すり鉢の底を撫でるようにタイヤを擦り付け
レインボーを立ち上がる
アウト側いっぱい
ゼブラを掠めながら、絞るように開け
車体がほぼ起きたのを見計らい
スロットルがぶつかるまでの、最後の最後のひと捻りをして身構える
ツナギの内腿が、タンクを挟み切れずに「ズルリ」とズレる
ターボでも付いているような加速
録画の早送りのようにメーターは跳ね上がり
簡単に250km/hを越えて
視界も車体も、飴のように「グニャリ」と歪む
ウッちゃんのR1はフルエキで、燃調も入っている
立ち上がった瞬間に視界の遥か彼方にいた小さな黒い影が
息を呑む一瞬で目の前に迫る
素直な感想として
このR1の 12500rpm辺りからの加速は“速過ぎ”た
個人的には好きなのだが
コースに対して、俺程度のレベルでは加速・減速がブ厚過ぎて 走りの組み立てを阻害する
それぐらい尋常じゃ無いのだ
去年は、この
タコメーターの最後のレンジに隠れた、化物のような加速には気付いて居なかった
だが
(何でだ)
抜けない
それ以上縮まらない
カーブの連続で、離れて行く
俺は、結構マジになりつつあった
元・ヤマハのテストライダー
生粋の2スト乗り
ウッちゃんの操るTZRは
とんでもなかった
4周・5周と周回を重ね
本番のテンションまでは行かないにしても
その背中は離れこそしないが、いつまで経ってもコチラに近付かなかった
(嘘だろ。 俺、今 そんなに遅いのか?)
「50秒前半ぐらいだと思うよ」
走る前に言っていた
TZRで出るタイムの目安
そんな所をウロウロしている250ccに、追い付けない
気持ちが段々焦りを帯びて行く
俺は、自分がどの程度の走りをしているのかとかが あんまり正確に把握出来ない
だが、何かを追い掛けているならば それなりの事は出来るつもりで居た
コケるかも知れないようなギリギリの事はやってないが
それにしたって、遅すぎやしないか
サーキット
俺の走り
あくまでも練習
頭の中を、様々な事がグルグルと回る
ただ、1つ1つのコーナーを 喧嘩するように詰めるのとは、何かが違う
確かに、まだ膝をするような事にはなっていないのだが
「じゃあ、やればイイじゃん」と思っても、“出来ない”のだ
怖いラインを越えない
それが、俺の長年培った持論で
今、それは
確かに 怖かったのだ
シャボン玉の泡のように
だが、それは ラバーかウレタンのような強度と粘りを持って俺を包み
それを「破りたくない」と、何処かで感じている自分が 今以上の『加圧』のような行為を拒む
「ん?」
SP-OUTの立ち上がり
いきなりTZRがスピードを落とした
そのまま右に寄り コチラを振り返る
(先行って)
タイヤか?
俺を追いかけて遊びたいのか?
俺は、そのまま前に出ると
全開の「逃げ」に入った
分からない
色んな事が
分からないが、分からないなりに 負けたくも無かった
結局、その後
俺はTZRを引き離し
前にいたR6か何かを追いかけ回して、走行を終えた
レンタルした計測器
事務所に行けば、全ラップタイムがプリントされた紙が貰える
「・・・そっかぁ」
俺がウッちゃんを追いかけていた時
なんと、2台のタイムは53秒ぐらいから 周回を重ねるごとに毎回綺麗に縮み
最終的に49で止まっていた
ウッちゃんは大喜び
まさか50を切れると思ってなかったらしい
そして
勿論俺は、複雑だ(笑)
だが
(きっと、今日が本番の役に立つ)
後は
単車くんに頼んである
最後の秘密兵器を付けるだけだ
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