数十分後...
ゆめタウンのテラスに友理香とゆう以外の
メンバーが集まる。
美結「三連休のド真ん中だから人多いなぁ」
トマト「今日は何するん?」
美結「昨日言った専属の作曲家の紹介」
トマト「マジで専属?」
美結「今から来るよ」
葵「専属の方も見つかって良かったねˆ ˆ」
美結「...うん」
彩花「ドキドキ...」
美結「俺も!楽しみ!」
彩花「ˆ ˆ」
葵「...」
そこに...
「こんにちは〜」
美結「あっ!来た」
こちらに歩いてくる高身長の眼鏡の高年女性。
トマト「あの人?」
美結「うん」
美結「和子ちゃん!待ってたよ」
トマト「...なんでちゃん付け?」
葵「初めましてˆ ˆ」
彩花「初めまして...!」
赤松「はじめまして〜、赤松です👐」
赤松「美結ちゃんがお世話になってます❤️」
トマト「...知り合い?」
美結「うん」
葵「そうなんだね」
トマト「へー...作曲家?」
赤松「いやいや、普段は配送の仕事」
トマト「違うじゃん」
美結「合ってるよ」
赤松「一応、作曲もやってます♪」
葵「あの曲も赤松さんが作られたのですか?」
赤松「そうよ」
葵「とても素敵です!」
彩花「すごい...!」
美結「だろ」
赤松「ありがと♪趣味だけどね😘」
トマト「友理香ちゃん来たよ」
美結「おっ!友理香ー!」
友理香「ごめん💦遅くなった!」
小走りで向かってくる友理香。
赤松「こんにちは〜♪」
友理香「こんにちは😊」
美結「専属の作曲家だよ」
友理香「あっ...初めまして!」
友理香「よろしくお願いします🙇」
赤松「よろしく😉」
赤松「これで全員?」
美結「いや、あと一人」
美結「...アイツまだLINE既読してねえ」
美結「ナメてんな」
赤松「(笑)」
赤松「まだ揃ってないなら」
赤松「ちょっと夜ご飯の買い物してくるから」
赤松「揃ったら電話して」
美結「はーい」
赤松は買い物に向かう。
葵「春日部さんも来てないね」
美結「愛梨は脱退した」
葵「えっ、そうなの...?」
美結「俺にアイドルは向いてないって」
彩花「そうだったんだね...」
美結「俺もそう思うよw」
美結「愛梨は家で愛猫とまったりが向いてる」
トマト「最初から乗り気じゃなかったよな」
美結「うん」
美結「まぁ、6人で活動やっていこ」
美結「...5人になるかもしれないけど」
トマト「ww」
美結「ゆうは来なかったら強制脱退にするぞw」
美結「マジで既読しないとか論外」
葵「何かあったのかな...?」
美結「...」
美結はゆうにLINE電話を発信する。
(♪~)
(ガチャッ...)
美結「あっ」
[LINE電話]
美結「もしもし?」
ゆう「もしもーしw」
美結「今、何してんの?」
ゆう「ROUND1来てるw」
美結「...LINEのグルチャ見た?」
ゆう「見てない!」
美結「通知ONにしてた?」
ゆう「してない!」
美結「お前、強制脱退な」
ゆう「嫌だ!!」
(ガチャッ)
美結はLINE電話を切った。
トマト「...」
美結「やっぱ遊んでたわ」
美結「ROUND1に来てるって」
トマト「でもさ、昨日お前」
トマト「何も言ってなかったじゃん」
トマト「明日活動あるって」
美結「言ったよ」美結「明日、専属の作曲家を紹介するって」
トマト「でもさ、時間までは決めてなくね?」
美結「...そうだけど」
美結「LINEの通知ONにしてって言ったのに」
美結「活動を遊びだと思ってんのか?」
美結「いいや、もうやろ」美結達はミーティングを始める。
美結「Dear friends!」
美結「改めて、専属の作曲家を紹介する」
美結「はい、どうぞ」
赤松「皆さん、初めまして😘赤松です♪」
赤松「よろしくお願いします〜」
葵達「よろしくお願いします」
美結「赤松さんは俺の知人でもある」
赤松「一緒に頑張っていきましょうね🙂」
美結「赤松さんに質問ある人?」
トマト「はい」
美結「挙手して」
トマト「学校かよ」
トマト「はい!」(挙手をする)
美結「どうぞ」
トマト「本当に無料なんですか?」
赤松「はい、無料です」
トマト「マジか」
友理香「それは嬉しい...」
赤松「あ、でも売り上げ次第では」
赤松「少しギャラを♪」
赤松「まぁそれはウソだけど」
美結「他に質問ある人」
友理香「自分は特に無いかな...」
彩花「大丈夫です」
葵「僕も大丈夫だよ」
美結「はい!」(挙手をする)
赤松「どうぞ」
美結「著作権ください」
赤松「あげる」
美結「やったーw」
友理香「え!いいんですか...?」
赤松「作曲が本業なら著作権はあげないけど」
赤松「趣味なので(笑)」
友理香「え〜...ありがたい...」
葵「ありがとうございます!」
トマト「じゃあさ、次の新曲作ろうや!」
美結「昔の歌詞を仕上げてからね」
美結「"ダナ思考☆パラダイス"を仕上げたから」
美結「後は...どの歌詞にしよう」
美結「何の歌詞を作ったのかも憶えてない」
赤松「書き出してみたら?」
美結は昔の曲を思い出してスマホに書き出す。
『ああ、美しきダナ思考』(2017年度)
ああ...美しいよ ダナ思考
ボーイッシュ同士愛し合おう
ほら、王子様と王子様の世界
百合の花園で一本の薔薇をくわえ
キスをしよう 二人で
愛おしいよ ダナ思考
ああ...ダナ思考
『世界をダナ思考に染め上げろ』(2017年度)
男と女 ガールズラブ ボーイズラブ
よりも ボーイッシュ×ボーイッシュ
ダナ思考に染まれよ 酔いしれろ
ボーイッシュ同士愛し合おうぜ
さぁ、そこのボーイッシュ
魅惑の世界においでよ ほら!
