MOT鈴たん弁当が美味しくなる,yumiko-nおもしろサイエンス:【動物の毛色(2)】
[A] 色素細胞の表現型転換
ヒトの毛髪や体毛は原則単一色であるが、多くのホ乳動物の被毛は一本一本が縞模様(Agouti)になっている。ヒトも多くのホ乳類も、被毛の色は毛幹に含まれる色素により決定される。色素には2種類あり、黒褐色色素のeumelaninと黄色色素のpheomelaninである。これらの色素は、毛包に分布する色素細胞が産生・分泌し、角化上皮細胞が取込んで毛幹へと移動させたものである。色素細胞はeumelanin とpheomelaninの産生を、たった一種類の受容体(melanocortin 1 receptor: Mc1r)を介して転換させる。このことを『色素細胞の表現型転換 』といい、これに関与する遺伝子群の変異が、ホ乳動物の毛色域の多様性をもたらす。
[B] 歴史的背景
ヒトは約15, 000年前からイヌを家畜化しはじめた(イエイヌの始まり)。イエイヌの本格的な育種は約200年前からで、利用目的に応じて多様な犬種を作出した。この育種はごく少数を母集団から開始されたので、交配記録とミトコンドリアDNAの多様性を調べることで、多くの犬種について相互の近縁関係を遡ることができる。
被毛に着目すると、ハイイロオオカミは野生型であるが、イエイヌには黄色あるいは黒色がある。Wright S.は古典的遺伝学の知見から、「毛色の多様性は、ホ乳動物全体にまたがった単一のメカニズムが支配する」と予測した。その後Little C.C.は、ヒトに最も身近なホ乳動物のイエイヌがこの予測の例外であることを、リンケージ解析により報告した。イヌに『優性黒色』をみつけたのである。当初Littleは、そのメカニズムをAgouti領域の変異の一つと考えたが、黒色が優性であることを説明するためには、どうしても別の遺伝子座,K領域を想定せざるを得なかった。
20世紀後半になって、遺伝子が一つずつ同定されてゆく過程で、ヒトでpropiomelanocortinから派生するペプチド類(α-melanocortin stimulating hormoneなど)と反応する分子として受容体Melanocortin 1 receptor(MC1R)がみつかった。約100年を経て、Wright S.の予測は、「ほとんどのホ乳動物で、毛色発現はMc1rを介して制御される。Mc1r遺伝子の変異は劣性ホモで黄色を、Mc1rのリガンドの一つであるAgouti遺伝子の野生型は優性で灰褐色を、Agouti遺伝子の変異は劣性ホモで致死性黄色を、対立遺伝子であるagoutiは劣性ホモで黒色を、もたらす」と、科学的に説明できた。
しかしまだ、イエイヌの『優性黒色』の発現機構を説明できずに、21世紀を迎えた。

