ホームストレートに出た瞬間に、左手でスクリーンを軽く開ける
一瞬で視界が戻るが、ブレーキ前には閉めなければならず
コーナーを2つも曲がると、また左側が半分近く真っ白に曇る
サインボードなんか見てる余裕も無い
直線で充分以上に速度を落とし
バンクを極力少なくして、脱出ラインに乗るのをじっと待つ
バイクは起きていれば滑らない
だが、どれぐらいで滑るかも分からない
俺のレインタイヤの記憶なんて、その程度の物でしか無かった
速いやつには バンバン抜かれたが
コレは逆に、今回のレベルの差が 更に浮き彫りになっているのも分かった
"コレが、耐久"
しかも、もう 絶対にコケられない
走るのに支障のない壊れ方だったのはラッキーだったが
みんなで一所懸命直したマシーンである事に変わりはない
それが
俺の走り方を、更に慎重にしていた
裏ストレート
前が見えない
それでも、全開で
だが、その横を 圧倒的な速度差で何かが飛び去る
歯噛みながら、スクリーンを開け
250km/hの奔流の中で、指で拭う
馬の背が迫る
(ダメだ)
アクセルを戻した途端に、更に差が開く
あんなに寝かせられるのか と
だが、アレは別物だ 今の俺には出来ない
路面の補修跡すら避け
のっぺりとコーナーを曲がり、次が近すぎてアクセルを開ける手すらも躊躇う
6時間だぞ?
6時間も一緒にレースやって
『完走』
その2文字が
2周
3周
徐々に感覚が熟れて行く
鼻の上からメットの内側に貼りつけたガムテープも、曇りを抑制するのには足りない
"たかがレース"
MFJを通るというだけの、安いフルフェイス
滑りまくる内股
水を吸って、まとわり付くツナギ
それでも、完走を
また、抜かれる
(しょうがない。こうやって慎重にやってりゃ、コケる事はないんだ。
そうすりゃ、無事に完走して みんなも喜んで)
(・・・完走?
それで?
『ダメだったねって』笑って?
お疲れさまして?
来年だか 再来年だかに
『ダメだったから、また出ます。でも、練習出来ないし 周りのレベルも高過ぎるし 雨なんか慣れてないし』って
同じような事やるのか? )
S字の突っ込みで抜かれ
コーナーリングですら離され
アクセルを開けるタイミングも、その後の加速も
(完走って何だよ?
それだけをやりに来たのか 俺は?
だったら、最初からみんなで チンタラ走ってりゃイイんじゃないのか?
レースなんか、やらなきゃ)
「違うだろ」
後で、給油班のまとめ役だった モトさんが
この時の事を言った
「パツさん、途中から ずっとタイム上がって行ってましたよ」
俺は、ガムテープをひっぺがすと
それまでの、全てを棚に上げた
(続
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