トマト「懐かしいな」
美結「やっぱダナ思考っていいよなぁ///」美結「...俺もあの人と」
美結「ボーイッシュラブしたい」
美結はさり気なく目の前の葵に視線を向ける。
葵「...」
一瞬、美結に目を合わせる葵だが
察していないかのように視線をそらす。
美結「...」
トマト「...」
友理香「好きな人いるの?」
美結「うん」
その相手は葵だと分かっているトマトは、
チャンスを活かそうとする。
トマト「このメンバーの中にいる?」
美結「...うん」
友理香「え、誰?」
美結「...」
もし、葵に気が無かったらと
反応を恐れる美結は俯いて袖を触る。
トマト「...」
トマト「葵ちゃん!誰だと思う?」
美結「...っ」
葵「え?」
トマト「美結の好きな人」
トマトは葵に自分だと言わせようとした。
葵「...うーん、分からない😅」
美結「っ...」
その言葉に期待は裏切られ、
美結の心底は釘に強く打たれる。
トマト「...」
トマト「教えてあげる」
トマト「美結の好きな人は...」
美結「もういい!」
トマト「ハッキリしろよ!もう」
トマト「このメンバーの誰かって」
トマト「分かってんだからさ」
美結「...分かった、言う」
美結「俺の好きな人は彩花だよ」
トマト「...は?」
彩花「えっ...」
彩花は驚いて止まる。
友理香「...そうなの?」
美結「そうだよ」
美結「高校の頃に付き合って別れたけど」
美結「今も好きだったんだ」
葵「...」
彩花「...そうだったんだ」
彩花「ごめんね...分からなかった...」
美結「だから、もう一回付き合おう」
彩花「...取り敢えず、今は活動中だから」
彩花「後で話してもいいかな?」
美結「うんˆ ˆ」
トマト「...」
赤松「ロマンスタイムは終わった?」
美結「終わった!」
美結「で...どこまで話してたっけ?w」
赤松「その歌詞で曲を作るの?」
美結「あっ、そうそう!お願い!」
赤松「曲調は?」
美結「えーと..."ああ、美しきダナ思考"は...」
美結はこの後も葵に視線を向けず、
口も聞かなかった。
赤松「じゃ、二曲仕上げますね〜」
美結「お願いします!」
葵「よろしくお願いいたしますˆ ˆ」
彩花「よろしくお願いします」
友理香「よろしくお願いします🙇」
赤松「は〜い、またね〜✌️」
赤松は帰って行く。
友理香「もうこんな時間か...」
友理香「自分もそろそろ電車乗るね」
美結「了解、バイバイ!」
友理香「またね!」
トマト「バイバーイ」
美結「...」
美結「彩花、あっちで話そう」
彩花「うん」
美結は彩花の手を引いて去ろうとすると...
葵「またねˆ ˆ美結、髙橋さん」
葵「二人の幸せを願ってるよ」
美結「っ...」
美結は立ち止まる。
トマト「...」
美結「うん!彩花と幸せになるねˆ ˆ」
葵「ˆ ˆ」
美結「...っ」
無理に微笑んで顔を背ける美結は、
早足で逃げるように彩花を連れ去る。
トマト「...」
葵「それじゃ、石井さん、お先にˆ ˆ」
トマト「...あのさ」
葵「...?」
トマト「...」
トマト「やっぱいい、帰っていいよ」
葵「...またˆ ˆ」
葵は帰って行く。
トマト「...」
トマト「はぁ...何やっとん?アイツ」
美結の言動にトマトは呆れて帰って行った。
人影無い非常階段に上がって
途中に立ち止まった美結は、
彩花の手を離すと背を向けて俯く。
美結「...」
彩花「?...」
彩花「美結...?」
美結「...っ」
美結は泣き出して階段に座り込む。
美結「うぅっ...うぅ...!」
彩花「何があった...?」
彩花は美結に近付くと、
ゆっくり背中に手を添える。
美結「うぅう...うぅう!」
彩花「...」
彩花は優しく美結の背中を叩く。
そこに階段を上がってきた女子小学生二人が
美結を見て引いた表情で通り過ぎる。
女子小学生達「...」
他人のこともユニット活動のことも
今の美結には葵以外見えていなかった。
美結「あああああ!」
静かな非常階段に
美結の大声だけ響き渡っていた。