久々の投稿です。
毎年冬場に持病が悪化してしまうのと,今年はその他の悪条件が重なり,家にいるときはほとんど横になっているような状況でした。
しかし,ここにきて春の到来を感じる気候となり,体もちょっと軽くなってきたので,今年の初投稿です!
今日は,不動産登記申請において,評価証明書は法定添付書類じゃないのになぜ添付することになっているのかというお話。
先日,評価証明と評価通知の違いをご説明する機会があったので,ついでにブログにも投稿しておこうと思います。
以下は,私が先輩司法書士から聞いた話を総合するとこういうことらしいという私見ですので,間違っていたらご指摘いただければ嬉しいです。
ローカルルールが多い分野の話ですので,地域により取り扱いはだいぶ違うということもあるかと思います。
なぜ法定添付書類じゃないのか?
まず,不動産登記法上,評価証明書(又は評価額通知書)は添付書類じゃありません。
不登法上求める規定がないからですね。
では,なぜ求める規定がないかといえば,地方税法422条の3があるからのようです。
地方税法 (土地又は家屋の基準年度の価格又は比準価格の登記所への通知) 第四百二十二条の三 市町村長は、第四百十条第一項、第四百十七条、第四百十九条第二項又は第四百三十五条第二項の規定によつて、土地及び家屋の基準年度の価格又は比準価格を決定し、又は修正した場合においては、その基準年度の価格又は比準価格を、遅滞なく、当該決定又は修正に係る土地又は家屋の所在地を管轄する登記所に通知しなければならない。 |
つまり,地方税法上,市町村長は評価額を決定したら,遅滞なく,その価格を管轄登記所に通知する義務があるのですね。
したがって,評価額は証明する必要はありませんから,不登法上は添付書類になっていないというのが,法の建前のようです。
しかし,実際は大半の市町村でこの義務が履行されていないので,評価証明書を付けているというわけです。
評価証明書と評価額通知書の違い
私の住む市町村では,評価証明書のほかに評価額通知書というものがあり,前者は有料,後者は無料です。
評価額通知書の宛名が「〇〇地方法務局〇〇支局 御中」となっていること以外は,両方とも内容は全く同じものです。
この評価額通知書が地方税法422条の3の通知にあたる,といわれています。
わざわざ根拠条文を書いている市町村もありますね。
つまり,登記申請人が市役所から通知書を受け取り法務局に提出することで,地方税法422条の3の通知義務が履行されているという,なんとも奇妙な話になっています。
評価額通知書は他の役所に提出できない法務局専用の証明だという取扱は,これが理由なのですね。
私の住む新潟県では,田舎だとこの評価額通知書が残っていますが,都市部では評価額通知書の発行がなされておらず,有料の評価証明しかないというところが多い気がします。
昔働いたことのある東京都でも,都税事務所では有料の評価証明しかなかったですね。
もし,評価証明の場合でも,市町村が地方税法422条の3の通知義務を履行していると解釈するのであれば,申請人はお金を出してその通知義務の履行を手伝っているというなんとも摩訶不思議な解釈になるわけです。
(まあ端的に,このような市町村では地方税法422条の3の通知義務が履行されていないという解釈が自然かと思います)
一括通知と個別通知
ところで,市町村によっては一括通知といって,地方税法422条の3の文言どおりに全不動産について通知義務が履行されている市町村もあるようです。
私もよくは知らなかったのですが,ネットで調べると,例えば名古屋市,日進市,東郷町などは一括通知を行っているそうです。
それって素晴らしいですね!
これに対し,評価額通知書を個別通知というようです。
この一括通知というのが本来の姿であって,地方税法422条の3の文言からすると,個別通知というのは,①登記申請がされない不動産は通知されないこと,②事実上,申請人に通知義務を転嫁していることから,私は地方税法422条の3の通知義務が果たされたとはいえない気がしますけどね。
テクノロジーによってこの辺はさっさと解決できるはずなのになぁ。
相談者が課税明細書を持って来ることが多々ありますが,その度に
「これじゃダメなんですよー。
内容は一緒だけど,評価通知じゃないと法務局は受け取らないのですよー」
と説明しますが,同じ価格が載っているのに
名寄せじゃダメ!
課税明細じゃダメ!
評価通知か評価証明じゃなきゃダメ!
では,なかなか納得しない方が多いのも無理のない話だと思います。
しかも,それって,市町村の義務なのに・・・