古い灯台耳鳴りがするごうごうとなぶる蛇皮のようにザラついた海風が温かみの無い革の黒い袖口を擦り上げる傍らには白い影が眼を閉じて、じっと気配を隠すようにただ命令を待つだけのように辺りを鈍く浮かび上がらせる雪の光鉛色の空がぼんやりと明るい空々しい闇に浮かび上がる巨影は苦しげな低気圧の微かな境界を静かに照らしながら、何も言わずに佇む靴底から蛇のように這い上がって来る冷気膝から下が針金のようだまだ左腕の痺れが取れない目の下まで上げたマフラーの端を肩にかけ直しまた、ポケットに手を突っ込む