私の首はなぜ黄色?
[A] 色素細胞の表現型転換
ヒトの毛髪や体毛は原則単一色であるが、多くのホ乳動物の被毛は一本一本が縞模様(Agouti)になっている。ヒトも多くのホ乳類も、被毛の色は毛幹に含まれる色素により決定される。色素には2種類あり、黒褐色色素のeumelaninと黄色色素のpheomelaninである。これらの色素は、毛包に分布する色素細胞が産生・分泌し、角化上皮細胞が取込んで毛幹へと移動させたものである。色素細胞はeumelanin とpheomelaninの産生を、たった一種類の受容体(melanocortin 1 receptor: Mc1r)を介して転換させる。このことを『色素細胞の表現型転換 』といい、これに関与する遺伝子群の変異が、ホ乳動物の毛色域の多様性をもたらす。
[B] 歴史的背景
ヒトは約15, 000年前からイヌを家畜化しはじめた(イエイヌの始まり)。イエイヌの本格的な育種は約200年前からで、利用目的に応じて多様な犬種を作出した。この育種はごく少数を母集団から開始されたので、交配記録とミトコンドリアDNAの多様性を調べることで、多くの犬種について相互の近縁関係を遡ることができる。
被毛に着目すると、ハイイロオオカミは野生型であるが、イエイヌには黄色あるいは黒色がある。Wright S.は古典的遺伝学の知見から、「毛色の多様性は、ホ乳動物全体にまたがった単一のメカニズムが支配する」と予測した。その後Little C.C.は、ヒトに最も身近なホ乳動物のイエイヌがこの予測の例外であることを、リンケージ解析により報告した。イヌに『優性黒色』をみつけたのである。当初Littleは、そのメカニズムをAgouti領域の変異の一つと考えたが、黒色が優性であることを説明するためには、どうしても別の遺伝子座,K領域を想定せざるを得なかった。
20世紀後半になって、遺伝子が一つずつ同定されてゆく過程で、ヒトでpropiomelanocortinから派生するペプチド類(α-melanocortin stimulating hormoneなど)と反応する分子として受容体Melanocortin 1 receptor(MC1R)がみつかった。約100年を経て、Wright S.の予測は、「ほとんどのホ乳動物で、毛色発現はMc1rを介して制御される。Mc1r遺伝子の変異は劣性ホモで黄色を、Mc1rのリガンドの一つであるAgouti遺伝子の野生型は優性で灰褐色を、Agouti遺伝子の変異は劣性ホモで致死性黄色を、対立遺伝子であるagoutiは劣性ホモで黒色を、もたらす」と、科学的に説明できた。
しかしまだ、イエイヌの『優性黒色』の発現機構を説明できずに、21世紀を迎えた。
私の首はなぜ黄色?
MOT鈴たん弁当が美味しくなる,yumiko-nおもしろサイエンス:【動物の毛色】
はじめに
ホ乳動物の被毛は、色の種類(色域)と配色様式において多様である。ヒトは、ホ乳動物の被毛の美しく珍しい色や配色に興味を惹かれた。ある飼育者は選択的に育種を行って被毛の再現を楽しみ、遺伝学者らはその遺伝様式の決定, 遺伝子の同定と遺伝子間の相互作用について研究を重ね、メンデルの法則再発見から約1世紀の歴史を歩んできた。被毛の色域多様性は、育種・遺伝学研究の比較的初期から、たった二つの色素(eumelanin と pheomelanin)の量、質およびその分布だけで決定されると予測され、昨今のゲノム解析により予測どおり、責任遺伝子が同定されてきた。
被毛の変異に係る遺伝子型と表現型は、実験用マウスだけでも、現在までに100種類以が報告されている。個々のゲノム変異は毛色の変化として確認できる場合が多いので、被毛の変異は、表現型から遺伝子をみつける遺伝学の発展に大きく貢献した。特に、(i)器官形成や細胞内小器官の発生に関わる細胞生物学分野、(ii)生体内高分子とその受容体を研究する生化学分野において、多くの知見を齎した。
イエイヌでは、 (i)の個体発生過程での色素細胞の体内移動について、Dalmatianの黒色斑点発現機構を、(ii)のmelanocortin受容体とそのリガンドについて、イエイヌの優性黒色発現機構を、いずれもCattanach B.M. らが解明した。
イエイヌの祖先であるハイイロオオカミ,なかでも北米に生息するハイイロオオカミ(北米オオカミ)に、灰褐色縞模様(野生型)ばかりでなく黒色被毛個体のあることは古くから知られていたが、イエイヌの優性黒色発現機構が解明されたことが、黒色オオカミの起源について進化論的説明を可能にしたのである。すなわち、北米オオカミに認められる黒色被毛の起源がイエイヌで、責任遺伝子はβ-defensinのグリシン欠損変異で、この変異遺伝子が特に森林を住処とする北米オオカミ(森林北米オオカミ)のグループに高頻度に集積するという正の選択が起こった結果である事実が明らかになったのである。この研究により、『家畜化した種類において何らかの選択圧により固定した形質が、その野生種へ形態学的変化を与えうるか』という命題に、yesの結論を出すこととなった。
このブログでは、イエイヌの優性黒色発現機構を概説し、オオカミの黒色被毛発現機構を紹介する。

写真はヘア(野ウサギ)、野生色(灰褐色縞模様)を示す。
はじめに
ホ乳動物の被毛は、色の種類(色域)と配色様式において多様である。ヒトは、ホ乳動物の被毛の美しく珍しい色や配色に興味を惹かれた。ある飼育者は選択的に育種を行って被毛の再現を楽しみ、遺伝学者らはその遺伝様式の決定, 遺伝子の同定と遺伝子間の相互作用について研究を重ね、メンデルの法則再発見から約1世紀の歴史を歩んできた。被毛の色域多様性は、育種・遺伝学研究の比較的初期から、たった二つの色素(eumelanin と pheomelanin)の量、質およびその分布だけで決定されると予測され、昨今のゲノム解析により予測どおり、責任遺伝子が同定されてきた。
被毛の変異に係る遺伝子型と表現型は、実験用マウスだけでも、現在までに100種類以が報告されている。個々のゲノム変異は毛色の変化として確認できる場合が多いので、被毛の変異は、表現型から遺伝子をみつける遺伝学の発展に大きく貢献した。特に、(i)器官形成や細胞内小器官の発生に関わる細胞生物学分野、(ii)生体内高分子とその受容体を研究する生化学分野において、多くの知見を齎した。
イエイヌでは、 (i)の個体発生過程での色素細胞の体内移動について、Dalmatianの黒色斑点発現機構を、(ii)のmelanocortin受容体とそのリガンドについて、イエイヌの優性黒色発現機構を、いずれもCattanach B.M. らが解明した。
イエイヌの祖先であるハイイロオオカミ,なかでも北米に生息するハイイロオオカミ(北米オオカミ)に、灰褐色縞模様(野生型)ばかりでなく黒色被毛個体のあることは古くから知られていたが、イエイヌの優性黒色発現機構が解明されたことが、黒色オオカミの起源について進化論的説明を可能にしたのである。すなわち、北米オオカミに認められる黒色被毛の起源がイエイヌで、責任遺伝子はβ-defensinのグリシン欠損変異で、この変異遺伝子が特に森林を住処とする北米オオカミ(森林北米オオカミ)のグループに高頻度に集積するという正の選択が起こった結果である事実が明らかになったのである。この研究により、『家畜化した種類において何らかの選択圧により固定した形質が、その野生種へ形態学的変化を与えうるか』という命題に、yesの結論を出すこととなった。
このブログでは、イエイヌの優性黒色発現機構を概説し、オオカミの黒色被毛発現機構を紹介する。

写真はヘア(野ウサギ)、野生色(灰褐色縞模様)を示す。

