繋ぎをする。
橋「…へへ///」
千鶴「恥ずかしいな…w」
橋「私も(笑)」

女子生徒①「ねぇ…見てあれ…」
女子生徒②「え、あの2人そう言う関係?」
女子生徒③「キモっ!」
(パシャッ…パシャッ…)
スマホで写真を撮る女子生徒達。

翌朝…
授業開始前、千鶴と橋は教室に戻ると
目に映ったのは思わぬ光景だった。
橋「……」
千鶴「…っ」
黒板の真ん中に貼られている
千鶴と橋が手を繋いだ写真に
相合い傘の絵と名前。
生徒達からの視線。
千鶴は思わず急いで教室を出る。

千鶴「……」
橋「気にしたら負け!」
千鶴「…はぁ……」
橋「大丈夫!」
その日からイジメられるようになった
千鶴と橋。

女子生徒「……」
千鶴を付き纏っていた女子生徒も
見て見ぬ振りだった。

学級会では、前に立つ橋を嘲笑う生徒達。
男子生徒①「学級委員終わったな」
男子生徒②「アイツもなw」
千鶴「……」
橋はいつものように話を続けた。

女子生徒①「隣のクラスの~と~が
      付き合ってるらしい」
女子生徒②「マジ?」
女子生徒③「気持ち悪...」

机の落書き…花瓶…
2人へのイジメはエスカレートしていった。

千鶴「...」
目が死んでいる千鶴を見てあの日が過る橋。
橋「...」

ある日の休憩時間…
千鶴「……」
気配を隠して階段を上がる千鶴を
橋は見逃さなかった。
橋「……」

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数週間前...

橋「千鶴、帰ろう!」
千鶴「おう」
女子生徒①「見て」
女子生徒②「うわー...」
女子生徒③「見ちゃだめだってw」
ヒソヒソと笑う声に聞こえない振りをする2人。

千鶴「...ふー」
橋「気にしない、気にしない」
千鶴「んー...気にしないようにはしてるけどな」
橋「私達は私達だよ!」
橋「大丈夫😊」
千鶴「...うん」

その2人を見ている1人の影。
「......」

翌日...
橋「今後は...」
生徒達「...」
学級会で橋の言葉に耳を傾けない生徒達。
千鶴「...」
女子生徒「ふふっw」
クスクスと嘲笑う生徒達。
何も言わない先生。
不穏な空気に耐えてきた橋に限界が訪れ...
橋「...っ」
(バタンッ!)
ついに倒れた。
千鶴「っ...橋...!」

その後、保健室で目を覚ました橋。
橋「っ...」(起き上がる)
保健室の先生「目が覚めた?」
橋「?...あれ」
保健室の先生「授業中倒れちゃったみたいよ」
橋「えっ...!」
橋「すみません...」
保健室の先生「疲れてた?」
橋「いえいえ!」
保健室の先生「倒れるぐらいだから...」
橋「最近、勉強で徹夜してたからかもです...w」
保健室の先生「あ~...頑張り過ぎたんだね~...」
保健室の先生「休憩もしてね」
橋「はい😊」
保健室の先生「もう戻るの?大丈夫?」
橋「大丈夫です!」
橋「失礼しました🙇」

千鶴「橋...良かった...」
橋「ごめんね💦もう大丈夫!」
千鶴「...やっぱストレスだよな」
橋「私は全然平気😊」
千鶴「橋はいつも無理し過ぎだよ...」
橋「え~...そうかな~?w」
千鶴「今週の日曜空いてる?」
橋「うん!」
千鶴「一緒に水族館で癒されん?笑」
橋「いいね~、行こう!」
千鶴「やった!」

放課後...
教室に残って学級ポスターの作業をする橋。
千鶴「橋、ごめん...」
千鶴「午後から予定あるから先帰らんと...」
橋「いいよ!先帰って😊」
千鶴「頑張ってな」
橋「ありがとう!」
千鶴「またね!」
橋「また明日!気を付けてね」

