バンタム級に新たな刺客

ジョンリル・カシメロが新チャンピオンに

 

 

現地時間11月30日、英国バーミンガムのアリーナ・バーミンガムで行われたWBO世界バンタム級タイトルマッチ。井上尚弥の同級王者であり、今後試合も期待されていた王者ゾラニ・テテ(31戦28勝21KO3敗)が、挑戦者ジョンリル・カシメロ(32戦28勝19KO4敗)にまさかの3ラウンドTKO負けを喫し王者陥落となった。※()内の戦績は試合前のもの

 

 

試合前には「テテ優位」の声が圧倒的

 

試合前には、下の階級から上げてきたカシメロに比べ、身長で12cm、リーチではなんと20cmの体格的優位に立つテテが、遠い距離からのジャブを起点に試合をコントロールするのでは。と言った声が多かったように思う。

 

しかし、そんな不利と言った声をものともせずに見事なTKO勝利で新王者”のタイトルを掴み取ったカシメロはライトフライ級、フライ級に続き3階級目の世界タイトルを手にした形だ。

 

 

実際、前半2ラウンドはテテが体格を活かして上手く戦い距離を支配していたように見えた。

 

しかし第3ラウンド1分過ぎ、カシメロが動く。左のジャブを突き出すと同時に、自らの左足をサウスポースタイルのテテの右足のさらに奥、背中の方にまで深く踏み込むことで、テテの“視界”と“進行方向”を潰す。そこから、わずかにタイミングをずらしてテテの側頭部に打ち込まれた右のショートストレート。

 

この時テテはパンチを打たれることを嫌い顔を下げてダッキングしていたため“全くパンチが見えていない”。

 

「“見えていないパンチ”が一番効く」

 

ボクシング経験があるものなら誰しもが口を揃えて言う定説だ。

 

一見すると、あまり力のこもったパンチには見えなかったカシメロのパンチだったが、“見えない位置”から飛んできたこのパンチが試合を決めたと言っていいだろう。

 

この右でダウンを喫したテテはこの後なんとか立ち上がるも、カシメロのラッシュに耐えきれず2度目のダウンを奪われる。ここでもかろうじて立ち上がり試合は続行されるが、すでに焦点が定まらず足にも力が入っていないテテ。その後コーナーに詰められ防戦一方となったところで試合が止められる。

 

 

 

カシメロは新たなパッキャオ?

井上尚弥との対戦は?

 

不利と言われた中、敵地で番狂わせを起こすその姿は、フィリピン出身の同郷でありいまや世界的スーパースターのマニー・パッキャオに似ているものを感じる。

 

パッキャオに次ぐフィリピンの英雄を目指すカシメロにとって、同じくフィリピン人ボクサーであるノニト・ドネアを破った井上尚弥はいわば同胞の敵である。

 

“井上の弱点を見つけた”と公言しているカシメロが日本のモンスターと激突するようなことになれば盛り上がること間違いなしだ。

 

先日ルイス・ネリが犯した体重超過により暗雲がたち込めるかと思ったバンタム級戦線。そんな中誕生した新たなヒーローの今後の動向にしっかりと注目していきたいと思う。