ガソリンとオイル | すかいうぉーかー

すかいうぉーかー

CRAZY=SPELL−BOUND





タカギさん「パツさん、実はお知らせしなければいけない事があるんです」





ピンと来た

と言うか、心は痛むが最初から予想はしていた



来月で店を畳むと言う
店自体はタカギさんでは無くて社長さんの物だが


俺の家から眼と鼻の先
だが、場所が悪い

幹線道路は目の前だが
停めにくい一通の交差点で、もう何度もテナントが代わっていた



「見た目」的にも何の店だか分からず

数台のバイクと自転車
パーツの在庫も無く、修理も1から10までやれる訳でも無い

バイク・車関係の雑貨や小物、アパレル系もあったが そっちの趣味も悪くはなく 俺はこういう店は大好きなのだが


結局、「一見さんに入りにくい」店である事実を、俺は言い出せなかった






(・・・でも






「タカギさん、R1のチェーンとスプロケを頼んで下さい」



タカギさん「え?ウチでイイんですか?」






タカギさんは整備士の資格を持っていない
自転車のパンク修理も、初めてやった時に「練習させていただいたんで」と、工賃も取ってなかった


だが、俺が自分でタイヤを換えた時の、パンク修理をしてもらった手際と丁寧さ

「元々好きなもんで」と言うには揃い過ぎている、自前の工具


以前は某輸入工具の代理店で営業をやっていたと言う





そして


何気ない、バイク絡みの雑談

自分のCBR1000RRの修理やメンテの話


半年程度、延べ数時間のソレで

少なくとも俺には分かっていた




“この人にはR1を頼める”と







(・・・お


養生テープをスイングアームに
レーシングスタンドを掛けるスタンドフックの周りに丁寧に貼っていく



「滋賀に行くなら、チェーン調整しときましょう」


クリーナーを吹き、丁寧に汚れを拭き取り

アクスルシャフトのナットを緩めて伸びを



文章にすると伝わりにくいが

この感じなんだよな






俺は走るのが好きで、走るためにバイクに乗っている



車両のデザインとか、排気音とかは気にするが


イジったりメンテする作業・工具にはあんまり興味が無い

嫌いではないが、元々行き当たりばったりのチャランポランなので、ボルトが1本無いとか オイルのブランドだとかも目に見えた支障が無い限りは気にしない


だが、多分タカギさんはすべてが逆だ




「タカギさん」



「はい?」







「オイルも換えちゃって下さい」







別に自分でできる

春先ぐらいまで、換えないつもりだった



だが、滋賀行きの件




なんとなく

なんとなく、今のような気がした






「トリプルRがあります。どうせ処分しなきゃならないんで、安くしときますね」








スタンドに載せられたペール管が傾き

ジョッキに「クッ クッ クッ クッ」と音を立てて、綺麗な光沢を帯びた液体がそそがれて行く



なんだろう、それをこの人がやっているのを見ているだけで この安心感は

















もしかしたら



いつか、一緒に











とりあえず








すかいうぉーかー-CA3J0133.jpg



その言葉は、今じゃない気がした