その後...
橋「よし、出来た!」
橋「帰ろう...」
リュックを背負って教室を出る。

人影ない薄暗い廊下を差す橙色の光。
橋「...」
(シャン...シャン...)
背後から近付いてくる鈴の音。
橋「...」(振り向く)
ゆっくりと歩いてくる影。
その人物は...
橋「...美結?」
後輩の"美結"だと分かる。
美結「...」
橋「久し振り!...元気してた?」
橋「しばらく学校に来てないって聞いたから
        心配してたよ~...」
美結「...」
橋「久々に会えて良かった!」
橋「うん!...えへへw」
美結「...」
美結「血、出てるよ」
橋「えっ?!ち...血!?」(体を触る)
美結「見えない」
橋「ん...?」
美結「見えないよ、心だもん」
橋「心?...」
美結「橋の心、血が出てる」
橋「...心から血って出るのかな?(笑)」
橋「でも、私は大丈夫!出てないと思う!」
美結「...」
美結「隠してるつもりだろうけど隠れてない」
橋「...え?」
美結「橋も、千鶴も」
橋「...」
美結「どこがおかしいんだろうね」
美結「同性と恋愛をすることが」
橋「...知ってたんだね!」
美結「見てたんだ、ってか目に入った」
橋「...」
美結「みんな、犯罪者のような扱いでさ」
美結「何も悪いことしてないのに」
美結「人を殺したわけじゃないのに」
美結「そもそも、この世界を作ったのは
           アダムとイブでお前らじゃねえのに」
美結「アイツらが犯罪者だよ」
橋「...まだまだ理解が難しい世だからね」
美結「2人しかいない世界があったらどう?」
橋「幸せだな~...あったらいいね」
美結「...行きたい?」
橋「行けるなら行きたいかな!」
美結「...連れて行ってあげな?」
橋「どうやって~?」
美結「...来て」
橋「うん?」

美結に連れられた場所は...
橋「...屋上?」
美結「うん」
橋「...」
話の行き先に察した橋。
美結「...いい景色だね」
美結「千鶴と見たらもっといい景色だよ」
橋「...うーん」
美結「そう思わない?」
橋「この行き方は悲しいな~...」
美結「...」
橋「やっぱり別れも笑顔がいいから!」
橋「歳をとってもお互い幸せに
       過ごせたらいいな」
美結「...」
(バッ)
突然、橋の肩に腕を巻き付ける美結。
橋「っ...?」
美結「...」
美結「き、れ、い、ご、と」
橋の耳元にささやく。
美結「...」(離す)
橋「...」
美結「大切な人、先に行かせるなよ」
美結「俺のように」
橋「...」
美結は、1年前
愛していた相手を自殺で失くした。
あの時の悲惨な光景は、
橋も忘れられなかった。
美結「...真の幸せって、なんだろうね」
美結はそう言うと去っていった。
橋「...」
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3階を上がっていく時… 
橋「千鶴!」
千鶴「っ…」
橋「どこ行くの?」
千鶴「……」
千鶴「ごめん、俺もう無理」
橋「……」
橋「私も行く」
千鶴「橋は駄目」
橋「……」
橋「一緒にいこう?^^」
千鶴「……」

屋上に来た千鶴と橋は、
そっと上履きを脱ぐと壁際に揃える。
校舎の端につま先を合わせ、近付く青空。
繋ぐ手の温もりに恐怖心も包まれる。
橋「2人で眺める景色は綺麗だね」
千鶴「そうだな」

(♪~)
授業開始のチャイムが鳴り響く。
橋「……」
千鶴「……」
千鶴「っ……橋…ごめん…」
涙をこぼす千鶴。
橋「……」
橋「なんで謝るの!」
千鶴「…こうなったのは俺のせい」
橋「千鶴は悪くない!」
橋「2人の世界なら…気楽に過ごせる!」
橋「だから、もう大丈夫^^」
千鶴「……っ…」
橋「いこう!」
千鶴「……」(頷く)
繋ぐ手に力が入る。
橋「……」
千鶴「……」
千鶴「橋…」
橋「ん…?」
千鶴「今までありがと…大好き」
橋「…そんな悲しくならないでよ!
  2人の世界で会えるから!」
千鶴「……」
橋「……」
橋の頬に涙が伝う。
千鶴「…っ」
橋「^^」
片足を前に出す橋。
同時に伝わる感覚に胸の鼓動が高鳴る。
心を合わせて体を前に出した瞬間

(スッ……)

校舎を過ぎる一瞬の気配に振り向く
窓際の生徒。

(バタンッ!!)

地面に強く叩きつけられる衝撃音に
教室の窓から外を覗き込む全学年の生徒達。
響き渡る悲鳴と騒ぎ声の先には、
グラウンドに倒れている千鶴と橋。
飛び散って溢れ出た血溜まり。

2人の手は、
引き裂かれるように離されていた。

ブルーシートで覆われ、搬送される2人を
校舎の外から眺めて微笑む1人の少女。