法人登記って司法書士試験科目にないので
司法書士でも基礎を全然習っていないんですよね。
漁業組合とか社会福祉法人とかいろんな種類の法人から依頼がきますが
司法書士になりたてのときは,どの法人にどの登記法令が適用されるのか
その適用関係がさっぱりわからなかったです。
その辺を横断的にわかりやすく説明している解説書ってのもなくて
とても苦労した覚えがあります。
今回は,各種類の法人に適用される登記法令の適用関係ってどうなっているの
という整理をしたいと思います。
新人司法書士さんには,おススメの記事ですね。
実務家は忙しいので,結論から示しちゃいます。
※投資法人と特定目的会社を除く
今回はこの表の説明をします。表を見て理解できた方は
時間がもったいないので,以下の解説を読む必要はありません。
登記法令の種類ってどんなのがあるの?
法人登記に関する登記法令ってざっと次のようなものがあります。
組合等登記令
各種法人等登記規則
一般社団法人等登記令
さらに各法人の組織法に登記に関する規定があることもあります。
水産業協同組合法の第7章「登記等」
中小企業等協同組合法の第4章「登記」
宗教法人法の第7章「登記」
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の第6章第4節「登記」
さあ,頭がごちゃごちゃしてきました。
これを今回は整理したいと思います。
まずは商業登記からみてみよう
おなじみの商業登記(=会社の登記)の場合どうなっているのかというと
① 会社法の第4章で登記すべき事項,登記義務,登記申請期限等
(以下「登記事項等」という)を定め
② 商業登記法で会社の登記手続を定め(会社法907)
③ 商業登記規則でその細則を定める(商登法148による委任)
という3層構造になっています。これが基本となります。
会社法 (通則) 第九百七条 この法律の規定により登記すべき事項(第九百三十八条第三項の保全処分の登記に係る事項を除く。)は、当事者の申請又は裁判所書記官の嘱託により、商業登記法の定めるところに従い、商業登記簿にこれを登記する。 |
商業登記法 (省令への委任) 第百四十八条 この法律に定めるもののほか、登記簿の調製、登記申請書の様式及び添付書面その他この法律の施行に関し必要な事項は、法務省令で定める。 |
会社型の法人
では,法人登記(=会社以外の法人の登記)に入りますが
まずは会社と同様に個々の法人組織法で登記事項等を定めている法人があります。
このタイプの法人の場合
① 個々の法人組織法で登記事項等を定め
② 個々の法人組織法で商業登記法を準用して登記手続を定め
③ 各種法人等登記規則(中身はほぼ商業登記規則の準用)でその細則を定める
となっています。
つまり,この型の法人登記は,法人組織法と各種法人等登記規則の2つが
登記法令となります。
例えば,漁業組合,事業協同組合,宗教法人等がこれにあたります。
(ほかにもあるんでしょうが,うちの顧客にいる法人しかあげてません)
①についてはそれぞれ
漁業組合は水産業協同組合法第7章で
事業協同組合は中小企業等協同組合法第4章で
宗教法人は宗教法人法第7章で登記事項等を定めています。
②についてはそれぞれ
水産業協同組合法120条,中小企業等協同組合法103条,宗教法人法65条
で商業登記法の規定をたくさん準用しています。
③については,各法人組織法で準用されている商業登記法148条の委任により
各種法人等登記規則が細則を定めています。
なお,各種法人等登記規則の適用される法人については,
1条で次の法人を除くその他の法人(「各種法人」という)
に適用される旨を定めています(外国法人は省略します)。
・会社
・一般社団法人及び一般財団法人
・投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律2条12項)
・特定目的会社(資産の流動化に関する法律2条3項)
(なお,投資法人と特定目的会社は話をわかりやすくするために
今回は割愛しております。)
10年前にこの整理をしたときは,農業協同組合はこのタイプだったんですが
今回調べてみたら次に説明する組合等登記令型になってました。
いつ改正したんだろ。
お役人は組合等登記令型を法人登記の基本型にしようしてるみたいですね。
今後も改正があると,こちらから次の型へ移る法人がでてくるかもしれません。
組合等登記令型の法人
次に,法人の中には,登記事項等を個々の法人組織法の中に規定していない
法人があるんですよね。そういう法人は,
① 組合等登記令で登記事項等を定め
② 組合等登記令25条で商業登記法を準用して登記手続を定め
③ 各種法人等登記規則でその細則を定める
となっています。
つまり,この型の法人登記は,組合等登記令と各種法人等登記規則の2つが
登記法令となります。
このタイプの法人が圧倒的多数で
医療法人,学校法人,社会福祉法人,農事組合法人,NPO法人等の
組合等登記令別表に掲げられている法人が全部そうです。
念のため,こちらも③の委任関係の流れを示すと
組合等登記令25が準用する商登法148条の委任により
各種法人等登記規則が細則を定めている
ということになります。
一般社団法人・一般財団法人
最後に,一般社団法人と一般財団法人です。
公益社団・財団法人も,一般社団・財団法人なので
この型に属します。
① 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第6章第4節で登記事項等を定め
② 同法330条で商業登記法を準用して登記手続を定め
③ 一般社団法人等登記規則でその細則を定める
となっています。
つまり,この型の法人登記は,一般社団財団法と一般社団法人等登記規則の2つが
登記法令となります。
一般社団・財団法人だけ,なぜか専用の登記規則をつくっています。
ちなみに,③の委任関係の流れは,一般社団法人等登記規則の前文に
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第三百三十条において準用する
商業登記法第百四十八条の規定に基づき、
一般社団法人等登記規則を次のように定める。」
とあります。
まとめ
以上をまとめると,冒頭に示した次の表になります。
※投資法人と特定目的会社を除く
あー,疲れましたね。
各種類の法人の登記法令の適用関係を分類するとこんな感じになります。
しかし,実際は各法令で商業登記法や商業登記規則を大量に準用してますんで
結局この2つを読まなきゃならんのですが
この大量の準用の羅列が,これまた超うっとおしいんですよね。
この大量の準用の整理は,今回のテーマに載せるとわけわからなくなるので
また別の機会にアップしたいと思います。