不動産取得税がかかりますかという相談がきたので,
調べてみました。
調査結果
「不動産の全部をAに遺贈する」旨の遺言は,原則として特定遺贈になると考えられます。
(「判例先例 相続法」(日本加除出版)442頁,「基本法コンメンタール 相続〔第三版〕」(日本評論社)123頁参照)
ただし,遺言書の他の文言との関連,遺言作成時の事情等によっては,包括遺贈と判断される余地もあります。
両者で違いがでるところ
相続人以外の者への遺贈の場合には
1 不動産取得税については,包括遺贈は非課税,特定遺贈は課税
(地方税法73の78①)
2 農地法の許可については,包括遺贈は不要,特定遺贈は必要
(農地法3Ⅰ⑯,同施行規則15⑤)
という全く違う結果となります。
相続人以外の者へ不動産の遺贈の遺言書を作成するときは
安易に「不動産の全部をAに遺贈する」
を使うと痛い目にあうときがありそう。
調べた判例
東京地判平10.6.26(譲渡所得税の課税処分取消請求)
東京高判平10.9.10(不動産取得税の賦課決定処分取消請求事件)
いずれも課税との結論。
東京高判は,民事ならば包括遺贈と認定されてもよさそうな事案。
雑感
この単純な遺言が意外と盲点だったようで,
実際に弁護士,司法書士,法務局職員でも,文面から包括遺贈と
判断された方もいらっしゃいました。
相続人に対しては,相続させる旨の遺言が実務上定着しているので,
士業が関与して作った遺言の場合には,遺贈は相続人以外の者に対して
使われることが圧倒的に多いと思いますね。