彩花「...」
想像を超える豪邸に立ち止まる彩花。
葵「いらっしゃいˆ ˆ髙橋さん」
彩花「...お邪魔します」
美結「彩!久し振り!」
彩花「ˆ ˆ久し振り...」
葵「さあ、パーティーを始めましょう」
美結「イェーイ♪」
彩花「...」
美結「こっち!」
彩花は警戒して真ん中のチェアに座る。
テーブルには豪華な洋食が並べられている。
美結「これ全部シェフが作ったんだよ!」
彩花「...」
美結「緊張してる?大丈夫だよˆ ˆ」
葵はケーキクローシェを
彩花の前に運んで蓋を取ると、
ブラックフォレストケーキが姿を現す。
ケーキにはロウソクが立っている。
美結「うわぁ〜!美味しそう♪」
彩花「...」
美結「ねぇ!美結も食べたい!」
葵「美結の分もあるよˆ ˆ」
美結「えっ!?」
美結の前にもケーキクローシェが配置される。
美結「やったぁ〜♪」(蓋を取る)
美結「うわぁ!美味しそう😆何これ!」
葵「タルト•オ•シトロン」
美結「オシャレ〜!」
葵「フランスの伝統的なお菓子だよ」
美結「フランス大好き(*>∀<*)」
美結「いっただきま〜す♪」
美結「んぅ〜///美味しい〜💗」
葵「ˆ ˆ」
葵はブラックフォレストケーキの
ロウソク24本に着火する。
美結「おぉ〜」
彩花「...」
葵「消灯します」
葵はスイッチで家の電気を消す。
美結「フゥー!」
葵「Happy birthday to you♪」
美結「ハッピーバースデートゥーユー♪」
葵「happy birthday dear. Ayaka Takahashi」
葵「happy birthday to you♪」
美結「イェーーーイ!」
美結「彩花!24歳おめでとう〜!!」
彩花「ありがとうˆ ˆ」
美結「うわっ!もう二人24歳か!」
美結「俺まだ23歳😥」
葵「学年は同い年だよ😌」
葵「さ、召し上がって」
彩花「...」
美結「どうしたの〜彩花」
美結「食べないなら食べちゃうよぉ〜ん」
美結はフォークをブラックフォレストケーキに
近付けると...
(サッ)
美結の手を取る葵。
美結「...😃」
葵「お姫様は僕と踊りましょう」
美結「っ...///」
美結は照れて顔を隠す。
美結「はい...❤️」
葵は美結の手を引くと部屋を去る。
彩花「...」
彩花「(やっぱりこのケーキ...)」
────────────────────
数時間前...
彩花「...」
(スマホの着信音が鳴る)
彩花「?...」
彩花「...」(電話に出る)
彩花「はい」
(電話)
美結[彩花...?]
彩花[っ...はい...]
美結[誰か分かる?]
彩花[...美結?]
美結[うん!美結だよ!]
彩花[久し振り]
美結[あのさ...突然だけど今夜空いてる?]
彩花[空いてるよ]
美結「ちょっとメモしてほしい」
彩花[メモ...?]
美結「うん、場所を言うから」
彩花[わ...分かった]
美結「えっとね...ドラえもん市、ドラえもん町」
彩花[うん]
美結[え、待ってw]
彩花[ん?]
美結[今言ったのメモしたの?w]
彩花[うん]
美結[www]
彩花[?...]
美結[そんな町あるわけないwww]
彩花[あっ...店の名前かと思った😅]
美結[んなわけwww]
彩花[(笑)...]
美結「〇〇市〇〇町の〇〇に来て!」
彩花[...それは誰かの家?]
美結[うん]
彩花[誰の家...?]
美結[彼氏の家]
彩花[......あぁ]
美結[もう大丈夫だって〜]
美結[今度こそ和解したでしょ]
彩花[...うん]
美結[来てね?楽しいことするからね!]
