積水ハウスの地面師事件で容疑者が逮捕されたようですね。

報道でははっきりとはわかりませんが

どうやら公証人認証の委任状が使用されていたようです。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018101702000269.html

 

公証人認証の委任状は、私も一度利用したことがあります。

たしか登記義務者が多重債務のある方で

債権者に実印と印鑑証明書、登記識別情報を渡してしまって

手元にないという事例だったと思います。

 

公証人の認証のある委任状は2つの手続的意味があります。

一つは印鑑証明書の添付省略

もう一つは事前通知の省略。

つまり,公証人に認証された委任状があると

不動産登記申請の本人確認のための証明書類である

印鑑証明書と登記識別情報の両方を添付しなくても

登記できちゃうっていう裏技なんですね。

 

一時帰国をした日本人の方に使えるかな、なんて思って

当時調べたメモがあったので,載せておきます。

 

 

印鑑証明書の添付省略(不登令18Ⅱ,不登規則49Ⅱ②)

不動産登記令

(代理人の権限を証する情報を記載した書面への記名押印等)

第十八条  (省略)

2  前項の場合において、代理人(復代理人を含む。)の権限を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。 

3  (以下省略)

 

不動産登記規則

(委任状への記名押印等の特例)

第四十九条  (省略))

2  令第十八条第二項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。 

一  (省略)

二  申請人又はその代表者若しくは代理人が記名押印した委任状について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合 

三  (省略)

四  (以下省略)

登記義務者の委任状について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合

印鑑証明書の添付は不要である。

この認証は代理人の嘱託によりなされたものでも

よいものと思われる(「平17.2.25民二457」の第10項(2)の反対解釈)。

 

事前通知の省略(不登法23Ⅳ②)

(事前通知等)

第二十三条  (省略)

2  (省略) 

3 (省略)

4  第一項の規定は、同項に規定する場合において、次の各号のいずれかに掲げるときは、適用しない。 

一  当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるとき。 

二  当該申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては、その権限を証する情報)を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について、公証人(公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第八条の規定により公証人の職務を行う法務事務官を含む。)から当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるとき。

 

登記義務者が登記識別情報を添付できない場合において

委任による代理人の権限を証する情報を記載した書面について

公証人から当該申請人が登記義務者であることを確認するために

必要な認証がされ,かつ

登記官がその内容を相当と認めるとき

事前通知手続は適用されません。

印鑑証明書の省略と違うのは

相当性の要件が付加されている点です。

 

登記官がその内容を相当と認めるときの具体例

相当性がない場合

代理人により嘱託された認証であるときは

相当性なしとされています(「平17.2.25民二457」の第10項(2))。

 

またこの先例によれば,相当性のある場合とは

① 面識がある場合の面前認証又は自認認証

② 印鑑及び印鑑証明書により本人確認した面前認証又は自認認証

③ 運転免許証により本人確認した面前認証又は自認認証

とのことです。

まとめ

司法書士でも登記申請委任状の認証はほとんど利用することがない

と思いましたので,条文と先例を整理してみました。

良いことに使えば,いろんな事情のある依頼者のために使えると思います。