2か月ほど前,近隣の総合病院から1本の電話がありました。

 

当事務所で2年以上前に相続放棄の手続をしたAさんの件で

「被相続人の入院費の未払いについてなんですが…」

とのこと。

「Aさんの件は,相続放棄受理証明書の写しを提出したはずですが」

と申し上げると

「そうなんですが,病院の顧問弁護士が,相続放棄をしても連帯保証人の場合には支払い義務があると言ってるんですよ」

とのこと。

 

Aさんが連帯保証人になっていたとは初耳でした。

相続放棄をしていても連帯保証人であれば支払義務があるのは

当然なので,請求書と,念のため連帯保証の書面の写しを

事務所へ送っていただくようお願いし,電話を切りました。

病院の費用の消滅時効は3年だから

退院から2年半たったこの時期にこのような連絡がきたようです。

(民法170①。ただし,2020.4.1以降の診察・入院からは5年)

 

 

後日,送られてきた書面を見たところ

確かに連帯保証人の欄と身元引受人の欄の計2箇所に

Aさんの名前のサインがありました(押印はなし)。

 

(あちゃー,ばっちりサインしてますなー)

 

これは支払わなければダメだなと観念しましたが

念のため,うちで控えていた相続放棄申述書のPDFファイルの署名

と照合してみると

 

おやや?

 

この依頼者はかなり特徴のある署名でして,明らかに字体が違います。

 

Aさんにも,連帯保証の書面をPDFにして送って

ご自分の署名か確認してもらったところ,返信がきました。

 

「違います・・・7が違います」

 

ん?

 

7?

 

あぁ,日付の7のこと(笑)

しかし,これだけお名前の字の形が違うのに,日付の7が違うというのは

なんとも感じ方は人それぞれだなぁと思いました。

 

相続放棄申述書の写しと,依頼人は署名をしていませんので支払いは

できかねる旨の書面を病院に送りました。

その後,何度か病院担当者と折衝の末

本日,ようやく病院側が請求を撤回してくれました。

 

身内に看護師がいるのでこの話をしてみたところ

病院では署名者の本人確認は行なっていないとのこと。

入院時ってバタバタしてるんで,入院申込書の連帯保証人のサインって

意外と本人じゃないことも多いのかもしれないなぁと思いました。

 

それにしても,署名が本人のものか否かの確認は基本中の基本とはいえ

連帯保証の書面を見たときには

(これはダメだなぁ…)

と,正直観念したんですが

念のため一応見ておこうかと

古いデータを引っ張り出して署名の照合をして

本当によかったでした。