今にも破裂しそうなエンジン音が全身を嬲る
ほんの一瞬でサインボードを確認し、僅かな思考も消し去る勢いで 1コーナーが迫り
少しでも首を上げれば、高圧の壁がスクリーンの前に直撃し
ブルブルと左右に震えるフルフェイスごと、頭蓋が引き抜かれそうに
アクセルを戻す
ブレーキを当てながら、細い針の先のような進入を探り
(よし)
真ん中から少し左に寄った辺りから、綺麗に切り取るように車体を寝かす
向き変えの始まりが、Gを張り
沈んだサスと高性能のコンパウンドが路面を掴んで、全身に安定の手応えを伝える
綺麗にアウトにはらんで 2コーナーへのアプローチを
「ガガッ! ガガガガガガ・・・!!」
「・・・ったくよぉ」
それ以上寝かせられない
軽く車体を起こし、緩んだGを胡麻化しながら もう一度コーナーリングをやり直す
その、空いたイン側をCBRみたいなのが抜いて行くのを
遅いアクセルオープンの、拙い加速の中で見送る
バックステップが、逆に仇になっていた
爪先もコレ以上引けないし、内側にたたむ事も出来ない
いちいち足を引いていては、今の集中は維持できそうも無い
3コーナー
S字
ダメだ
『ハイポイント』の飛び込み
一番通したい速度とラインに入れた途端に、待ち構えたように爪先が擦れる
スライダーの替えなど無く、ブーツはまだ3回しか使っていない
綺麗なもんだ
(ブーツなぁ・・・ 勿体無いしなぁ)
どうにかしようと試行錯誤しながら
また一周が終わってしまう
タイムは、50秒から縮まない
右後方から
引っ張り切った 排気音
「は?」
600
CBRか? R6?
そいつは、俺の立ち上がりの遅さを嘲笑うかのようにスルスルと右から出て来た
コチラも全開には移っているので、かなりゆっくりと
そして
「ガヅッ!」
そのまま左にクロスするライン
フロントがそいつのリヤにぶつけられて、車体が軽くブレた
ナニソレ
何かが入った
かなりデカい音を立てて
おまえさあ
そのまま2台の距離は開かず
もつれるように馬の背に向かって
距離が離れない
離れさせない
「知ってんだよ そこまで突っ込めるのは」
溜まりに溜まったフラストレーションと、憎悪に近い怒りで 頭の中の声が肉食のソレに変わる
アウトに孕んだ600のインにねじ込む
「退けよ」
前に出る
そのまま引きずって
だが、一瞬の逡巡
(それじゃあ、今までと)
減速に混じった、僅かな迷いで
立ち上がった先のSP-INで挿され、また前に出られる
離れようとするテール
「ブンっ」
立ち上がり
ブレーキはかけない
アウト一杯から電光のように倒し込み、イン側のゼブラが左膝の下で踊る
離れたテールが一瞬で縮まる
既にP3のサインは出ていた
ちょっとだけ
「後で、ピットに怒鳴り込まれるよりはイイだろ?」
ホームストレートから、右→右
爪先が路面に当り、嫌な音を立てる
ベストな速度
フルバンクでクリップを
今だけ
今だけ、タイヤの事も 爪先の事も忘れる
テールがフロントに触りそうな距離
「遅ぇんだよ」
ブヂブヂと、タイヤが擦り付けられる音が聞こえたような
分かっていたかのように
一瞬でブチ抜くと
ノーブレーキのまま フルバンクで左に突っ込み
ラインを塞ぎながら、ブレーキを当てる
S字の立ち上がり、滑らない
たまたまなのかも分からない
レインボーから、また右足に嫌な感触を感じながら 綺麗にアウトに
暴れるフロントを押さえ込みながら引き倒し
ゼブラを掠め裏ストレートを立ち上がる
リヤが軽く滑った
知らない
全開に
PPP
1周の後のピットイン
予選は終わった
R1を停めて、降りたところで
ウッちゃんがニコニコと寄ってきて
「お疲れ 今回の予選はパツが決めました」
「ん? カトーだろ?」
両手を上げて喜ぶ気にはなれなかったが
1分47秒が
チームのベストラップに刻まれた
(続
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