美結[待ってるからね!]
彩花[宮林さんは私を呼んでるの?]
美結[うん、彩花は招待されたんだよ]
彩花[...なるほど]
美結[まぁなんでかは来たら分かるよ]
彩花[...]
美結[俺がいるから!安心して]
美結[夜11時に来てね!]
彩花[...分かりました]
美結[じゃ、楽しみに待ってるね〜♪]
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彩花「(...嫌な予感がする)」
彩花「(あの笑顔、裏があるに違いない)」
あの日の悍ましい姿が過る。
彩花「(...あの人が私の誕生日会なんて)」
彩花「(ケーキに毒が入ってるんじゃ)」
彩花「(...逃げるなら今しかない)」
彩花は静かに立って玄関へ向かう。
彩花「...」
葵「どうかされました?」
彩花「...っ」
背後の声に立ち止まる彩花。
彩花「すみません...帰ります」
葵「遠慮なさらなくても😌」
彩花「いや、用事を思い出して...」
葵「トリュフのリゾット、」
葵「ロブスターのビスクもありますよ」
葵「ケーキだけでも食べて帰ってください」
彩花「...」
葵「何も入れてませんからˆ ˆ」
彩花「っ...」
葵はブラックフォレストケーキを切り分け
皿に一切れ盛る。
彩花「...」
彩花は辺りを見回す。
葵「美結はベッドで眠ってますよ」
彩花「眠った...?」
葵「ええ」
葵「どうぞ」
葵はケーキの皿をテーブルに置く。
彩花「...」
彩花は恐る恐る戻ってチェアに座る。
葵「...」
彩花「...」
彩花「(考え過ぎ...だよね)」
彩花「(和解したんだよね...)」
彩花「頂きます」
彩花はフォークとナイフでトリュフを切って
そっと口に持っていく。
彩花「...っ」
ゆっくり噛みしめる感触に緊張が全身を伝う。
葵「ね?大丈夫でしょう」
彩花「...」
彩花「(何も入ってない...)」
彩花は他の料理も食べるが
ケーキには手を付けず。
彩花「...ごちそうさまでした」
葵「甘いものはお好みではありませんでした?」
彩花「お腹一杯で...」
葵「...そうですか」
葵「貴方は運が悪いですね」
彩花「え...?」
葵「ケーキには何も入れてなかったのに」
その瞬間、彩花は青ざめる。
彩花「......」
彩花「じゃあ...それ以外に毒を...」
葵「...毒」
葵「私は一言も毒なんて言ってませんけどね」
彩花「...違うんですか?」
葵「...」
葵「貴方を殺すことが目的なら」
葵「最初からこのパーティを開催しませんよ」
彩花「...」
葵「和解したというのに」
彩花「そうですよね...すみません」
葵はケーキを箱に詰めると彩花に渡す。
葵「どうぞ、お持ち帰りなさってください」
彩花「すみません...頂きます」
彩花は申し訳無さそうに葵の家を出る。
葵「お気を付けてˆ ˆ」
彩花「ありがとうございます...お邪魔しました」
その後...
家に帰った彩花は箱を開けて
ブラックフォレストケーキを皿に移して
一口食べる。
彩花「...」
彩花は葵の言葉を思い出す。
"和解したというのに"
彩花「...」
彩花「(和解はした)」
彩花「(美結とは金輪際会わないって)」
"イェーーーイ!彩花!24歳おめでとう〜!!"
"どうしたの〜彩花"
"食べないなら食べちゃうよぉ〜ん"
彩花「......」
久々に美結の純粋な姿を目にして恋しくなる。
彩花「...」
そして一切れになったケーキの端を
フォークで刺すと、何かに当たって止まる。
彩花「...?」
その硬すぎる感覚を取り除くと...
彩花「っ...」
姿を表したのはペティナイフだった。
血の気が引く彩花は確信する。
葵に気持ちを読まれていたのかと。