世界で増えるボクサーたちの自己ブランディング

 

 

ボクシングとは人気商売だ。

 

 

人気があるからこそファンに求められ、大金を稼ぐことができる。

ファンに求められるからこそ大きな経済効果を生み出し、対戦相手の選択肢の幅も広がるのだ。

 

今やソーシャルメディアやブログなど、自らを売り出すためのオンラインツールが誰でも気軽に手に入る。

 

強さが求められるのは至極当然の大前提だが、強くあればそれでいい、と短絡的に割り切ってしまうのも危険な時代ではないだろうか。

 

 

“ファンといかに関係を築き、人気を高めていくのか”

 

 

その意識が高ければ高いほど、

ボクサーとしての可能性は広がっていくと言えるだろう。

 

 

ファイトスタイルがつまらないと揶揄されたフロイド・メイウェザーは、

リング外のパフォーマンスや自己ブランディングを武器にヒール役として強烈な人気(アンチも含む)を手に入れた。

 

言うまでもないが、

 

史上最高と称されるデフェンス技術を駆使し、世界初、無敗のまま5階級を制覇した確かな強さがあってこそなのだが。

 

 

自己ブランディングの大切さを示してくれたメイウェザーに影響を受けている現役ボクサーは多いだろう。

自らをブランド化、ロゴ製作し、グッズ展開する選手も少なくない。

 

 

余談になるが、筆者はデザインの仕事をしている。

 

グラフィックデザインやアートディレクションを生業としている身として、ボクサーたちを見る時に、ボクシングの強さだけではなく、選手たちの自己ブランディングにも自然と目がいってしまう。

 

 

そこで今日は、自らをブランディングしている一流ボクサーたちのロゴデザインに着目していこうと思う。

 

 

まずは先にも挙げた

 

フロイド・メイウェザー

 

 

メイウェザーのロゴでよく目にするのが『TMT』のロゴだろう。

 

ロゴデザインとしてはシンプルでどっしりとした力強い印象。しかし何より、“THE MONEY TEAM”(ザ・金のチーム)という名前のインパクトがとても強い。1試合で数百億円という大金を稼ぎだす男には、まさしくぴったりのネーミングと言えるだろう。

 

 

メイウェザーのロゴとして、もう一つよく目にするのが『TBE』。こちらはTHE BEST EVER(史上最高)という意味。自らを最高だと誇示する姿勢を貫き続けるあたり、アンチもつきやすい反面、魅力を感じるファンがいるのもまた事実。こちらのロゴもシンプルで王道感を感じさせる美しさがある。

 

 

 

次に紹介させていただくロゴは、

メイウェザーのライバルとも言われるフィリピンの英雄

 

マニー・パッキャオ

 

 

自身の名前の頭文字である“M”と“P”を美しいタイポグラフィに落とし込んだ見事なロゴだ。Mの上に見えている太陽のようなシンボルは、誰が相手でも立ち向かっていく彼のファイトスタイルを彷彿とさせるヒロイズムを感じる。

 

 

 

次に紹介するのは現役ボクサーの中では

世界最高の人気を博しているメキシコのスーパースター

 

サウル・アルバレス

 

 

本名よりもニックネームの“カネロ”の愛称で親しまれている彼は、カネロの頭文字である“C”と、アルバレスの“A”を組み合わせたロゴデザインを採用している。“C”の部分は宝石のようなシェイプにも見え、彼のスター性を見事に表しているように見える。“A”から突き出すトゲのようにも見える力強い線は、打ち合いを得意とするカネロの勇猛さに上手くマッチしていると言えるだろう。

 

 

 

上記3選手は世界的な知名度が他のボクサーたちと比べてケタ違いである。

自己ブランディングをする際も、一流のクリエイティブチームを抱え、ロゴデザインも相当にこだわっているように思う。

 

 

他にも、

 

元WBC世界ヘビー級王者の

デオンテイ・ワイルダー

 

 

 

ワイルダーに完全勝利した現WBC世界ヘビー級王者

タイソン・フューリー

 

 

 

フューリーとの統一戦が囁かれている

WBA・IBF・WBO世界ヘビー級統一王者

アンソニー・ジョシュア

 

 

 

メイウェザーがプロモートする

無敗のWBAライト級王者

ガーボンタ・デービス

 

 

 

最強のウェルター級候補の一人

WBC・IBF世界ウェルター級統一王者

エロール・スペンス・ジュニア

 

 

 

 

などなど、そうそうたる顔ぶれが自らをブランド化し、なかなかに格好いいロゴを持っている。

 

 

そこで気になるのが、我らがスーパースター井上尚弥のロゴデザインである。上記の選手と比べても見劣りしない圧倒的ボクシングスキルを持ち、日本史上最高の選手と名高い彼もまた、自己ブランドに対する意識を高めるフェーズに足を踏み入れている。

 

 

そんな彼のロゴがこちら。

 

 

うーーーん。。。。

 

恐らくだが、、、自らが監修し、デザインをしたのではないだろうか。

 

失礼を承知で正直に言うが、お世辞にも格好いいとは言えない。上記に挙げている選手たちのものと比べると、子供向けマイナースポーツブランドのロゴといった印象が拭えない…。

 

丸みを帯びたクネっとした形の印象も、エキサイティングな彼のファイトスタイルとマッチしているとは言い難い。

 

今後、海外を舞台に闘っていくであろう井上尚弥のロゴに、海外では本名よりも浸透している“モンスター”というニックネームが一切入っていないところも頂けない。

 

 

こんなこと余計なお節介であることは百も承知だ。

本人が見ていたら不快な気持ちにさせてしまったかもしれない。

 

しかし勘違いしてほしくないのは、

 

 

僕は井上尚弥の大ファンだ。

 

 

そしてアメリカに生活拠点を置いているデザイナーでもある。

 

今後彼が主戦場にしていく国のことはそれなりに分かっているつもりだし、デザインに関わる仕事をしている自負もある。だからこそ、言わせてほしい。

 

今の状況下では次の試合がいつになるかも分からない。ではこの自粛期間を機に、是非とも“デザインのプロ”にロゴのアップデートを任せてみるのはいかがだろうか。

 

 

と言うのも、ここ数日、寝る間を惜しんで彼のロゴを作ってみた。

 

それがこちらだ。

 

 

井上尚弥の頭文字である“N”と“I”、そして、何よりニックネームであるモンスターの頭文字“M”を組み合わせたタイポグラフィロゴである。“モンスター”の名に恥じない力強い線の流れを意識した。

 

 

 

余計な装飾は極力避け、あえて名前ではなくニックネームの“MONSTER”の1ワードをメインテキストに採用することで、シンプルで分かりやすい印象を生んでいる。

 

パーツを3つに分けることで、カラーバリエーションを生むことができるところもポイントだ。アメリカカラーやメキシコカラーなど、グッズ展開の際に海外ファンが喜ぶようなカラーバリエーションを意識することはブランディングにおいてとても大切なことである。

 

 

時計回りに90度回転させると、稲妻のようなアイコンにも見え、彼のスピード感あふれるボクシングスタイルへの敬意も込めている。

 

 

いかがだろうか。

 

 

先日投稿したブログで、ボクサーたちにとってあまりに過酷で残酷な現在の状況に触れているが、そんな時こそボクシングファンである自分はボクシング界に対して何ができるのか、その答えがこのロゴデザインである。もしもこの記事が井上尚弥選手本人に届き、気に入って頂くようなことがあれば、無料で提供させて頂くつもりだ。

 

 

ボクシング界にデザインの力で貢献できる何かがあれば、是非コメント欄でメッセージを頂きたく思う。

 

 

では。