僅かに傾いた白い車体
フロントの設置感も希薄に、うっすらと濡れた路面をヘッドライトが舐め
134号の橋を猫のように駆け上がる
河口から扇状に海へと流れ出る湿った黒い砂の絨毯が、一瞬で防砂林のかげに隠れ
まだほんのりと暗い明け方の湘南を、まばらなテールの赤い尾が彩る
朝日に染まる西湘
R6の白地に打ち込まれた赤いストロボが大きな弧を描きながら
200を越える速度で走る隼とニンジャを抜き去る
チタンのサイレンサーから、美しいインラインフォアの排気音が 海風に棚引いて行く
X-12の中で、トウコは目を細める
(今日は居るだろうか)
初めて会ったのは2年前だった
200km/hで中央道を走るトウコのVFR800が、一瞬で抜かれていた
目に焼き付いたテールと背中
次の瞬間には
更に数台のバイクが、左右から音と衝撃波を残して地平へと消えた
ツーリングでいつも先頭を走っていたトウコを、これだけの差で抜き去るバイクを見るのは初めてだった
「結構名前が知られてる奴等だよ」
確認するのは簡単だった
ネットで、勝手な噂がいくらでも流れていた
リーダーなのだろうか
名前・詳細は不明だが、ポツポツと 様々な所で話が上がっている
雑誌やレース
華やかな表舞台には居ない
バイクと言うのは
なんと入り口が狭く・奥が深いのだろう
その入り口に引っかかっていただけの自分
トウコはVFRを売った
(続